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【CRIETOが支援する 研究シーズ】超軽量リハビリ装具で脳卒中患者の歩行を改善 ASU参加企業との共同研究成果

2020.10.30 

 

医工学とASU 参加企業との産学連携で片麻痺患者の歩行を補助する装具を開発

 東北大学には100年以上に亘る医工連携の歴史があり、アカデミック・サイエンス・ユニット(ASU)参加企業との産学連携によってさらに研究開発の可能性を広げています。大学院医工学研究科の出江紳一教授らのグループは、日本電気株式会社(以下、NEC)バイオメトリクス研究所研究員の野崎岳夫氏、福司謙一郎氏との共同研究により片麻痺患者の歩行を改善する「バネ・カム式継手付きゲイトソリューション(短下肢装具)」を開発しました。短下肢装具とは、足関節に障害を生じた患者の歩行や立位を足関節の動きの制限、補助、制動によって補助するリハビリ用医療機器。大学病院リハビリテーション部の理学療法士でもある大学院医学系研究科関口雄介非常勤講師と本田啓太非常勤講師が、日々、片麻痺患者の歩行リハビリを行う中で現状の短下肢装具では機能が不十分であることを痛感。ロボットシステムの研究に取り組む大学院工学研究科の大脇大准教授に相談を持ちかけたことから本プロジェクトが始動しました。折しも、健康寿命延伸の鍵は歩行機能の維持にあると歩行支援器具に着目したNECの両研究員が、医療現場のニーズを探るべくASUに参加しており、それぞれの強みを生かすことで開発を加速させようと共同研究が実現しました。NECのセンシング技術と大脇准教授の工学的技術、関口・本田両理学療法士が臨床で収集・分析する歩行データ、それらを融合させることで、超高齢化社会にあって今後ますます求められるであろう高機能短下肢装具の研究開発を本格化させていったのです。

 片麻痺患者の歩行改善に有効な短下肢装具の開発にあたっては、まず3次元動作解析装置を用いて歩行動作を測定・検証。患者一人ひとりにあった装具にするためには、どんな歩き方をするのかを正確に評価することが大事と考えたからです。ここでは臨床で評価できるセンサーの開発をNECが担当しました。測定の結果、健常者の歩行中の足関節の硬さと片麻痺側の足関節の硬さの違いから、足関節の硬さが蹴り出しのパワーと歩行速度を左右すると評価されました。また、足関節の硬さを補う既存の短下肢装具は、立脚(歩行中、足が地面に着いている期間)初期の足関節底屈(足首が下方向に曲がること)時には制動するものの背屈(足首が上方向に曲がること)時には制動しない、つまり足関節の硬さが増加しないため蹴り出す力が発揮できないことがわかったのです。そこから蹴り出しを補助する装具の試作と評価を繰り返し、大脇准教授がバネ・カム機構を用いたモーターレスの超軽量歩行アシストデバイスを開発。バネ・カム機構のカム機構とは、運動の方向を変える機械要素で、回転する軸に取り付け、回転角度に応じて半径が変化することで蹴り出し時の足関節の剛性をアシストする仕組みです。既存の短下肢装具に簡単に装着することができ、中央下部に取り付けられたネジによって利用者の脚力に合わせてアシスト力を調整することもできます。

 

図A:開発したバネ・カム機構を有するデバイス(写真は右足用)。AFO(Gait Solution; Pacific Supply Co.,Ltd., Japan)が480gに対して、研究グループが開発したアタッチメントは65gと超軽量かつモーターレス。中央下部に見えるネジ(地面とは非接触)で、個人の脚力に応じた調整が可能。
図B: 蹴り出しアシスト効果のメカニズム。足首が背屈方向に回転すると、カム機構によりバネが変位し、蹴り出し方向のモーメント(回転力)を発生。

 

 

ウェアラブルセンサの開発により日常生活の自然な歩行データの収集を実現

 バネ・カム式継手付き短下肢装具の歩行への効果を検証するために同大学病院リハビリテーション部において脳卒中による片麻痺患者11人を対象に、歩行補助具を使用しない場合、従来の短下肢装具を使用した場合、バネ・カム式継手付き短下肢装具を使用した場合という3つの条件下で、3次元動作解析装置(モーションキャプチャーシステム)と床反力計測装置を使って歩行中の運動学・動力学解析を実施しました。結果、既存の短下肢装具だけでは立脚期後期に足関節で生成される底屈最大パワーが減少するのに対してバネ・カム式継手付き短下肢装具を取り付けた場合は底屈最大パワーの減少が抑えられ、蹴り出しを補助できていること、歩幅・歩行スピードもアップすることも立証されました。さらに、既存の短下肢装具にはない副次的な効果として、遊脚期(歩行中に足が地面に着いていない期間)中に麻痺側の膝が曲がりやすくなることも確認。遊脚期に膝関節が十分に屈曲しないと、つま先が十分に地面から離れず、つまずいたり転倒したりしやすくなります。転倒を回避しようとすると横方向から脚を回すように振り出す分回し運動が生じ、エネルギー効率が悪い上に、見た目にも特徴があるため患者が歩行リハビリを継続する際の精神的障壁になりやすいとされていました。バネ・カム式継手付き短下肢装具を使用することで、つまずきによる転倒を防止すると同時に、分回し歩行の抑制により歩行リハビリに前向きになれるといった心理的効果も期待できます。

 歩行アシストの側面から歩容データを収集する中で既存の動作解析システムでは屋内環境での測定に限られている点を問題視し、NECでは屋外環境下で測定可能なウェアラブル3 次元動作解析システムの開発に着手。ウェアラブルセンサにより従来の医療データには無い屋外での自然な歩容データの収集を実現しました。さらに、この共同研究を起点としてNECでは正しい歩容を身につけるための健常者用インソール埋め込み型3D加速度センサーの製品化も実現。バネ・カム機構の災害派遣レスキュー向け高起動パワードスーツの足関節部の受動機構への応用も検討されていると言います。研究グループを率いる出江教授は、産学連携により収集された歩行データを高齢者や片麻痺患者のQOL向上のために医療現場や介護施設、在宅サービスにフィードバックし、歩行再建のための社会循環システムを構築していきたいとしています。

 

Putting the Spring-cam Back Into Stroke Patients Steps 蹴り出しアシスト効果について動画で紹介 している(解説:英語)

URL: https://youtu.be/K1le_Mhp0vo

 

関連リンク

東北大学病院臨床研究推進センター広報誌「CRIETO Report vol.27」

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