研究
フェロトーシスを制御する酵素の汎用性の高い活性評価法を開発 -細胞死を標的とした新規抗がん薬の開発を加速する-
フェロトーシス(ferroptosis)(注1)は脂質酸化に依存する細胞死の一種であり、近年、既存の抗がん薬に抵抗性のがん細胞がフェロトーシスに高い感受性を示すことが知られており、フェロトーシスを標的とした新しい抗がん薬の開発が期待されています。
東北大学大学院農学研究科 伊藤 隼哉助教、仲川 清隆教授、大学院医学系研究科 三島 英換非常勤講師らはドイツ・ヘルムホルツセンターミュンヘン 中村 俊崇研究員、Marcus Conrad博士との国際共同研究により、フェロトーシスを制御する重要な酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)(注2)の酵素活性を評価するための新たな汎用性の高い方法を開発しました。従来の方法では、本来のGPX4の酵素活性を正しく評価することが難しかったのですが、今回開発した方法では、細胞から対象の酵素を直接回収する事によって、酵素の活性を正確かつ簡便に評価することが可能となりました。さらに、本法はGPX4だけでなく、フェロトーシスを制御する他の酵素であるFSP1(注3)の活性評価にも応用可能であるため、本法はフェロトーシスを標的とした新規抗がん薬の開発や評価法に広く応用されることが今後期待されます。
本研究成果は学術誌Cell Reports Methods に2月23日に掲載されました。
【用語説明】
注1.フェロトーシス(Ferroptosis):2012年に提唱された、アポトーシスとは異なる制御性の細胞死の形の一つ。脂質酸化依存性細胞死とも呼ばれ、細胞膜成分のリン脂質の過酸化によって引き起こされる細胞死。各種の臓器障害や神経変性疾患の病態や、がんに対する抗がん薬感受性などに関わることが近年注目されている。
注2.GPX4:グルタチオンペルオキシダーゼ4。有害な過酸化脂質を還元して解毒する役割を持つ酵素。
- 注3.FSP1:フェロトーシスサプレッサープロテイン1。細胞内でミトコンドリア外のコエンザイムQ10を還元することで抗酸化作用を発揮する酵素。フェロトーシスを抑える働きがある酵素として本研究の責任著者でもあるConrad博士らによって2019年に報告された。
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野
助教 伊藤 隼哉(いとう じゅんや)
TEL: 022-757-4419
Email: junya.ito.d3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野
非常勤講師 三島 英換(みしま えいかん)
Email:eikan*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学農学部 総務係
TEL:022-757-4003
Email:agr-syom*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)