東北大学病院

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当院からのお知らせ

【プレスリリース】超音波の血管新生作用発見 -医師主導治験実施へ

2014-08-20

【研究の概要】

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授(東北大学病院臨床研究推進センター センター長)、東北大学大学院工学研究科金井浩教授、長谷川英之准教授、および日立アロカメディカル株式会社の研究グループは、ある特殊な条件の超音波に血管新生作用があることを発見し、この研究成果を基に狭心症患者を対象とした超音波治療の医師主導治験を開始しました。約15年前から下川教授らは狭心症の虚血組織における血管新生を誘導する低出力体外衝撃波治療を開発・臨床応用を進めてきました。この低出力体外衝撃波治療は、2010年には厚生労働省から先進医療として承認を得ています。しかし、衝撃波は空気の層では膨張する性質があるので、組織障害の可能性を避けるために、空気で満たされた肺に当たらないよう注意深い操作が必要でした。また、衝撃波発生装置の他に、照射位置を確認するための診断用超音波装置も必要なため、治療装置の小型化には限界がありました。そこで下川教授らは、40年以上前から心エコー検査や腹部エコー検査など世界中で使われており、その安全性も確立している超音波に着目し、超音波にも血管新生作用がないか検討を行った結果、ある特殊な条件の超音波にも血管新生作用があることを発見しました。本治療法は、診断で用いられる出力範囲の超音波を用いた低侵襲性治療であり、今後の発展が期待できる新しい治療法です(図1)。

本研究の成果は、2011~2013年の米国心臓協会学術集会での発表を経て、2014年8月11日付で国際誌PLOS ONEに掲載されました。

 

【研究内容】

狭心症に対する標準的治療は、生活習慣の改善を基本に、(1)薬物療法、(2)カテーテル治療、(3)冠動脈バイパス手術の3つがあります。しかし、近年我が国では、人口の高齢化や食生活の欧米化に伴い、これら従来の治療法では十分な効果が得られない重症例が増加してきており、新しい治療法の開発が期待されています。本研究では、40年以上前から心エコー検査や腹部エコー検査など世界中で使われており、その安全性も確立している超音波に着目し、超音波にも血管新生作用がないか検討しました。まず、様々な照射条件の超音波をヒト由来の培養血管内皮細胞に照射して、主な血管新生因子の1つである血管内皮増殖因子(VEGF)の発現に対する効果を検討し、血管新生に最適な超音波照射条件を明らかにしました。さらに、この照射条件の超音波を、虚血性心疾患モデル動物(ブタ)の心臓に照射したところ、虚血領域の毛細血管数が増加して心筋の血流や収縮力が改善することを確認しされました(図2・3)。また、超音波治療の効果は、下川教授らが開発し、厚生労働省から先進医療として承認を得ていいた低出力体外衝撃波治療とほぼ同程度であることが分かりました。

本治療法は、大型動物(ブタ)を用いた前臨床試験において、その有効性が確認されています。また、治療に用いる超音波の出力は現在臨床の現場で診断に用いられている出力の範囲内であることから安全性に対する懸念がほとんどありません。この研究成果に基づき、厚生労働省の承認を得て、2013年度から、下川教授が代表研究者となり、重症狭心症患者を対象とした多施設共同の医師主導治験を開始しました(図4・5)。内服薬などによる治療を十分に受けているにも関わらず狭心症発作がある患者のうち、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術による改善が見込めない患者が対象になります。本治験は、東北大学病院臨床研究推進センターによる全面的な支援の下、全国8施設で実施中です。本治療法は、重症患者や高齢者にも負担が少ない低侵襲性治療であること、国産医療機器の開発プロジェクトであること、他の虚血性疾患への応用が期待できることなど、本治験において有効性を示すことができれば、世界へ与えるインパクトは極めて大きいと考えられます。

 

【超音波治療(超音波血管新生療法)のウェブサイト】

http://www.cardio.med.tohoku.ac.jp/ustiken/index.html

 

 

本研究は、文部科学省 特別教育研究経費(2010~2014年度)、厚生労働省 革新的医療機器創出促進事業(2012~2015年度)、及び文部科学省 地域イノベーション戦略支援プログラム 知と医療機器創生宮城県エリア(2012~2016年度)によってサポートされました。

 

尚、本プロジェクトは、当院臨床研究推進センターが支援する「シーズC」の一つです。

 

図1 治療の概念図

特殊な条件の超音波を心臓に照射すると、虚血領域の心筋で血管新生が促進される。

 

図2 超音波治療の血管新生効果

超音波治療群では、対照群に比して、虚血領域における毛細血管密度が高い。つまり、超音波治療により血管新生が亢進されている。一方、非虚血領域(健常部)には影響を与えなかった。

 

図3 超音波治療の心機能改善効果

 低下していた左室駆出率が、対照群では変わらないのに対し、超音波治療群では有意に改善した。

 

図4 医師主導治験への参加施設(全国8施設)

図5 医師主導治験のデザイン

 

【用語説明】

注1.狭心症:心臓の表面を3本の太い動脈(「冠動脈」といいます)が走っており、これらの動脈が心臓の筋肉へ血液を送ります。動脈硬化などのため、冠動脈の内腔が狭くなったり詰まったりすると、階段を上ったり運動したときに、十分な血液を心臓の筋肉へ供給することができず、胸痛や息切れが出現したり、心臓の働きが低下したりします。このような病態を狭心症といいます。

 

注2.カテーテル治療:内腔が狭くなったり閉塞したりした血管を風船やステントで拡げる治療。

 

注3.心筋虚血:心臓の筋肉に十分な血液が供給されていない状態。

 

注4.左室駆出率:心臓が1回の心拍で拍出する血液量を、心臓が最も拡張したときの容積を100%として表した値。左心室の収縮力(ポンプ能力)の指標。ヒトにおける正常値は50-80%。

 

【論文】

(著者)

Hanawa K, Ito K, Aizawa K, Shindo T, Nishimiya K, Hasebe Y, Tuburaya R, Hasegawa H, Yasuda S, Kanai H, Shimokawa H.

(タイトル)

Low-intensity pulsed ultrasound induces angiogenesis and ameliorates left ventricular dysfunction in a porcine model of chronic myocardial ischemia

「低強度パルス波超音波は、ブタ慢性心筋虚血モデルにおいて血管新生を促進し心機能を改善する」

 

米国学術誌PLOS ONE (2014)に掲載(8月11日付け)

 

 

【研究に関するお問い合わせ先】

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野

教授   下川 宏明(しもかわ ひろあき)

准教授  伊藤 健太(いとう けんた)

電話番号:022-717-7152

Eメール:ito-kenta@cardio.med.tohoku.ac.jp

 

【治験に関するお問い合わせ先】

東北大学病院臨床研究推進センター 開発推進部門

電話番号:022-717-7136

Eメール:c2chiken@crieto.hosp.tohoku.ac.jp

 

【報道担当】
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7149

FAX:022-717-8931

Eメール:pr*hosp.tohoku.ac.jp(*を@に変えてください)

 

記者会見する下川宏明教授(右)と伊藤健太准教授(左)

記者会見する下川宏明教授(右)と伊藤健太准教授(左)

 

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記者会見の様子

 

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プレスリリース資料(PDF)

 

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