東北大学病院

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心療内科

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【病棟】東病棟 15F 【外来】外来診療棟A 2F 【外来受付電話番号】022-717-7734

科長あいさつ

 現代の社会生活は便利な半面、しばしば大きなストレスを伴っています。その中で生活する現代人も、その大きなストレスに対処しながら暮らしています。しかし、過剰なストレスが加わったとき、あるいは、ストレスを受けとめる身体そのものが弱っている時にストレスがのしかかると、心身に変調を起こし、それが長引くことがあります。心療内科はそのようなストレスによる身体の変調である「心身症」に苦しむ患者さんを主な診療の対象にしています。

教授 福土 審

沿革

 東北大学第3内科第三代教授の山形敞一は、学生時代から心身相関に深い関心を持っていました。1968年(昭和43年)、当時の東北大学医学部附属病院長町分院院長を務めていた九嶋勝司(産婦人科学教授)も心身医学に大きな関心を持っており、山形教授とともに長町分院に心身医学の拠点を作ることを協議し、第3内科で循環器の研究をしていた鈴木仁一を助教授として派遣しました。これが東北大学病院心療内科の始まりです。1961年(昭和36年)九州大学、1972年(昭和47年)東京大学のちょうど中間の時期に日本で2番に開設されたものです。1975年(昭和50年)長町分院内科は正式に心療内科と名前を改め、1980年(昭和55年)、長町分院の本院統合により東北大学医学部附属病院心療内科となっています。鈴木は1990年(平成2年)に定年退官するまで、国内外の心身医療および心身医学研究の推進者として活躍を続けました。鈴木の業績のひとつに世界的に独創的な絶食療法があります。1996年(平成8年)から2011年(平成23年)まで本郷道夫教授が科長として心療内科を率いました。本郷は消化管機能の専門の立場から、消化管機能障害を中心に科を大いに発展させました。東北大学病院心療内科からは、鈴木のもとで片腕として活躍した山内祐一が東北大学人間行動学(現・行動医学)分野の教授に就任しました。鈴木のもとで育ち、本郷の片腕として活躍した福土審は、山内の後に行動医学分野の教授に昇進しました。そして、2011年(平成23年)より、東北大学病院心療内科長となり、現在に至っています。

診療に対する姿勢

 心療内科は、ストレスを基盤にした身体機能の変調に悩む患者さんを対象に診療しています。しかし、ストレスが自分では自覚できない患者さんも少なくありません。一般的な診療で、症状や病態の原因がわからないものを機能性疾患と呼びます。その背後には自分では自覚していないストレスがあったり、原因不明の自律神経機能異常があったりします。ことに消化管(食道から大腸まで)は機能性の障害がおこりやすいところです。そこで、東北大学病院心療内科では、機能性消化管障害に力を入れて診療を行っています。当然ながら、ストレスからくる病気として、摂食障害、パニック障害、抑うつ反応、そして原因がわからない身体症状に苦しむ患者さんの診療にもあたっています。
 疾病はヒトのもつストレスへの反応性と、外界からくる様々な刺激(ストレッサー)とが、相互に作用しあって作りだされるものと心療内科では考えています。その問題となるポイントを探しだすことで治療の道標を引き出し、治療します。家庭や職場での人間関係、社会がもたらす影響、自然環境などは外的な問題です。一方、個人がもつ体質や気質は、遺伝子によって規定されているものから、生育や人生経験の過程で学習されたものの相乗作用の結果であると考えられています(遺伝子x環境相関)。その人が持つ世界観、人生観、社会観もそのように形成され、ストレスへの反応性を左右します。ですから、心療内科の診療は生物学的であると同時に人間的なものになります。このようにして、外界からの刺激があると、それを受ける個々人の特質と相俟って、生体の変調が生じて来ます。最近では、このような外界からの刺激だけでなく、身体内部の信号も強力なストレス反応をもたらすことも解明されています。心療内科では、これらの原因を探り、問題の解決可能部分にアプローチすることで治療を行います。
 近年医療現場では、「全人的医療」や「生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)の評価」の必要性が強調されています。「疾患」を扱うというよりも、「病をもった人間」を<こころ>と<からだ>の両面から全体的にとらえ、より質の高い生活を支援していくことが心身医療の本質です。

東北大学病院心療内科には、次のような特色があります。

  • 一般的な消化器の検査法のみならず、消化管の働きや知覚をとらえる特殊検査の技法を豊富に持っており、ストレスに関連した消化管機能、脳機能の診療・研究が国際的に高く評価されています。そうした生理学的検査の結果を踏まえて治療を行っています。
  • ストレスは自律神経系や内分泌系を介して、からだの働きに影響を及ぼします。これらの自律神経機能やホルモン測定の結果に基づいた病態の評価、治療を行います。
  • 心身医学療法(自律訓練法など)、認知行動療法、絶食療法など、チーム医療のメリットを活かした、きめ細やかな集学的医療を実践しています。

年間症例数

(2015年)

年間平均外来新患患者数 315人
1日平均再来患者数 34人
年間平均入院患者数 111人

 心療内科で扱う「心身症」とは、広い意味の内科疾患、「からだ」の病気です。「こころ」だけの病とは異なります。心理社会的ストレスが「からだ」の病気を惹き起こす原因の一部をなしていたり(例:過敏性腸症候群)、もしくは、病態を悪化させたりする要因となっている場合(例:高血圧症)、心療内科での最も良い治療対象になります。言葉を主体に、もっぱら心だけに働きかける「カウンセリング」主体の治療は心療内科の専門性とは異なります。ご注意ください。

診療の特色

 心療内科は、「心理社会的ストレスによって発症もしくは増悪する内科疾患」を主な診療対象にしています。現代社会には様々なストレスが多く、これによる疾患群が重要になってきています。心理社会的ストレスによって発症・増悪する身体疾患を心身症と言います。心身症では患者さん自身がストレスを自覚している場合とストレスを自覚していないが客観的に見ると大きなストレッサーを抱えている場合があります。一方、不安障害、うつ病性障害においても、心理社会的ストレスによって発症・増悪し、内科疾患が合併するなどの条件が揃っている場合には診療の対象になります。これらの疾患の根底には、海馬、扁桃体、前帯状回などの情動を司る脳部位の機能的異常や器質的異常が存在することが明らかになりつつあります。このため、これらをまとめてストレス関連疾患と呼び、近年急速に増加して注目され、社会的にも重視されてきています。ストレス関連疾患では、ストレスを受けてから脳機能が変化し、各臓器が影響を受ける心→身の病態経路があります。それだけでなく、各臓器の信号が脳に伝達されて脳機能が変化する身→心の経路が病態形成を担っています。
 心療内科では、機能検査、心理検査、内科的治療、薬物療法、心理療法を組み合わせることにより、心身両面からストレス関連疾患の診療を行っています。

対象疾患と診療内容

  診療対象は心理社会的ストレスによって発症もしくは増悪する内科疾患です。特定の臓器だけでなく、内科を中心にしながらもその他の診療科も含む身体各臓器がストレスの影響を受けている時に心療内科の診療が効果を発揮します。全国的には心療内科では循環器、呼吸器、消化器、内分泌、代謝、腎泌尿器、神経、血液、免疫、アレルギーなど内科疾患を中心に、疼痛、婦人科、耳鼻科、皮膚科その他の各疾患群にもストレスが関与している場合に対応しています。以下に東北大学で特に頻度が高い疾患群への診療を解説します。

消化器疾患

 消化器症状が持続するにもかかわらず、内視鏡、消化管造影、CTなど一般的な検査では異常が見つからないものを機能性消化管障害と呼びます。【過敏性腸症候群】や【機能性ディスペプシア】がその代表です。それだけでなく、機能性便秘、機能性下痢、中枢性腹痛症候群、機能性食道障害など、多くがストレス関連疾患の要素を持っています。慢性に経過するため、患者さんの生活の質(QOL)が著しく低下する病態です。機能性消化管障害を医療従事者側が比較的軽い病態と考えているのに対し、患者さん側が極めて重大に感じている”unmet medical needs”であることも判っています。機能性消化管障害では、ストレスを受けてから脳機能が変化し、消化管が影響を受ける脳→腸の病態経路があります。それだけでなく、各臓器の信号が脳に伝達されて脳機能が変化する腸→脳の経路が病態形成を担っています。これらの病態は、消化管機能検査と脳機能画像を用いて明らかにできます。このため、機能性消化管障害はストレス関連疾患全般に応用可能なモデル病態と見なされています。これらに対しては、消化管内圧測定、胃電図、バロスタット、マーカー消化管通過時間測定、脳機能画像、遺伝子多型分析、バイオマーカー、計量心理学的評価など、国内で最も充実した評価システムを用いて評価と診断を行っています(図1)。治療法としても、薬物療法だけでなく、自律訓練法、交流分析法、認知行動療法、絶食療法を行っています。東北大学病院心療内科の機能性消化管障害に関する診療・研究レベルは世界的に高い評価を得ています。
 機能性消化管障害に似ていますが、明瞭な消化管運動異常を示す疾患群には消化管機能検査が必要です。この消化管運動異常症の代表は、【慢性偽性腸閉塞(CIPO)】や【重症便秘】などの小腸・大腸運動異常、【ガストロパレーシス】などの胃運動障害、【食道アカラシア】や【膠原病による食道運動障害】などの食道運動異常などです(図2)。治療は、食道アカラシアに対しては、バルーンを用いた食道拡張術を施行しています。これらの疾患群の根本には筋層間神経叢変性などがありますので、外科、内科各科、総合病院と連携します。

摂食障害

 【神経性やせ症】(拒食症)、【神経性過食症】は、やせている状態を美とみなす社会風潮の影響を受け、思春期の女性が罹患する【摂食障害】です。これらは、急激な栄養低下が生じるか病悩期間が長引くと、横紋筋融解、心不全、腎不全、脳萎縮、骨粗鬆症、骨髄膠様変化、消化管運動異常などが生じ、生命の危険を伴う疾患群です。最近は男性や20代以上の年齢層でも多くなっています。若い女性で食事量が不足し、低体重性の無月経がある時は、神経性やせ症が疑われます。嘔吐を繰り返す、緩下剤や利尿剤を大量に使用する場合、電解質異常から死に至る場合があり、専門的な治療が必要です(図3)。心療内科では個々の患者さんにあわせたテーラーメイドの治療を行っています。摂食障害治療支援センターを院内に開設していますのでそちらも参照して下さい。

不安とうつ

 内科疾患に合併した不安とうつは心療内科の適応です。身体症状を伴う不安障害に【パニック障害】があります。パニック障害では、突然心臓が苦しくなる、息が止まりそうになる、全身がふるえるなどの身体症状と共に、死ぬのではないかという強い不安感が出現するパニック発作を繰り返します。このため特定の場所を避ける(広場恐怖)ようになり、行動制限が生じ、遷延化するとうつを合併します。扁桃体の感作がその病態の中心です。  職場や学校で、あるいは対人交流での問題から抑うつ症状を起こした【うつ病】あるいは【うつ状態】であって、自殺の危険性や幻覚・妄想がない場合、心療内科の適応です。うつではしばしばインスリン抵抗性が認められ、一時的に糖尿病のコントロールを悪化させるような変化が起こります。うつでは、視床下部-下垂体-副腎皮質軸の活性化、これを抑制する海馬神経細胞の萎縮、膝下部前帯状回の過活性が生じています。  心療内科では不安やうつに対して、脳内神経伝達物質と神経細胞新生の研究に基づく薬物療法を行います。また、対人交流の調整あるいはストレス対処法の指導などを行い、症状改善をはかります。また、気分の調整のみならず、うつや不安に伴う様々な身体的変化や症状に対して診断および加療を行います。

治療法

 最新の脳科学と臨床薬理学に基づく薬物療法を行います。また、心身医学療法として自律訓練法、交流分析法などを行っています。また、認知行動療法を実施しています。更に、心身症に対する絶食療法は東北大学病院心療内科が開発した心身をリフレッシュする治療法です。絶食を10日間行いますが、これにより、ケトン栄養になってβヒドロキシ酪酸が増加し、それとともに前頭部脳波αパワーが増大し、陽性情動が生じます。この時期に心理療法を併用することにより、持続的認知行動変容に導くものです。適応は過敏性腸症候群が中心であり、禁忌があり、絶食を完遂する一定の自我強度が必要ですので、実施は慎重にしています。

過敏性腸症候群の小腸・大腸内圧

 下図の15分前にコリンエステラーゼ阻害薬のネオスチグミンを筋注。S状結腸に限局した高圧の分節運動が誘発され、同時に強い腹痛が自覚されている。小腸運動も軽度の群発収縮様の所見が見られる。このような機能異常の根底には微小炎症と神経の感作がある。過敏性腸症候群では内臓知覚も過敏になっており、増強された知覚信号が脊髄を上行して辺縁系を刺激し、ストレス応答を強めるとともに、うつ・不安を惹起する。


図1.過敏性腸症候群の小腸・大腸内圧

食道High Resolution Manometry

 正常(下図)の食道は、飲み込んだ時に蠕動運動が上から下へ伝わり、下部にある胃と食道の接合部も蠕動の間、圧力が低下している。食道アカラシア(下図)では、飲み込んでも蠕動運動がおこらず、胃と食道のつなぎ目の圧力の低下がみられない。


図2.食道High Resolution Manometry

摂食障害のボディ・イメージ

 神経性食欲不振症では、やせているのに、「自分は太っている」「これ以上太るのは嫌だ」という意識が強くなっている。


図3.摂食障害のボディ・イメージ

► web site: http://square.umin.ac.jp/thkpsm/disease.htm