がん治療を前進させるコミュニケーション

2015.02.13

日本では、「がん対策基本法」に基づき、がん診療の体制整備が行われ、放射線療法と化学療法、緩和ケアが3本柱として重視されています。なぜその3つかというと、日本のがん診療で特に整備が急がれる部分だったからです。当院には、法律が定められる以前からこれらの診療科が整備され、がん診療に力を注いできました。また大学病院の使命として、新しい薬や医療機器を開発して標準治療の質を高めるために、臨床試験や治験にも日々取り組んでいます。

がん治療では、診療科を越えた横のつながりが必要です。ひとりの患者に対し、看護師や薬剤師など様々な職種の医療従事者が連携する「チーム医療」は、私たちが特に注力するところ。多職種が連携すると、医療者個人では気付けなかった糸口が見え、ベストな治療方法を組み立てることができます。そのとき一番重要なのは、患者が医師と相談して治療法を選ぶという視点。患者の置かれている状況や価値観は、人によって様々です。また、治療成績が同等の場合、治療方法の選択も難しくなります。そういった中、医師が治療方針を決めるうえで医学的な尺度以外にも大事なことがあります。

私たちはインフォームド・コンセントはもちろん、患者が話しやすい環境づくりを心がけていますが、その場でのコミュニケーションだけでは解決が難しいこともあります。例えば、治療の副作用。痛みなどには個人差があり、患者によって感じ方や訴え方も異なります。そこで患者にお願いするのは、毎日の症状をノートに書き留めてもらうこと。患者の状態を客観的に見ることは、治療を進める大きな助けとなるからです。治療の痛みや症状を支持療法によってうまくコントロールすることは、治療を効果的に進めていく上でとても重要です。主治医や看護師が気付かない自宅での症状を、家族から知ることも重要です。患者の家族もチーム医療の大事な一員です。

もし、私自身ががん治療を受けることになったら、まず、信頼できる医療従事者とずっと付き合いたいと考えます。また、家族とよく話し合いを持ちたいたいと思います。患者も、闘病している自分と、家族や社会の一員としての自分を持っています。病院は誰のためにあるかといえば、第一に患者のため。病気を治し苦痛を緩和することはもとより、患者の意志を尊重し、医療を受ける側と提供する側とのコミュニケーションをより良くしていくことで、がん治療は前進していくと感じています。

11月24〜30日は
医療安全推進週間
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