科長あいさつ
特命教授 金澤 素
過剰なストレスが加わったときに、心身に変調を起こし、それが長引くことがあります。心療内科では、ストレスによる身体の変調に苦しむ患者さんを主な診療の対象にしています。「心身症」とは、発症や経過に心理社会的ストレスが密接に影響している身体疾患の総称です。
一般的な診療において、訴える症状の原因が確認できないものを「機能性疾患」と呼びます。その背後には心理社会的問題を抱えていたり、原因不明の自律神経機能の変化があったりします。ことに消化管(食道から大腸まで)は、症状の原因に炎症や腫瘍などの異常が確認できない「機能性の障害」がおこりやすい臓器です。東北大学病院心療内科では、機能性消化管疾患(過敏性腸症候群など)に力を入れて診療を行っています。また、当院では東北地区で唯一の摂食障害支援拠点病院として摂食障害(神経やせ症など)患者の診療にあたっています。
近年、医療現場では「全人的医療」や「生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)の評価」の必要性が強調されています。わたしたちは、「疾患」のみを扱うというよりも、「病を患っている人間」をこころとからだの両面から全体的にとらえてケアし、より質の高い生活を支援していくことが心身医療の本質と考えています。
東北大学病院心療内科で実施している心身症診療には、次のような専門的な特色があります。
- ストレスや心理社会的な影響が身体の症状やその病気の原因にどのように関わっているかを詳しく評価します。そのために、問診の際に症状の特徴やストレスについて詳しくお伺いします。さらに、アンケート形式のさまざまな質問票を利用して、症状のみならずストレスの程度や心理性格特性、クオリティ・オブ・ライフなどを客観的に評価して診断・治療に役立てます。
- ストレスは自律神経系や内分泌系を介して、からだの働きに影響を及ぼします。そこで、必要に応じてストレスを感じたときとそうでないときの自律神経機能やホルモン測定などの検査結果を参考にして診断・治療に役立てます。
- 一般的な身体的治療のほか、ストレスの軽減を導くための治療(心身医学的治療)を組み合わせて集学的に診療にあたります。心身医学的治療には、生活上の助言、緊張を和らげる方法、心理療法(認知行動療法など)、あるいは自律神経系に働く一部の向精神薬(抗うつ薬など)や漢方薬を用いた薬物療法が含まれます。それぞれの患者さんによって、どの治療の組み合わせがもっとも望ましいかどうかをよく考えて治療方針を決定します。
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