研究
総合外科 肝胆膵・移植グループ 科長 海野 倫明教授らの研究グループが切除不能膵がんの第II相医師主導治験を開始しました
膵がんは最も予後不良な悪性腫瘍であり、診断時の約半数以上が遠隔転移を伴う進行例です。近年FOLFIRINOX療法(注1)やGnP療法(注2)の導入により治療成績は改善していますが、5年生存率はいまだ約10%に留まり、新規治療法の開発が必要です。
東北大学病院総合外科の海野 倫明教授らのグループは、遠隔転移を有する切除不能膵がんまたは再発膵がん患者を対象に、標準化学療法であるGnP療法に、東北大学発の新規PAI-1(注3)阻害薬TM5614(注4)を併用する探索的第II相医師主導治験を、2026年5月から国内3医療機関で開始しました。
TM5614は、東北大学で創薬された経口PAI-1阻害薬であり、腫瘍内線維化抑制、がん関連線維芽細胞(注5)抑制、腫瘍関連マクロファージ(注6)制御、細胞障害性T細胞(注7)活性化を介して、膵がん特有の免疫抑制性腫瘍微小環境の改善を目指します。
本治験では、TM5614併用による抗腫瘍効果の増強と薬剤耐性の改善の可能性を検証し、膵がん治療における新たな併用療法開発に寄与することが期待されます。
【用語説明】
注1.FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法:5-FU、レボホリナート、イリノテカン、オキサリプラチンの4種類の抗がん剤を組み合わせた点滴治療。転移性膵がんに対する標準治療の一つ。
注2.GnP(ジーエヌピー)療法:ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法。転移性膵がんに対する標準治療の一つ。
注3.PAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1):線溶系制御因子であり、がん進展・免疫抑制・線維化に関与する分子。
注4.TM5614:東北大学で開発された新規経口PAI-1阻害薬。
注5.がん関連線維芽細胞:腫瘍内線維化および免疫抑制に関与する細胞群。膵がんの悪性度を反映する特徴の一つ。
注6.腫瘍関連マクロファージ:腫瘍促進性免疫環境形成に関与する免疫細胞。
注7.細胞障害性T細胞: 免疫細胞(リンパ球)の一種で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を異物として認識し、直接攻撃して破壊する役割を持つ細胞。キラーT細胞とも呼ばれる。
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