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東北大学病院

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呼吸器内科

特色

当科は呼吸器に関連する内科系疾患を扱う診療科です。2012年4月から呼吸器センターとして、呼吸器内科および呼吸器外科の両科で協力し合いながら、呼吸器疾患の診療に取り組んでいます。
対象とする病気は、気管支喘息や肺気腫などの慢性気道疾患、肺がんなどの呼吸器腫瘍性疾患、肺線維症や特殊な間質性肺炎などのびまん性肺疾患、難治性肺炎や非結核性抗酸菌症などの呼吸器感染症、その他さまざまな呼吸器に関する難病など多岐に亘っています。これらの多くの疾患に対してエビデンス(科学的な根拠)に基づく最善の治療(=標準治療)や将来の新しい治療法のエビデンス確立を目的とした臨床試験などを実施しながら、最新かつ安全な呼吸器診療を提供することを心がけています。

対象疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は、以前は肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた疾患のことで、タバコ煙を主とする有害物質を長期間吸入することによって、末梢気管支や肺胞に慢性炎症が生じ、その結果として空気の通り道が狭くなり、肺胞の破壊も生じて、肺のガス交換が障害される病気です。一度発症すると緩徐に進行し、慢性的な咳や痰、息切れなどで徐々に日常生活に支障を来すようになります(図1)。

図1. COPDの肺病変(胸部CT像)

COPD(右図)では健常人(左図)と比べ黒く大きく抜けている部分(ブラ、のう胞)が全体的に増加しており、肺胞構造が壊れていることが分かります。

原因と疫学

COPDの原因の多くは長期間に及ぶ喫煙です。喫煙者のうち約15-20%程度がCOPDを発症すると言われています。2004年に施行された我が国の日本の疫学調査では、40歳以上の8.5%(530万人)が罹患していると推定されており、今後、高齢化に伴いさらに増加するとされています。2011年の厚生労働省の統計では死因の第9位であり、気管支喘息患者の死亡率が年々低下する一方で、COPDの死亡率は今後も上昇すると予測されています。

症状

労作時の息切れや慢性の咳、痰が初発症状です。一方で、疾患の進行が緩徐であることから症状の乏しい場合も稀ではありません。

診断

スパイロメトリー検査(肺活量検査)を行い診断します。(図2)検査は簡単で短時間で済みます。当施設では、他の呼吸器疾患を除外するために、精密呼吸機能検査や胸部X線およびCT検査等を組み合わせることで診断をより確かなものとし、重症度を決定しています。近年、注目される喘息とCOPDのオーバーラップ症例については、種々の血液検査、呼気ガス分析、喀痰検査などを併用することで診断します。また、その他の呼吸器疾患の合併症(気管支喘息や肺線維症、肺癌等)のほか、心疾患や鬱状態や糖尿病等のCOPDに合併する事の多い全身性疾患(併存症)も併せて診断します。

図2. 健常者(左)とCOPD患者さん(右)のスパイロメトリー。縦軸が息を吐くスピードを表しています。COPD患者さんでは息を吐くスピードがすぐに落ちてしまいます。気管支が狭くなっていることを示しています。

治療

まずは禁煙です。呼吸機能障害が進行している場合や自覚症状のある場合には、呼吸機能の改善や疾患の悪化を防ぐために、気管支拡張薬を主とした様々な薬物療法を行います。近年では、1日1-2回 吸入タイプの長時間作用性気管支拡張薬の登場が相次いでおり、即効性と強力な気管支拡張効果により、呼吸機能だけでなく自覚症状や生活の質(QOL)の改善なども可能となってきました。当科では、これら薬物療法の他にも呼吸リハビリテーション・栄養療法などを組み合わせて包括的な治療を行うことで、COPDの予後に影響する因子の一つである身体活動性の向上を図っています。重症の方には在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法、外科的治療などを行うこともあります。当科では、専門知識や治療経験の豊富な医師がCOPD専門外来で毎日、診療にあたっており、患者さん一人一人の病状や病態にあった治療法を提案しております。一人でも多くのCOPD患者さんのお役に立てるようにこれからも頑張って参ります。

気管支喘息

症状と原因

アレルギー体質を持つ患者さんや環境アレルゲンの吸入を繰り返す方に多く発症します。好酸球というアレルギー反応の中心となる細胞が気道に集まって慢性的に炎症を続けることで喘息病態が悪化します。夜間や早朝に咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった音)を伴う息苦しさで目が覚めるとか咳がひどくて仕事に支障を来すなどの症状が、日内変動および季節性(特に春と秋)変動を伴って出現します。ダニやハウスダストなどの細かい粒子径の環境アレルゲンのほか、運動、寒冷刺激、ウイルス感染、タバコ煙などが増悪要因となります。

診断

夜間や早朝に悪化し、日中に軽快する咳や痰や喘鳴があるような典型例では診断は容易ですが、咳だけが3週間以上も続く場合は見逃される場合もあり注意が必要です。当科では、患者さんの症状のほかに、呼吸機能検査による可逆性検査や「喀痰中の好酸球の増加」(図3)および好酸球性気道炎症の程度と良い相関関係を示す「呼気中の一酸化窒素(NO)濃度」(図4)の測定などの客観的検査を組み合わせて正確な診断を行っております。

治療

最新の喘息ガイドラインに準じて、「吸入ステロイド(ICS)」と「長時間作用性気管支拡張薬(LABA、LAMA)」などの吸入薬を中心とした標準的な治療法を基本治療として、「抗ロイコトリエン受容体拮抗薬」や「テオフィリン製剤」などの内服薬を適宜追加したりすることで、症状が劇的に改善します。環境アレルゲンの回避や適切な吸入指導も繰り返し行います。喘息の管理は、ピークフローメーターという簡易的な器具を使用して行います。これを用いて患者さん自身で呼吸機能の変化を日誌に記録し、治療の効果や悪化の前兆などを管理します。(図5)。しかし高用量ICSと気管支拡張薬を含む治療を行っても改善しない重症難治性の喘息が5-10%程存在します。これらの重症例では個別化医療の考え方に基づき、アトピー要因のある方に効果が期待される生物学的製剤による治療も積極的に行っております。

図3. 誘発喀痰中の好酸球 好酸球:赤く染まった細胞

図4. 呼気NO濃度測定検査の実際

図5. 喘息治療におけるピークフロー(PEF)の推移

呼吸器腫瘍性疾患

肺がんに代表される胸部悪性腫瘍のなかで、とくに外科的手術や放射線治療などの局所療法によって根治が困難であるとされる進行期の患者さんに対して、世界標準レベルの診断と治療を提案し、患者さんと一緒に最善の方針を決めております。
将来の肺がん治療成績の向上を目指した臨床試験や治験にも積極的に取り組んでおり、特に最新の分子標的薬を用いた治療も行っております(図6)。
がんに伴う様々な苦痛に対する緩和ケアも十分考慮し、個々の患者さんに適した治療法を提案しております。

図6. 1次治療が無効であったステージIVの進行肺腺癌に対して(左図)、2次治療として免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)の投与を開始し、6か月後には腫瘍が著明に縮小しました。(右図)

呼吸器感染症

近年の高齢化の進行に伴い、肺炎で亡くなる方は増加しており、日本人の死因の第3位(年間約12万人が肺炎で死亡。うち9割は75歳以上。)となっています。
また、医療の進歩により難治性疾患に対して様々な免疫抑制剤や新規生物学的製剤を用いた治療が年々広まるにつれ、通常の免疫力のある方では発症しない病原体による呼吸器感染症を合併される患者さんも増加しています。
近年、非結核性抗酸菌により慢性的に進行する肺感染症も中高年の女性を中心に増加しており、専門家による適切な診断、治療管理が必要になっております。

当科での診療の実際

当科では、通常の抗菌薬治療にて十分な効果が得られなかった患者さんを中心に、呼吸器感染症の診療にあたっております。
感染症の原因を診断するため、血液検査、胸部X線写真&CT等による画像検査、各種培養検査等を行う他、通常の検査で病原体を特定することが困難な場合は、気管支鏡検査により直接病巣から原因病原体を特定し、適切な抗菌薬による治療法を選択しています。
免疫力のない方で問題となる真菌(アスペルギルス感染症)(図7, 8)やニューモシスチス肺炎(図9)に対しては、当科研究室独自に抗体検査や核酸増幅検査を行い、迅速な診断・治療に努めております。国内の研究・検査機関とも協力し、稀な真菌・抗酸菌感染症についても、病原体の同定・診断を試みております(図10) 。

図7. アスペルギルスの沈降抗体。患者血清とアスペルギルス(菌体あるいは培養上清)との間に、沈降抗体の存在を示す沈降線が六角形として認められます。

図8. アスペルギルス遺伝子の検出。患者さんの肺胞洗浄液検体よりDNAを抽出し、アスペルギルス遺伝子に特異的なプライマーを使用し、アスペルギルスの遺伝子を同定しました。

図9. ニューモシスチス肺炎による呼吸不全のため集中治療室にて治療を行いました。入院時には両方の肺全体に広がる白い陰影を認めましたが(左図)、治療により正常に近い状態まで改善しました(右図)。

図10. 非結核性抗酸菌症のCT画像。両方の肺に小さな粒状の陰影と空洞を認め、喀痰検査からはM.aviumが検出されました。

睡眠時無呼吸症候群

トラックやバスだけでなく新幹線の運転手さんも居眠り運転をしてニュースに取り上げられることがありますが、その原因の一つで大切なものが睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome; SAS)です。
睡眠中に本人も気付かないうちに10秒以上の呼吸停止が何度も繰り返されることで、脳や心臓に負担がかかりつづけて、睡眠障害や病気を発症するとされます。重症の閉塞性SASでは、難治性高血圧、不整脈、脳・心血管障害などのリスクが高くなり、突然死を引き起こすこともあります。また、居眠り運転による事故や労働災害の原因にもなることがあります。 
原因は大きく分けて2つあり、空気の通り道である上気道が睡眠中に狭くなり呼吸ができなくなってしまう閉塞性タイプと、呼吸中枢の異常により呼吸が止まってしまう中枢性タイプがありますが、多くは閉塞性タイプです。

症状

閉塞性SASの主な自覚症状としては、日中の眠気や倦怠感のほか、夜間の尿回数が増える、なんとなく気分が憂鬱な日が続く、などが特徴ですが、無症状でご家族に無呼吸を指摘されて来院される方も多くいます。

診断と治療

診断は、睡眠中の呼吸状態や脳波などを詳しく調べる終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)で行います(図11左)。夜間睡眠時の1時間当たりの無呼吸の回数の程度によって重症度が決まり、中等症~重症は治療対象となります。
治療は、減量や生活習慣の是正(節酒、睡眠剤の中止など)を行うとともに、症状・重症度に合わせ、持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)(図11右)をお勧めしています。軽症例やCPAP療法が継続困難な方では口腔内装具装着なども提案しています。

図11. 終夜睡眠ポリグラフィー検査の実際(左)とCPAP療法に使用する装置の一例(右)

びまん性肺疾患(間質性肺炎)

通常の細菌による肺炎とは異なり、肺胞壁や気管支壁などに原因不明あるいは何らかの免疫学的機序によって炎症が続き、これら肺間質と呼ばれる部位が厚くなったり硬くなったりすることで、肺胞でのガス交換の効率が落ちる病気です。他の呼吸器疾患に比べ低酸素血症が目立ち、適切な治療をしないと進行も早く重篤になる場合もあります。
原因がわかるもの(自己免疫疾患:膠原病や関節リウマチ、薬の副作用、放射線治療の副作用、吸入物によるアレルギーや肺胞の障害)と、原因のわからないものに大きくわかれます。原因がわからないものは特発性間質性肺炎と呼ばれ難治性です(図12)。
治療法については、全身ステロイドのほかいくつかの特殊な免疫抑制剤や抗線維化薬などを使用しますが、それでも難治な症例も存在するため、診断や治療については高度の専門性が必要です。
当科では画像で診断が困難な場合には、積極的に気管支鏡検査(BAL, TBLB)を行い、それでも難しい時には当院呼吸器外科の協力のもとにVATS肺生検を行うなどして、肺の正しい病理組織診断を心掛けております。早期診断と適切な治療を患者さんに提供するように心掛けております。

図12. 特発性間質性肺炎(特発性肺線維症)

肺胞構造が広汎に破壊され、特徴的な蜂巣肺の所見を呈しています。

サルコイドーシス

疾患の解説はこちらをご覧ください。
当院のサルコイドーシスの診療実績はこちらをご覧ください。

図13. サルコイドーシスの典型的な画像(自験例)
両側肺門リンパ節の腫大を胸部X線写真および胸部CTで認め、Gaシンチグラムでの取り込み(黒く染まっている部分)はステロイド治療により減少することが分かります。

特殊な炎症性肺疾患

肺胞蛋白症、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)、ランゲルハンス組織球症(LCH)などの比較的希な疾患に対しても、国内の拠点施設の一つとして診療を行っています。
肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法(図14)や、LAMに対するmTOR阻害薬を用いた治療など、新しい治療にも積極的に取り組んでいます。

図14. 自己免疫性肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法
重症の自己免疫性肺胞蛋白症に対しては、一般的には人工心肺と全身麻酔併用下に全肺洗浄療法を行いますが、負担の大きい治療です。この症例ではGM-CSF吸入療法のみで肺胞内蛋白蓄積が軽快し、在宅酸素療法から離脱できました。

新患、新入院患者数(2022年度)

新患数 516人
新入院患者数 1,249人

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