東北大学病院

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加齢・老年病科

科長あいさつ

教授 荒井 啓行

 2016年、日本の高齢化率、即ち65歳以上の高齢者が全人口に占める比率は27%を超え、日本は超高齢社会のフロントランナーとして世界の注目を集めています。高齢者人口は実数にして約3500万人に達します。超高齢社会における医療提供のあり方を考える上で、最も上流側に見据えるべきことは、「少子高齢化という人口構成の劇的変化に伴って、これまであまり意識されなかった高齢者の抱える医療・健康問題が顕在化すること」です(図1)。

図1

 加齢そのものは生理的現象であり病気ではありません。しかし、加齢を背景(危険因子)として認知症、ガン、肺炎、動脈硬化症、骨粗鬆症などの有病率が高まります。これらは「老年病」と呼ばれる一群の疾患です。老年病は、壮年期までは殆んど見られませんが、今日のように平均寿命が80歳~90歳となるような「長生き」の実現によって始めて顕在化し、疾患の慢性化とともに日常生活機能を低下させ、介護需要を増大させる特有な病態と言えるでしょう。また、いくつもの疾患を抱える多病の高齢者は、異なる薬物治療を同時並行して行なうため、薬物有害事象の発生に注意しなければなりません。加齢・老年病科はこれからも続く超高齢社会において、老年病に正面から向き合うため、平成29年度から旧老年科と旧加齢核医学科を統合し東北大学病院に新たに設置された診療科です。病院での治療を終了したフレイル(虚弱)な高齢者が元の生活の場に戻れるとは限りません。医療と介護のつなぎ目として、どのような生活支援が必要かを見定めるために有用な指標となるのが「高齢者総合機能評価」と呼ばれているものです(図2)。

図2

 高齢者総合機能評価では、高齢者一人ひとりについて認知機能、身体機能、移動能力、嚥下機能などの症状・状態評価に、生活機能評価を加えた多方面からの評価を行ないます。フレイルな高齢者は生活の自立そのものが脅かされる状態になりやすいため、「治す」病院での医療から「支える」地域での介護までが一連のプロセスであることを理解する必要があります。高齢者医療では、各臓器を単眼的に診るのではなく、一人ひとりの生活機能を重視した複眼的個別化対応が求められています。 認知症高齢者数は現在500万人に達したと推定されています。東北大学病院では1990年から、全国に先駆けてこの認知症医療に取り組んできました。今日、認知症は、糖尿病、高血圧、頭部外傷、運動不足、喫煙など生活習慣や生活習慣病と密接な関連があると言われています。個別の臓器別医療を超えた生活習慣病に対する包括的アプローチにより認知症を予防することをまず考えましょう。何より大切なことは、おかしいなと気が付いたら放置しないことです。年だから仕方がないと諦めないことです。当科の「物忘れ外来」の特徴は、客観的な診断根拠に基づいた精度の高い診断および認知症と関連する生活習慣病や多臓器疾患への包括的治療が可能であることです。問診と心理検査、介護ストレス調査、血液検査に加えて、図3のようなCT/MRI検査、脳血流スペクト検査、MIBG心筋シンチグラフィー、ダットスキャンなどの最新の画像診断を当科の認知症専門医、核医学専門医や放射線科専門医が担当しています。

図3

 特に、MRI検査は脳の微細な病変を把握するための必要不可欠な検査法です。心理検査や介護ストレス調査は、当科の臨床心理士が対応します。診断が難しい場合には、脳脊髄液検査を加えることもあります。抑肝散などの漢方治療を積極的に活用していることも当科の特徴です。図4のように、最先端医療として、アルツハイマー病の脳に蓄積する悪玉アミロイドや異常タウをポジトロン断層装置(PET)を用いて可視化する探索的画像研究を平成17年からスタートしました。保険未収載ではありますが、アミロイドPETやタウPETは、近未来のアルツハイマー病根本治療薬開発に向けて必須の手段となりつつあります。

図4

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