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東北大学病院

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総合外科 上部消化管・血管グループ

対象疾患と診療内容

私たちは食道・胃疾患に対する上部消化管外科と腹部・末梢血管疾患に対する血管外科を専門領域として診療を行なっております。各領域において先進的医療を低侵襲で行い、豊富な経験から各分野で日本をリードする実績を誇っております。
食道分野では1995年に本邦初の胸腔鏡下食道癌手術を導入した歴史を持ち、これまでに800例を超える実績で日本における食道癌の診療をリードしてきました。また化学放射線療法後の遺残・再発に対しても胸腔鏡下手術で対応している全国的にも数少ない施設です。他にも光線力学療法(PDT)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、ロボット手術(da Vinci)などより侵襲の低い治療を行っています。更に癌以外の食道疾患にも対応しており、アカラシアに対しては経口内視鏡的筋層切開術(POEM)も行っています。
胃外科分野では腹腔鏡手術をはじめとした低侵襲手術を積極的に導入し行なってきました。2022年には、最先端のロボット手術(da Vinci)を導入し順調に件数を重ねるとともに、さらなる精度の高い安全な治療に取り組んでいます。現状では、胃癌においては進行癌も含めて9割以上を腹腔鏡あるいはロボット手術で行なっています。また、胃癌の根治性を損なわずに術後の機能障害を低減する機能温存手術も積極的に導入しており、胃上部の胃癌に対しては胃を温存する噴門側胃切除術を実施し、同手術においては全国でも有数の治療実績を誇ります。一方で、高度に進行している、あるいは再発の可能性が高い進行癌の場合には、手術の前に抗がん剤治療を行い、腫瘍を縮小させてから手術を実施するなど、がんの進行度に応じて適切な治療を実践しています。
血管外科分野の診療対象疾患は腹部大動脈瘤、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)、静脈血栓塞栓症など胸部以外の血管、脈管疾患です。腹部大動脈瘤に対してはステントグラフト治療を積極的に行っており、また通常では治療困難な患者さんを積極的に受け入れています。末梢動脈疾患に対しては病態の正しい評価から始まり保存的治療から血管内治療、バイパス、またはこれらを組み合わせたハイブリッド治療など、患者さんのニーズによって幅広い治療選択肢を有しています。豊富な症例数をもとにより安全、低侵襲で効果的な治療を目指し日々取り組んでいます。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」

食道癌

食道癌に対して、胸腔鏡手術、放射線化学療法、内視鏡的治療を組み合わせて治療にあたっています。胸腔鏡下食道切除術は、従来の開胸手術に比べ、痛みと呼吸機能への影響が少ない低侵襲な手術で、術後の回復が早い一方、根治性は従来の手術と変わりがありません。1994年に食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術をわが国で初めて行い、この領域をリードしてきました。2021年までに900例を超える胸腔鏡下食道切除術の手術実績があります。また2013年から他施設に先駆けて開始したロボット支援下食道切除術は2023年現在で150例ほど行っております。ロボット手術は、より繊細な操作が可能になることから、合併症の軽減と早期回復が期待されています。
また、近年の化学放射線療法の成果を取り入れ、手術を希望されない患者さんには、根治的化学放射線療法も行っています。実際、ステージIの患者さんでは、多くの方が食道温存可能となっています。一方、化学放射線療法が効かなかった患者さんに対するサルベージ手術も積極的に行っており、成績向上を図っています。食道表在癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術ESDや食道癌局所遺残例に対する光線力学療法PDTも多く行っており、食道癌全体の成績向上と患者さんのQOL維持というバランスをとった総合的な治療を行っています。
食道癌の治療に関する詳細は「http://www.surg.med.tohoku.ac.jp/esophagus/medical-1.html」をご覧ください


食道良性疾患

食道アカラシア、食道胃逆流症、食道裂孔ヘルニアなどの機能性疾患に対する手術を行っています。食道アカラシアに対する腹腔鏡手術(Heller-Dor手術)は、これまでに数多く施行し、良好な成績をおさめてきましたが、2015年から経口内視鏡的筋層切開術(Per-Oral Endoscopic Myotomy: POEM)を東北地方で初めて開始しました。この治療は体に傷のつかない低侵襲手術であるとともに治療効果も大きく、非常に満足度の高いものになっています。また、食道憩室、食道良性腫瘍に対する手術や、特発性食道破裂などの緊急手術に対しても積極的に胸腔鏡手術を行い、患者さんの負担軽減を図っています。


胃疾患

胃癌に対する手術は、進行癌を含めてほとんどの患者様に対して、腹腔鏡手術を中心とした低侵襲手術で対応し、手術の負担を最小限とするからだにやさしい治療に努めています。2022年には、最先端のロボット手術(da Vinci)を導入し、さらなる精度の高い安全な治療に取り組んでいます。
早期胃癌では、適切な手術を受けることで治癒を期待できます。また特に早期胃癌に対しては、根治性はもちろんのこと、機能温存手術すなわち胃を残す手術にも取り組んでいます。具体的には、胃上部の癌に対して、胃の後半部分を半分以上残せる場合に行う噴門側胃切除術や、胃の入口部分を小さく温存する胃亜全摘術などがあります。
進行胃癌では、治癒率の向上のために手術と抗がん剤治療を組み合わせた総合的な診療が求められます。手術前に抗がん剤治療を行い腫瘍を縮小させて手術を行う場合や、手術後に再発を予防するための抗がん剤治療(術後補助化学療法)が必要となる場合があります。しかし胃切除後には食事摂取が落ち込むため、抗がん剤治療の継続が難しくなることもあります。そういった状況に対して当科では、低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット手術、機能温存手術)と術後の栄養サポートにより、治療効果を上げる取り組みを行なっています。
また、切除できない高度進行癌に対する症状を緩和するための手術(胃空腸バイパス手術など)も、ほとんどを腹腔鏡手術で実施し、からだへの負担を最小限に抑えるよう努めています。
胃GIST等の胃粘膜下腫瘍に対しては、そのほとんどを腹腔鏡下胃部分切除で安全に切除しています。また、噴門(胃が食道につながる部分)に近いなど、シンプルな胃部分切除が難しい場合には、腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を選択し、胃の内側・外側の両面からのアプローチにより切除範囲を最小限として胃機能を温存する治療を積極的に実施しています。胃部分切除の場合には、術後障害(胃切除後の食事にまつわる困ったこと)は、ほとんどありません。ただし、腫瘍の場所あるいは大きさによっては幽門側胃切除術、胃全摘術といった定型手術が必要なこともあります。

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左:腹部の創(腹腔鏡手術)/右:腹部の創(ロボット手術)

 

幽門側胃切除術

 

胃全摘術

 

噴門側胃切除術


高度肥満症:減量手術・糖尿病に対する代謝改善手術

減量・代謝改善手術は、減量することで高度肥満症にともなう併存疾患(糖尿病・高血圧・高脂血症・睡眠時無呼吸症候群など)を改善し、生命予後を改善することを目指した治療です。整形外科的疾患(変形性股関節・膝関節症や腰痛)の症状緩和・進行抑制も期待できます。当院では他施設に先駆けて2010年から手術治療を開始し、実績を積んできました。他施設では難しい修正手術(効果不十分・術後障害に対する手術)にも積極的に取り組んでいます。

手術適応
1.腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(保険診療)

6ヶ月以上の内科治療で十分な効果が得られないBMI35以上の肥満症

高血圧・糖尿病・高脂血症・睡眠時無呼吸症候群のいずれかの合併症を有する

6ヶ月以上の内科治療で十分な効果が得られないBMI32.5-34.9の肥満症

コントロール困難な糖尿病があり、管理困難な高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群のいずれかを合併するもの。

2.腹腔鏡下スリーブ状胃切除術+十二指腸空腸バイパス術(現在は先進医療)

BMI 35以上の肥満症のうち、重症糖尿病を合併するもの

インスリン治療を必要とする糖尿病合併肥満症でも治癒する可能性があります。

BMI(ボディ・マス・インデックス):身長と体重から求める肥満度の指標。BMI=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)例)身長160cm、体重100Kgの場合:BMI=100÷1.6÷1.6=39.06

スリーブ状胃切除術
(胃の大彎側(外側)の大部分を切除して細長く形成し、摂食を制限する手術)

 

スリーブ状胃切除術+十二指腸空腸バイパス術
(スリーブ状胃切除術に、消化管バイパスを付加し、消化吸収制限効果を加えさらに高い効果をもつ手術)


鼡径ヘルニア・腹壁ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニア

鼠径ヘルニアおよび腹壁ヘルニア・腹壁瘢痕ヘルニアに対しても、専門的に診療しています。

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは一般的には「脱腸」と呼ばれており、足の付け根から腸管やお腹の中の臓器が脱出してくる病気です。自然に治ることはなく、腸管がはまりこんで戻らなくなる「嵌頓」をきたして急激な痛みから緊急手術を要することもあります。
治療は手術が中心となりますが、基本的にはヘルニアの穴(ヘルニア門)をポリプロピレン製のメッシュで覆う手術になります。当院では腹腔鏡下手術を基本としており、腹部に3箇所の孔を開けてお腹の中をモニターで映しながら手術をします。下腹部の手術歴のある方や、抗血栓療法を行っている方には鼠径部切開法を選択しています。再発が少なく痛みも最小限となるような治療を心がけています。再発や術後の疼痛に関しても対応していますのでご相談ください。

腹腔鏡下修復法(TAPP法)

 

鼡径部切開法(リヒテンシュタイン法)

 

腹壁ヘルニア(腹壁瘢痕ヘルニア)

腹壁瘢痕ヘルニアを含む腹壁ヘルニアに対して、これまでは腹腔内にメッシュを挿入するIPOM法という手術を行うことが多かったのですが、腸管癒着などのメッシュ関連合併症や、疼痛の問題がありました。そこで当院では腹膜外修復法という方法を行っています。アプローチの違いによって名前が変わり、Rives-Stoppa法や鏡視下で行うeTEP法やeMILOS法があります。腹直筋という筋肉と腹直筋を包む後ろの膜(腹直筋後鞘)の間にスペースを作り、そこにメッシュを留置する手技です。さらにヘルニア門が大きくスペースが足りない時に、外側で腹横筋という筋肉の剥離を行って(TAR)、より大きなメッシュを留置する手技です。これらの手術によって疼痛が少なく、さらに合併症および再発の少ない手術を目指しています。

腹壁(瘢痕)ヘルニア

 


消化管疾患

一般病院では治療困難な、重篤な合併症や併存疾患のあるリスクの高い患者さんの胃癌、大腸癌などに対する手術も行っています。腹腔鏡手術を基本に、全身管理を行い、安全性を保ちながら治療を行っています。


腹部大動脈瘤

腹部でもっとも大きな動脈である腹部大動脈が拡大する病気です。動脈瘤が大きくなると破裂する危険がでてきますのでそれ以前に治療することが大切です。現在は2つの治療法があります。一つは開腹で人工血管に取り替える手術、もう一つはステントグラフトと呼ばれる人工血管をカテーテルで足の付け根から挿入する治療です。それぞれの治療には良い面と悪い面がありますので、どの段階でどの治療法を選ぶかは患者さんに説明し相談しながら決めていっています。腹部大動脈瘤は症状がなく、また検診の制度もありませんので多くの方はかかりつけの先生に診察やエコーで見つけてもらい、当科に紹介されているのが実情です。
なお胸部の大動脈瘤は当院では心臓血管外科が診療担当科となっています。

開腹手術の皮膚切開

 

術前

開腹手術後

 

ステントグラフト内挿術の皮膚切開

 

術前

ステントグラフト内挿術後


閉塞性動脈硬化症

動脈硬化によって血管が狭くなるため、足に血液が流れにくくなる病気です。初期には足の冷たい感じから歩いた時のふくらはぎの痛みなどの症状が現れます。進行すると足の趾(ゆび)先やかかと、場合によっては膝から下が壊死に陥ります。この病気は症状によって治療法を選択することが好ましく、軽症の方には内服などの内科的治療、運動療法などのリハビリ治療を含め多くの選択肢を用意しています。希望によってはカテーテル治療や手術を行います。足が壊死した患者さんは急いで治療をしないと足を失ってしまいますので積極的にカテーテルや手術による治療を行っています。

左腸骨動脈の閉塞

左腸骨動脈のカテーテル治療 左:治療前、右:治療後

下腿のバイパス手術


深部静脈血栓症

深部静脈血栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれ、足から腹部にかけての静脈に血栓ができる病気です。他の病気に合併したり、手術を受けるときに発症することが多いですが、原因がわからずに血栓ができる方もいます。足にできた血栓が肺に飛んでしまうと呼吸が苦しくなったり、命に関わることもあります。早期発見、早期治療が大切で当科では循環器内科と連携して深部静脈血栓症の予防や治療に携わっています。


総合外科 独自webサイト

年間症例数

(2022年)

食道癌/食道疾患に対する手術

手術数 うち
鏡視下
手術
うち
ロボット
支援下手術
食道癌根治
手術
胸部食道
切除術
72 43 28
咽頭喉頭
食道切除
1
内視鏡治療
(ESDなど)
22
光線力学
療法
(PDT)
13
食道
アカラシア
手術
(POEM)
33
食道裂孔
ヘルニア手術
6 6

血管の手術

腹部大動脈瘤
(人工血管置換術)
32
腹部大動脈瘤
(ステントグラフト)
49
閉塞性動脈硬化症
に対する手術(バイパス)
21
閉塞性動脈硬化症
に対する手術(ハイブリッド)
2
閉塞性動脈硬化症
に対する手術(血管内治療)
28
下肢静脈瘤 4
その他
(内シャント、急性動脈閉塞、
腹部血管再建など)
110

胃手術

手術数 うち
腹腔鏡手術
うち
ロボット
支援下手術
胃切除術数 51 44 10
幽門側胃
切除
30 27 8
噴門側胃
切除
2 2 1
胃全摘 10 7 1
腹腔鏡下
胃部分切除
9 8
うち内視鏡
合同手術
3

減量・代謝改善手術数

手術数 うち腹腔鏡手術
減量・代謝改善手術
(全て腹腔鏡手術)
15 15
スリーブ状胃切除術 13 13
スリーブバイパス術 2 2

鼡径へルニア・腹壁ヘルニア

手術数 うち腹腔鏡手術
ヘルニア 70
腹壁 18 13
鼡径 52 22

新患、新入院患者数(2022年度)

肝胆膵・移植、下部消化管、上部消化管・血管、乳腺・内分泌グループ合算数
新患数 1,220人
新入院患者数 2,362人

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