#24 運動器の健康が日本の未来を支えます

2019.02.08
  • 整形外科科長
    井樋 栄二
    ( いとい えいじ )

健康寿命を延ばすために

2007年、日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しました。超高齢社会とは、全人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が21%を超える社会を指します。現在では、4人に1人が高齢者です。これだけ高齢化が進んだ社会はまだどこの国も経験していません。その意味で日本はいま世界中から注目されています。
この社会で大切なのは、単に長く生きることだけではなく、一人ひとりが認知症になることも寝たきりになることもなく健康のままで、QOLを低下させることなく生きることです。しかし現在、家族や専門家の手を借りなければならない「要介護期間」が男性は平均8年、女性は12年あると言われています。この主たる原因のひとつが運動器疾患です。運動器、つまり骨・筋肉・関節・脊髄・神経を扱うのが私たち整形外科ですから、運動器疾患による要介護期間を少しでも短くし、健康寿命をできるだけ長くすることが私たちの医療の目指すところです。日本整形外科学会では、ロコモティブシンドローム(=ロコモ/運動器症候群)という概念を提唱し、運動器疾患によって寝たきりになることのないよう注意を促しています。

ロコモ。運動器障害の予防を促す言葉

ロコモという言葉、ご存知でしたか? 運動器の衰えによって、立ったり歩いたりという移動機能が低下した状態のことです。意識の高い高齢者の方たちには浸透していますが、若い世代での認知は十分とは言えません。運動器の健康を守り障害を予防するためには、できるだけ早くロコモを見つけ出すことが大切ですから、より多くの皆さんに知っていただきたいと思います。
ロコモかどうかは「ロコモ度テスト」でわかります。自分でできる簡単なテストです。判定が「ロコモ度1」なら移動機能の低下が始まっているので「ロコトレ」などで運動を習慣づける必要があります。50歳代の約半分が該当すると言われています。また「ロコモ度2」なら運動器疾患をもっている可能性があるので整形外科の受診をお勧めします。詳しい情報は日本整形外科学会またはロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト※に掲載されていますから、ぜひチェックしてみてください。

運動機能が黄色信号になる前に

整形外科は「痛くてどうしようもない」状態になってから行くものだと思われているかもしれません。ですが、それはいわば黄色信号から赤信号の状態であり、その段階から治療介入したのでは遅すぎることも多いのです。「そうなる前に早めの受診を」というのが現在の私たちの願いです。運動器の衰えは「ちょっとくらいなら大丈夫だろう」と思って放っておくと進行しますが、発見が早ければ黄色信号を青色に戻せます。当院ではベガルタユースや楽天ジュニアなどの少年たちをスポーツ整形というかたちでサポートしていますが、ここでも検診によって早期に障害を見つけ、将来的な悪化を防ぐことが非常に重要になっています。
他病院からの紹介によって多くの患者さんが来院される当院では、手術が必要な患者さんには内視鏡による傷口の小さな低侵襲の手術も提供しますし、保存療法の新たな知見も日々生まれています。しかしそれよりも私たちが皆さんにお伝えしたいのは、まずはできるだけ早めにかかりつけの整形外科を受診してくださいということです。運動器の健康は健康寿命の根幹です。早めの受診と予防こそ、超高齢社会に生きる私たちにとって重要なアクションなのです。

  • 整形外科科長
    井樋 栄二 ( いとい えいじ )
    宮城県出身。1980年東北大学医学部卒業後、米国メイヨークリニック整形外科バイオメカニクス研究員を経て、2001年に秋田大学医学部整形外科教授、2006年に東北大学大学院医学系研究科整形外科分野教授に就任。国際肩肘関節外科学会理事、日本肩関節学会初代理事長等を務めるなど肩関節外科のエキスパートとして第一線で活躍している。