東北大学病院

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診療受付:8:30-11:00 再診受付機 8:00-11:00

休診日:土・日・祝・年末年始12/29-1/3

診療時間:平日 8:30-17:15

お問い合わせ:022-717-7000 [ 時間外・休診日 022-717-7024 ]

耳鼻咽喉・頭頸部外科

特色

 耳鼻咽喉・頭頸部外科では中耳・耳管・内耳・鼻副鼻腔・頭頸部悪性腫瘍・神経耳科、頭蓋底外科・喉頭など多岐にわたる領域の疾患を対象にしておりますが、当科ではどの分野においても全国でも最先端の医療・研究を行っていると自負しております。

先端的医療

1) 難治な耳管開放症に対して耳管ピン挿入術を開発しました。
2) わが国における側頭骨・頭蓋底外科の重要なセンターの1つとして機能しております。
3) 人工内耳埋込術を行っております。
4) 頭頸部腫瘍の総合的治療を行っています。手術、化学療法、放射線により高い治癒率を得ております。
5) 脳磁図を用いた聴覚の診断を行っています。

1. 聴覚機構と難聴に関する研究

1)遺伝性難聴に関する分子生物学的研究
2)音響外傷に対する予防、防御機構の研究
3)内耳イオン輸送機構に関する研究
4)突発性難聴の発症機序に関する電気生理学的研究
5)難聴者の聴覚特性と聴覚支援に関する研究
6)聴神経腫瘍耳における蝸牛内リンパ直流電位の測定

2. 上気道の感染・アレルギー性炎症の臨床的ならびに基礎的研究

1)乳幼児急性化膿性中耳炎発症に関する疫学的、微生物学的研究
2)好酸球性中耳炎の全国疫学調査
3)鼻アレルギーならびにアレルギ—性副鼻腔炎の成因と治療に対する研究

3. 頭頸部腫瘍の診断と治療に関する研究
臨床的研究

(a)頭頸部進行癌の成績向上を目的とした 多剤併用化学療法+放射線治療による頭頸部癌の治療
(b)臓器・機能温存をめざした、喉頭・下咽頭部分切除術、化学療法+放射線治療による早期癌の治療
(c)放射線治療後の手術症例における合併症対策を目的としたPGE1の使用による合併症の根絶に関する研究

頭頸部腫瘍の予防を目指した研究

(a) 頭頸部腫瘍の遺伝子変異の解析:3p, 9p, 17p などのLOH、sialidase遺伝子の発現など
(b) 頭頸部癌の発癌における病 原微生物の関与に関する研究(Streptococcus属など)
(c) 頭頸部癌の発癌におけるアルコール・アルデヒドの関与 (ALDH遺伝子の多型性など)

4. 真珠腫性中耳炎の発症機序に関する研究

1)真珠腫性中耳炎の動物モデル
2)真珠腫性中耳炎発症における閉鎖不全耳管の関与

5.難治性耳管開放症の診断法ならびに治療法の研究

1)音響学的研究
 (a) 耳管、中耳モデル、並びに動物を利用した、耳管開放の程度が自声知覚の音響的特性に与える影響の解析、
 (b) 耳管の音響特性計測による開放耳管の重症度評価の試みを行っている。
2)3D-CTを用いた耳管の形態学的研究
3)難治性耳管開放症に対する耳管ピンの開発

6.神経耳科・頭蓋底外科手術法に関する研究

 聴神経腫瘍手術や側頭骨切除術などの手術治療は近年の耳鼻咽喉・頭頸部外科における重要な分野となっている。 安全かつ機能的な手術法の基盤としての研究を行っている。

対象疾患と診療内容

当科で診療する主な疾患

開業医や他の病院から紹介される方や精密検査が必要な方が中心です。
以下に専門外来が担当する代表的な疾患をご説明いたします。

中耳外来

 中耳外来では主に以下の疾患の治療を行っております。

1)滲出性中耳炎

 鼓膜の内側の中耳腔に、炎症の遷延化により貯留液が存在する疾患です。また、再発や難治例では鼓膜切開、鼓膜換気チューブ留置術を行うケースもあり長期間の専門医の経過観察が必要とされています。

2)好酸球性中耳炎

 気管支喘息に合併した、難治性中耳炎です。膠状の耳漏と中耳腔に肉芽を形成するのが特徴です。治療は薬物療法が主体です。

3)慢性(穿孔性)中耳炎

 多くは、急性中耳炎の慢性化により起こります。鼓膜に穿孔があり、風邪のたびに耳漏を繰り返し、徐々に難聴が進行していきます。治療は適切な抗菌薬の使用と耳内の清掃です。難聴を改善し、耳漏を止めるために、手術が必要になることがあります。

4)真珠腫性中耳炎

 真珠腫性中耳炎には先天性と後天性の2種類があります。

a)先天性真珠腫:先天的に中耳腔内に皮膚の要素が残ってしまった状態です。大きくなると難聴や耳漏の原因となります。また、耳小骨奇形を合併していることもあります。最近は3歳児健診で偶然に発見されることも増えています。

b)後天性真珠腫:中耳腔の陰圧などによって鼓膜が内側に袋状に陥没し、そこに耳垢が貯まって出なくなると、その部分に炎症が繰り返されるようになります。そうすると陥没して出来た袋の周りに肉芽(にくげ)が生じ、そこから骨を破壊する因子が分泌されて、袋が益々大きくなり、中耳腔に侵入していく特殊な中耳炎です。骨の破壊作用があるため、通常の慢性穿孔性中耳炎より重篤で、中耳の構造を破壊し、難聴、めまい、顔面神経麻痺、髄膜炎などの合併症を引き起こす危険があります。多くの場合に手術が必要な疾患です。

5. 耳硬化症・中耳奇形

 どちらも耳小骨の異常によって難聴となる疾患です。前者は中年くらいの年齢の方に多くみられます。後者は生まれつきの異常です。どちらも鼓膜には大きな異常がありません。これらは手術によって治すことができる疾患です。

耳管開放症外来
耳管とは?

 耳管とは中耳と咽頭をつなぐ管のことです。中耳の圧力を調節する働きがあります。正常な状態では、あくびをしたり唾を飲み込んだりした時だけ耳管が開放します。
 耳管の開放の度合いは人によってまちまちです。例えば、アデノイドが大きな小児では、咽頭側の耳管口がアデノイドで塞がれて耳管が開きにくくなり、中耳の圧力の調節ができなくなるため高率に滲出性中耳炎になります。

耳管開放症とは?

 逆に、耳管が必要以上に開いている(耳管開放症)場合には、自分の声が耳に響いてうるさい(自声強聴)、耳が塞がった感じがする(耳閉感)、自分の呼吸音が響いて聞こえる等の症状に悩まされます。このような耳管が開きすぎるために起きる疾患(耳管開放症)の治療を耳管外来で行っております。
 耳管外来では、先ず患者さんの詳細な問診、鼓膜や咽頭所見の観察、体位による症状の変化の有無、各種耳管機能検査の結果を踏まえて総合的に耳管開放症の重症度を判定いたします。
 次に重症度に応じて、生活指導、保存的治療(点鼻薬や漢方療法等)、手術療法を選択します。寝ているとき以外は耳管の開放症状が常にあるような重症例では、当科で開発した耳管ピンの挿入術を行っております。 開きすぎる耳管を狭くするのが目的です。
 現在までに数十例の方々に耳管ピン挿入術を行いましたが、重篤な副作用は認めておりません。日帰り手術で可能ですが、遠くから来られた方の場合は入院の上で行っています。症状の改善率は70〜80%です。
 耳管開放症の診断はむずかしい場合もあり、複数の耳鼻科を巡り歩いてやっと診断が確定したという方もおられます。そのような方々は長期間にわたり煩わしい症状に悩まされおり、一日でも早く症状から解放されたいと望まれています。我々も患者さんの希望を叶えられるように努力いたしております。耳管開放症でお悩みの方は是非ご相談ください。

難聴外来

 難聴外来では音を感じ取る内耳や神経、脳レベルの異常の有無について診断します。対象となる疾患は突然の難聴で発症する突発性難聴や、最近の研究によって明らかになってきた遺伝性難聴、加齢による難聴、薬剤性難聴、その他原因不明の難聴などの診断、治療を行います。治療困難な難聴で聞き取りに不便を感じている方には、補聴器が聴覚QOLの改善に役立ちます。また、不幸にして補聴効果がないほどの両耳高度感音難聴になった方、あるいは生まれながら両耳高度感音難聴である方には人工内耳埋め込み術が適応となり、音の世界を取り戻すことができます。一口に難聴といってもその程度、性質はさまざまです。当科では最新の診断法を用いて障害部位の診断、機能評価を行い、それぞれの方の聴覚特性に基づいた補聴器装用指導、人工内耳医療など総合的な聴覚管理を行っています。

鼻副鼻腔・アレルギー外来

 副鼻腔外来では主に以下の疾患の治療を行っております。

1)慢性副鼻腔炎

 病原微生物による慢性化膿型やアレルギーを背景にした二つのタイプの慢性副鼻腔炎に主として分けられます。治療はタイプにより抗生剤、消炎酵素剤、抗アレルギー剤、点鼻薬の処方と鼻洗浄などを組み合わせた保存的治療をまず行います。治療抵抗性を示す場合には内視鏡下鼻副鼻腔手術を行います。当科では原則として手術は全身麻酔下での内視鏡手術を行っており、以前行われていた口から切開する手術方法は行っていません。合併症があり、全身麻酔によるリスクが高い場合には局所麻酔による手術を行います。

2)アレルギー性鼻炎

 水様性鼻漏、反復性くしゃみ発作、鼻閉を三主徴とする鼻炎で、原因抗原により通年性と季節性(花粉症)に分けられる。通年性の抗原は、主としてハウスダスト(室内塵)、ダニ、カビであり、季節性(花粉症)の抗原はスギ花粉が有名ですが、ほかにイネ科花粉(初夏)、ブタクサ花粉(秋)などがあります。治療は抗原の回避と除去が基本で、抗アレルギー薬の内服や点鼻治療などの保存的治療が中心となります。最近は眠気などの副作用が少ない抗アレルギー薬も多く開発されるようになりました。保存的治療が無効な場合には手術的治療を行い、アレルギー反応の場である下鼻甲介をレーザーで焼灼したり、切除したりします。また下鼻甲介を支配する神経を切断する手術も行っています。

3)術後性上顎嚢胞

 以前副鼻腔炎の手術(口の中からの切開)をうけた患者さんのなかに、術後数年〜数十年を経て大きな嚢胞が出来上がる場合があり、頬部腫脹、歯痛、眼球圧迫、複視などの原因になります。根治的には手術治療が必要で、原則的には全身麻酔下の手術を行います。

4)鼻中隔弯曲症

 鼻中隔が極度に弯曲していると頑固な鼻閉の原因になり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となる例もあります。他の疾患がない場合には手術により鼻閉やいびきが改善します。

5)鼻骨骨折

 外傷により鼻背部の変形が生じた場合には手術を行いますが、亀裂骨折や変形が少ない場合は手術をせずに保存的に治療します。

6)眼窩吹き抜け骨折

 外傷により眼窩を支えている薄い骨が骨折して、眼球を動かす筋肉などが骨折片に挟まったり圧迫されたりして、眼球の動きが制限されることがあります。 その場合は出来るだけ早い時期に鼻内視鏡手術や、口の中から切開する経上顎洞経由で整復術を行います。

神経耳科外来(めまい・顔面神経外来)

 めまいを起こす疾患や顔面神経麻痺、耳下腺腫瘍、聴神経腫瘍、頭蓋底腫瘍の症例を取り扱います。平衡機能検査、聴力検査、MRI、CTなどの画像診断を行い、専門医が診断し治療を行います。

1)メニエール病

 内耳リンパ液の異常によりおこる疾患で、めまい発作と聴力低下・耳鳴を三主徴とし、発作を繰り返します。薬物治療を行いますが、改善がみられない時は手術治療を行うこともあります。

2)良性発作性頭位眩暈症

 三半規管の異常により「頭を動かした時だけ」回転性めまいが起こります。 通常は難聴・耳鳴りなどの症状は伴いません。自然に治ることも多いのですが、長引く時は薬物治療や運動療法を行います。

3)前庭神経炎

 ウイルスなどによる障害が考えられていますが、大変強いめまいが長時間続きます。前庭神経炎も、通常は難聴・耳鳴りなどの症状は伴いません。薬物による治療を行います。

4)顔面神経麻痺

 原因不明のベル麻痺が最も多く、水痘ー帯状疱疹ウイルスによるものをハント症候群と呼びます。麻痺がひどい時は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)と抗ウイルス薬の投与を行います。稀ですが顔面神経鞘腫などの腫瘍性疾患によって麻痺が起こります。また中耳炎や耳下腺悪性腫瘍などにより顔面神経への影響が生じた場合にも顔面神経麻痺が起こります。

5)耳下腺腫瘍

 顔面神経は耳下腺の中を通って顔を動かす筋肉を支配します。耳下腺腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれますが、良性腫瘍の場合には顔面神経を温存して腫瘍を摘出します。悪性腫瘍の場合には耳下腺を顔面神経と一緒に切除し、場合によっては顔面神経を再建します。

6)聴神経腫瘍

 めまい、耳鳴り、難聴を起こす疾患の中には、稀に内耳神経に腫瘍が出来ていることがあります。治療は当科では原則的には手術治療による摘出を目指しておりますが、放射線治療や手術治療+放射線治療などの治療もあります。ほとんどが良性腫瘍ですが、大きくなると脳幹部を圧迫して生命の維持に支障をきたすことになるため治療が必要です。

7)頭蓋底腫瘍

 グロームス腫瘍、若年性上咽頭血管線維腫、副咽頭間隙腫瘍などの稀な疾患に対しても手術・放射線治療を行います。


頭頸部腫瘍外来

口腔腫瘍外来
1)頭頸部とは

 「頭頸部」と呼ばれる領域は、耳・鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・頸部食道・頸部といった広範囲な部位を含んでいます。これらの部位が聴覚・嗅覚・味覚のほか咀嚼・嚥下・呼吸・発声・構音という重要かつ多岐にわたる機能を担っているため、頭頸部の癌の治療にあたっては、その機能の温存、治療後の患者さんのQOL(quality of life 生活の質)を十分に考慮する必要があります。

2)治療方針

 私達はこれまでの治療成績・経験から手術治療が頭頸部癌治療の中心であると考えています。しかしながら咀嚼・嚥下・呼吸・発声・構音機能の温存あるいは術後の美容面のダメージを考慮しなければならないので、臓器の欠損は最小限度にとどめなければなりません。そこで場合によっては放射線治療・化学療法(抗癌剤による治療)を組み合わせることもあります。

3)告知について

 癌の治療には告知の問題があります。私達は病理組織診断がついた時点で患者さんとその家族に告知しています。治療中でも治療後でも患者さんがどのような状態で癌がどうなっているのかを包み隠さずお話しています。こういった情報の共有化を計ることが悪性腫瘍の治療には必須と考えています。情報の共有化により患者さんご本人の自分の病気に対する理解が深まると同時に、治療方針(どうしてこのような治療が必要なのか)や、治療する立場にある我々医療従事者への理解も深まると思います。悪性腫瘍の治療には何よりもまず患者さんご本人の病気を治そうという意志が必要です。その意識を高めるためにも自分の病気を知るということが重要です。

4)各部位の腫瘍

A)聴器癌(側頭骨腫瘍)
 耳にできる癌の総称です。 発生する部位で外耳癌、外耳道癌、中耳癌に分類されます。 切除可能なら手術が適応になりますが、進展している症例も多く、放射線治療を行う例もあります。

B)鼻・副鼻腔癌
 鼻腔、副鼻腔に発生する癌でほとんどが扁平上皮癌です。上顎癌が最も多く、解剖学的に症状が出にくいため進行癌が多い傾向があります。宮城県立がんセンター頭頸科と当科では化学療法、手術、放射線治療の順番で治療を行う3者併用療法をスタンダードとしています。化学療法は可能な場合、選択的動注療法を行っています。この方法で治療した場合の5年生存率は全体で約80%であり、進行癌に対しても治療効果が高い、非常にすぐれた治療法だと考えられます。

C)口腔癌
 口の中にできる癌の総称です。舌癌が最も多く、その他歯肉癌、頬粘膜癌、口腔底癌、硬口蓋癌があります。喫煙・飲酒などのリスクファクターの他、口腔内の衛生や歯の刺激も関与しているのではないかと考えられています。舌癌は比較的若い方も発症するので注意が必要です。治療は手術が基本ですが、欠損が大きい場合には再建術が必要です。場合によっては放射線治療を中心に治療することもあります。

D)上咽頭癌
 鼻腔の後方で咽頭の上部から発生する癌です。鼻づまり、鼻出血、頸部リンパ節腫脹などが初発症状として多いのですが、時に滲出性中耳炎が初発症状となることもあります。放射線感受性、薬剤(抗癌剤)感受性の高い癌なので放射線治療の適応となります。

E)中咽頭癌
 口腔の後方に位置する部位で、口蓋扁桃、舌根、軟口蓋、咽頭後壁を含みます。非常に多重癌(他の部位に別の癌ができる)が多く、喫煙・飲酒などのリスクファクターが関与していると思われます。頸部リンパ節転移が多い癌です。切除可能なら手術の適応となりますが、欠損が大きい場合は再建術が必要です。

F)下咽頭癌
 中咽頭の下方で頸部食道の上方に位置する場所です。前方に喉頭が存在するためこの部位にできた腫瘍を切除する際は下咽頭・喉頭・頸部食道全摘術が必要になる場合が多く、再建術も必要で大きな手術になります。頸部リンパ節転移も多い癌です。 原発腫瘍が小さい場合には下咽頭部分切除術の対象になったり、放射線治療を用いたりすることもあります。喫煙・飲酒などのリスクファクターが関与していると思われ、中咽頭癌同様とても多重癌が多い部位です。

G)頸部食道癌
頸部食道に発生する癌で治療方針は下咽頭癌に準じます。

H)喉頭癌
 声帯に発生することが大部分ですが、声帯の上方や下方に発生することもあります。声帯に発生すると嗄声(しわがれ声)が出現することが多く、早期に発見されることが多い癌です。喫煙の関与が非常に大きな癌です。早期の癌に対しては放射線治療を行うことが多いのですが、最近ではレーザーを用いた切除術で治療期間を短縮する方法も行われています。癌が大きくなると喉頭全摘術が必要となりますが、宮城県立がンセンター頭頸科と当科では選択的動注化学療法と放射線治療を併用して進行癌の一部(T3癌)を手術せずに治す試みを行っています。

I)唾液腺癌
 大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の他、小唾液腺に発生する癌の総称です。扁平上皮癌が多い頭頸部の他の部位と異なり、腺癌系の癌が多く、非常に多彩な組織像を示す部位です。治療法は手術が第一選択ですが扁平上皮癌や、進行癌では放射線治療を行う場合もあります。耳下腺の場合、浅葉と深葉の間を顔面神経が走っているため手術時にこの処理が問題になることがあります。

J)頸部癌
 頸部原発と考えられる癌(側頸嚢胞原発など)や原発不明の頸部リンパ節転移などが治療対象です。

K)甲状腺癌
 甲状腺に発生する癌で、分化癌と未分化癌に分類されます。 分化癌の予後は非常に良く、手術治療が中心です。

5)化学療法について

 当科では進行・再発癌に対する化学療法として可能な場合、多剤併用化学療法を行っています。増感効果を狙って放射線治療との同時併用で治療することが多くなっています。種々の副作用、合併症がある治療法ですが、扁平上皮癌では非常に奏効率が高く(完遂例ではほぼ100%)、再発例でも根治できる可能性があります。

喉頭(音声・嚥下)外来

 喉頭は“のど仏”のすぐ後ろにあり、呼吸の通り道であるとともに、音声を作り、飲み込みをスムーズに行うという重要な働きをしている器官です。そのため、喉頭に腫瘍、麻痺、炎症の病気が起こると、音声障害、嚥下障害ならびに呼吸障害の症状を引き起こします。喉頭外来では、それらの障害をもつ患者さんの診断と治療を、関連する診療科(リハビリテーション科、小児科など)や頭頸部腫瘍外来と連携して行っています。

1)音声障害の診断と治療

 ことばのもとになる音声は、のど仏の内側、喉頭にある声帯が、吐き出す息の力により振動することで作り出されます。声帯に炎症、ポリープ、のう胞(良性のふくろ)、結節、癌のような病気ができる場合や、声帯麻痺の状態になると、声がかすれたり出なくなる音声障害が生じます。私達の外来では、どのような病気により声の障害が起きているのかを診断し、どのような治療によって回復が可能なのかを患者さんと相談しています。
 声帯の炎症疾患や初期の声帯結節に対しては薬物療法や声の衛生指導を、ポリープ・のう胞・古い声帯結節に対して音声改善手術を行っています。手術方法は全身麻酔の喉頭顕微鏡手術に加え、最近では患者さんの希望により、日帰り・局所麻酔の内視鏡声帯手術も行っています(写真)。

 

局所麻酔での声帯手術例。のう胞が切除され(左→右)音声が改善する。

 声帯麻痺の患者さんには、麻痺の原因を調べるとともに、麻痺の自然回復の見られない場合、声帯の位置や張り具合を変化させて音声の改善を図る喉頭形成手術を積極的に行っています。また、言語聴覚士との連携のもとに、痙攣性発声障害の診断・治療にも取り組んでいます。
 声帯にできる喉頭癌は、喫煙者に多い病気ですが、声の枯れる症状が比較的早期から現れるので、早期癌の状態で受診される患者さんが多い病気です。喉頭外来では、頭頸部腫瘍外来と緊密に相談しながら、患者さんの病状や予後・日常生活を考慮しつつ、治療後に音声や嚥下の状態を出来るだけ良く保つ治療法を選択しています。具体的には、顕微鏡下微細手術による癌のレーザー切除、放射線治療、喉頭部分切除手術を、各々の長所・短所を患者さんに説明申し上げ、治療法を相談しています。

2)嚥下障害の診断と治療

 高齢者の方々が増加している社会背景と、脳梗塞などの重度の疾患から回復される方々が増加していることから、今日では嚥下(飲み込み)に障害を抱えている方々が急増しています。つばを飲み込みながらのど仏を触っていただけるとご理解いただけると思いますが、喉頭(のど)の運動は嚥下に欠かせない重要な動作の一つです。耳鼻咽喉・頭頸部外科では、口腔・舌・咽頭・喉頭といった、飲み込みの行為に欠かせない器官を直接診察しています。
 私どもの専門外来では、嚥下障害の患者さんに対して、どの部分の障害によって飲み込みが出来ないのか、また、どのような治療が必要なのかを、咽頭・喉頭の内視鏡検査と嚥下造影検査という2つの標準的検査を基に診断を進めています。その結果についてリハビリテーション科を中心に関連の主治医先生と相談し、患者さんの治療方針の決定や治療効果の判定を行っています。嚥下に重要な影響を与える口腔衛生や咬合に関しては、歯科および歯科衛生士の先生に相談して診療を進めています。
 当科の特色として、リハビリテーション科の支援体制を得て、嚥下障害の手術治療を積極的に行っていることが挙げられます。患者さんの病状を検討し、摂食に対する希望をうかがいながら、飲み込みの改善を図る嚥下機能改善手術や、誤嚥による肺炎の反復や生命の危険を回避するための誤嚥防止手術を行っています。

以下に簡単に研究内容の概要を紹介します。
詳しくは大学院研究科のホームページ(http://www.med.tohoku.ac.jp/org/medical/53/index.html)をご覧ください。

年間症例数

本学耳鼻咽喉・頭頸部外科の年間手術総件数は599件で、内訳は下記のとおりです。

病床数 48床
手術件数 489件
耳科手術(鼓膜・鼓室形成術、聴神経腫瘍手術、人工内耳埋込術など) 108
鼻科手術(内視鏡下手術、外傷の手術など) 72
咽喉頭・頸部手術(扁桃摘出術、喉頭微細手術、頸部膿瘍排膿術など) 44
気管・食道手術(気管異物・食道異物摘出、気管切開術など) 45
頭頸部腫瘍手術(舌癌、喉頭癌、鼻副鼻腔癌、咽頭癌、良性腫瘍手術など) 220

 48床のベッドのうち、頭頸部腫瘍の患者さんが常時30人ほど入院していらっしゃいますが、中耳手術や鼻副鼻腔手術、喉頭手術などでは短期入院治療も取り入れており、平成15年の病床稼働率は95%超、平均在院日数は20日となっております。
 とくに中耳、耳管、内耳、側頭骨・頭蓋底外科・頭頸部外科では全国でも有数のセンター病院として機能しており、全国各地から患者さんの紹介をいただいております。