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研究

パーキンソン病のエピゲノム病態を解明 〜新たな進行抑制治療開発の標的として期待〜

2024.01.09  プレスリリース

パーキンソン病(注1)は、65歳以上の100人に1人が罹患するとされる有病率の高い神経変性疾患です。これまで同疾患の分子病態の主役であるタンパク質「αシヌクレイン(注2)」がエピゲノム(注3)に関与することで神経細胞死が生じると推定されてきましたが、その明確な役割は明らかになっていませんでした。
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野 菅野 直人(すげの なおと)助教、中村 貴彬(なかむら たかあき)非常勤講師らの研究グループは、αシヌクレインが、エピゲノム環境を変化させることにより神経細胞の機能維持を阻むことを明らかにしました。本研究では、実験細胞を用いてエピゲノム制御が主として行われる核タンパク質の中からαシヌクレインと関連する因子を網羅的質量分析によって探索し、BAF複合体(注4)と呼ばれるヒストンリモデリング因子とヒストン修飾酵素PTMT5(注5)を同定しました。これらの作用はαシヌクレイン存在下で増強し、ヒストン修飾を変容させて転写が抑制されることにより神経の恒常性が失われることが分かりました。本研究成果はαシヌクレインがもたらすエピゲノム変容に関して、αシヌクレインと直接結合する核タンパク質を出発点とした機構の最初の報告であり、パーキンソン病関連疾患の病態解明に貢献すると同時に、今後の進行抑制治療薬開発に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2023年12月17日に生物医学分野の科学誌The FEBS Journalのオンライン版に掲載されました。

 

プレスリリース資料(PDF)

The FEBS Journal

 

【用語説明】

注1.パーキンソン病:中脳黒質のドパミン神経をはじめとした神経細胞脱落により、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋のこわばり)などの運動症状に加え、便秘、睡眠障害、嗅覚障害などの様々な非運動症状を来す進行性の疾患。60歳以上の1%にみられ、全国に16万人以上の患者さんがいる。現行の治療は脳内ドパミン補充を中心とする対症療法に限定され、進行抑制治療は確立されていない。

注2.αシヌクレイン(α-synuclein):中枢神経系に豊富に発現する140アミノ酸からなるタンパク質。孤発性パ−キンソン病の患者脳内の神経細胞には凝集した同蛋白が検出される。また、αシヌクレインの点変異・遺伝子重複は家族性パーキンソン病を発症させる。

注3.エピゲノム:我々の体を構成するすべての細胞は同じゲノムDNAを有している。にも関わらず、神経細胞や皮膚の細胞など違いを生じるのは、それぞれの遺伝子DNAからつくられるRNAの量が厳密に調整されているため。このしくみはエピゲノムと呼ばれ、本研究で取り扱うヒストン修飾はその中心的役割を担う。

注4.BAF複合体:BRG1/BRM関連因子。真核生物に保存されるクロマチンリモデリング因子SWI/SNFファミリーの哺乳類ホモログ。神経への分化誘導時には構成因子がPHF10からDPF1へとスイッチするが、αシヌクレイン存在時にはこれが抑制される。

注5.PRMT5:タンパク質アルギニンメチル基転移酵素5(Protein Arginine MethylTransferase 5)である。PRMTには左右非対称性のジメチル化(ADMT)をもたらすType I PRMTと、対称性ジメチル化(SDMT)をもたらすTypeII PRMTに大別される。PRMT5はType IIであり、本研究ではヒストンH4の3番目のアルギニンの非対称性ジメチル化(H4R3me2s)に関わる。

 

【問い合わせ先】

(研究に関すること)

東北大学大学院医学系研究科

神経・感覚器病態学講座神経内科学分野

助教 菅野 直人(すげの なおと)

TEL:022-717-7189

E-mail:sugeno*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

 

(報道に関すること)

東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室

東北大学病院広報室

TEL:022-717-8032

E-mail:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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