東北大学病院

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診療受付:8:30-11:00 再診受付機 8:00-11:00

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脳神経外科

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【病棟】西病棟 11F・4F 【外来】外来診療棟A 3F 【外来受付電話番号】022-717-7752

科長あいさつ

 当教室は1964年、東北大学医学部附属病院長町分院(現、広南病院)における初代教授鈴木二郎らによる診療の開始をもって始まりました。

 脳疾患研究施設の脳腫瘍部門として活動していましたが、1979年長町分院の閉鎖に伴い星陵地区に移転、1988年には第二代教授に吉本高志が就任しました。
1994年に脳疾患研究施設が廃止され、脳神経外科は部門から大学の講座となりました。
1998年には大学院重点化に伴い神経科学講座神経外科学分野となり、また血管内治療を専門とする神経病態制御学分野が独立しました。
2002年11月には第二代教授吉本高志が東北大学総長に就任し、2003年5月後任に私、冨永悌二が就任し現在に至っています。

 当教室では教室開設以来、
(1)脳神経外科領域の高度先進的医療を中心とした臨床活動
(2)医学教育、全学教育を含めた教育活動
(3)基礎医学、臨床医学を含めた研究活動
を軸として活動してきました。

 脳神経外科領域の全ての疾患に対する診断、治療のみならず、高度先進的医療技術と知識を持った指導者的脳神経外科専門医の育成、世界トップレベルの神経外科・神経科学領域の研究者の育成、次世代の医学教育を担う教育的指導者の育成を目標として日夜努力しております。

 また国際的人材を育成すべく大学院生、医局員の海外留学、及びに海外から当教室への留学生の受け入れを推進してきました。

 当教室は初代鈴木教授の時代から伝統的に“臨床に厳しい”教室であり、その根底にある哲学は、「患者さん中心主義」であります。

 原則として、医局員全員が入局後7年目までに日本脳神経外科学会認定の脳神経外科専門医資格および医学博士号を取得します。 これが当教室におけるレジデント教育の柱であり、高い専門性を身につけると同時に、基礎的研究を通じて視野を広げ、臨床医としての資質向上を図ってきました。

 現在も東北地方を中心とした多くの地域病院にて当教室の出身者が脳神経外科医療を担っています。

大学病院法人化および東北大学附属病院の法人化を迎え、上述した臨床活動、研究活動、教育活動をさらに発展させ、次世代の高度先進的脳神経外科専門医、研究者及び教育者の育成を行っていきたいと考えています。

教授 冨永 悌二

対象疾患と診療内容

脳血管障害

 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血といった脳卒中の原因となる脳動脈瘤、脳動静脈奇形、硬膜動静脈奇形、海綿状血管腫、もやもや病といった脳血管病変の早期発見、的確な治療方法の選択、そして治療を行うための専門医、診断・治療機器を用意しています。もやもや病に対しては、脳血管評価により確定診断及び病期を評価し、脳血流検査により手術治療の必要性を判定いたします。病状の進行に伴い脳血流が減少し脳に障害を来たす疾患のため、手術が必要な症例に対し血行再建術を施行いたします。当科ではこれまで確立してきた手術方法とともに最新の技術を駆使し更なる治療成績の向上を目指しております。

脳動脈瘤

 くも膜下出血の最も多い原因である脳動脈瘤は頭蓋内の太い脳血管の様々な分岐部に発生します。画像診断装置の進歩により脳ドックなどで見つかる未破裂脳動脈瘤も年々増加傾向にあります。従来、破裂率など自然歴が明らかでなかった脳動脈瘤ですが、動脈瘤の大きさなど破裂のリスクと関連する因子も明らかになりつつあります。当院では動脈瘤の発生部位に応じて破裂を予防するための脳動脈瘤クリッピング術やカテーテル治療による塞栓術を行っており、定期的経過観察も含めた選択肢について個別に相談しながら治療を行っています。

もやもや病

 もやもや病は両側内頸動脈終末部周囲の脳主幹動脈が進行性に狭窄・閉塞し、付近に異常血管網の発達を認める原因不明の疾患です。小児や若年成人において脳梗塞・脳出血をきたし片麻痺・失語などの後遺症、さらには生命にもかかわることがある疾患です。脳の血流が不十分な場合は早めの血行再建術(バイパス術)の効果が知られています。稀な疾患ですが当施設では本疾患の有数の手術症例数があり、術後脳血流評価など周術期管理法にも工夫をこらし、より安全で効果のある治療法を目指しています。

脳腫瘍

 脳磁図、脳波、脳表電気刺激、機能的MRIなどの手法を組み合わせ、脳機能局在をあきらかにすることで、最小限の機能損傷で最大限の治療効果を得るべく努力しています。言語機能温存を目的とした覚醒下手術(手術中に一時覚醒状態にし、会話などで言語機能の確認をしながら手術を行う方法)の経験は70例を超えています。

 また頭蓋底外科の手法も積極的に取り入れ、頭蓋底部や鼻副鼻腔病変に対しては耳鼻咽喉・頭頸部外科と、また頭蓋顔面の再建については形成外科と協働で外科治療を行っています。

悪性脳腫瘍

 悪性脳腫瘍の中で代表的な2つの疾患に関して当科の治療成績を概略します。

1)悪性神経膠腫:退形成性星細胞腫 anaplastic astrocytoma(WHO grade 3)及び膠芽腫 glioblastoma(WHO grade 4)

 これらの疾患は主に成人に生ずる悪性脳腫瘍として最も頻度が高い疾患です。

 当施設では、合併症発生を可能な限り抑えて手術摘出率を最大限に上げる事(maximum tumor resection & minimize surgical morbidity)を初期治療開始の手術において最も重要な事項とし遂行しています。これに引き続きMRIを治療計画用CTと融合させることにより確実な照射範囲を決定して放射線治療を行い、膠芽腫においては残存する造影領域に対して照射範囲を絞りながら照射線量を最大限まで上げる努力を行っています。またtemozolomide (TMZ)を基本薬剤として放射線療法に併せて化学療法を行い、さらに2年間を目標として外来維持療法を行っています。再発時には対応の遅れなく、再摘出術、ガンマナイフもしくは分割外部照射による局所放射線治療追加、アバスチン化学療法の追加、等を行っています。
結果を図と表に示します(結果は2006.12.31現在での統計結果)。

期間 症例数 生存期間中央値
(months)
3年生存率
(%)
5年生存率
(%)
1982〜1988 60 15.0 26.7 15.0
1989〜1996 58 27.5 44.1 30.8
1997〜1999 40 43.3 63.9 48.0
2000〜2004 30 not reached 72.5 67.7

Grade3

期間 症例数 生存期間中央値
(months)
3年生存率
(%)
5年生存率
(%)
1982〜1988 47 10.6 0.0 0.0
1989〜1996 42 17.6 24.3 7.1
1997〜1999 38 16.2 15.8 5.3
2000〜2004 73 20.3 25.9 20.6

Grade4

 このように症例毎に念入りな治療を行うことにより、治療成績は向上しています。新規薬剤及びその投与方法の開発により、さらに治療成績の改善が望まれます。

2)髄芽腫(medulloblastoma, WHO grade 4)

 小児期の小脳に発生する代表的な悪性腫瘍です。日本脳腫瘍統計では、1985〜1996年に477例が登録されており、年間約40例に過ぎません。当科での症例数は下グラフの如くです。

 本疾患はWHO grade 4に分類されますが、cisplatinを基本薬剤とした複合化学療法を行うことにより、近年最も治療成績が向上している疾患と言えます。1988年以降の症例の当科における治療成績では、5年及び10年生存率は、それぞれ72.3%と50.7%となっています。

 本疾患は、治療予後決定因子の解明が進んで来ており、摘出術後の残存腫瘍量、年齢(3歳未満かそれ以上か)、播種の有無、の3つの因子からstandard risk群とhigh risk群に分けて考えるようになっています。この分類に従って当科での治療成績を検討すると下グラフのようになります。さらに分子生物学的指標が組み合わせることにより、的確な治療方法を選択していくことと、High risk群及び再発腫瘍に対する有効な治療方法の開発が目標となっています。

良性腫瘍

 髄膜腫や神経鞘腫などの良性脳腫瘍に対しては、脳神経機能の温存を第一に考えた外科治療(摘出術)を行っています。特に重要な脳神経、脳血管が複雑に存在する頭蓋底部に発生した腫瘍に対しては、頭蓋底手術手技、ナビゲーションシステム、脳神経モニタリングを用いた安全な手術をこころがけております。また外科治療のみで完治の困難な症例では、定位放射線治療との複合的治療を行っています。

間脳・下垂体腫瘍

 広南病院脳神経外科に専門のスタッフを配し、日本でも有数の間脳下垂体疾患(下垂体腺腫、ラトケ嚢胞)の手術数を誇っています。内視鏡を使用した低侵襲手術にも積極的に取り組むとともに、経蝶形骨洞手術の正中部頭蓋底手術への拡大応用にも取り組んでいます。

機能性疾患

 パーキンソン病や本態性振戦、ジストニアなど不随意運動性疾患、顔面痙攣、三叉神経痛などに対し治療を行っています。神経内科や様々な脳機能の研究グループとの共同体制により術前術後における内科学的検討はもちろん脳機能の評価として大脳生理学的検査、大脳高次機能検査なども行い、その病態を多角的に検討することで、各々の病態に即した治療を行っています。

パーキンソン病

 パーキンソン病は大脳内のドパミン産生細胞が減少し脳の中のドパミンが不足することで症状が起こります。治療の原則は薬物治療ですが、病状や症状の種類、薬の副作用などによっては外科的治療を組み合わせた方が有効な場合があります。外科的治療は脳深部の基底核という小さな構造に正確に針を刺す定位脳手術と呼ばれる手術法で行われ、針の先に電気を流して周りの構造を凝固する凝固・破壊術と、治療用の電極を留置しそこに持続的に弱い電流を流し続ける脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)という二種類の治療法があり、病状・年齢・経過予測などをもとに選択します。手術では特に薬の効いていない時の症状が改善し薬の必要量を減らすことが出来ますが、病気の進行を止める効果はありません。内科的治療のみでは満足のいく日常生活が送れなくなったパーキンソン病の患者さんはご相談ください。ただし薬が全く効かないほど進行したパーキンソン病末期の患者さんには残念ながら効果がありません。

ジストニア

 ジストニアは筋緊張の異常により異常運動・異常姿勢を呈する病態です。薬物治療が試みられますが十分な効果が得られないことも多く、局所性ジストニアである眼瞼痙攣や頸部ジストニア(痙性斜頸)にはボツリヌス毒素(ボトックス®)の局所注射が行われます。このような内科的治療で効果が得られない場合、手術を考慮します。病型・症状等により定位脳手術(脳深部刺激術(DBS)や凝固・破壊術)、末梢神経手術などが選択されます。

三叉神経痛・顔面痙攣

 顔面の激しい痛みを起こす三叉神経痛、まぶたなど顔面に細かい痙攣を生じる顔面痙攣。これらの疾患では、脳血管による脳神経の圧迫が原因となっている場合があります。内服治療や局所注射で効果が不十分な症例に対し、微小血管減圧術を行っています。

てんかん

 てんかんとは、「脳の神経細胞が異常に興奮し、それが広がりさまざまな神経症状を引き起こす発作を反復するもの」とされ、神経細胞の興奮の結果、体の強直やけいれん、脱力、異常感覚、記憶障害などとともに、発作が広がるともうろう状態・意識消失となります。てんかん治療の原則は抗てんかん薬による薬物治療ですが、薬物治療を尽くしてもてんかん発作がつづき日常生活への支障が大きい場合には、外科治療を検討してください。当科では関連病院の広南病院で外科的治療適応の検討・手術治療を行っています。

脊椎・脊髄疾患

 頸椎症、後縦靱帯骨化症、椎間板ヘルニアなどの脊椎変性性疾患、髄膜種、神経鞘腫、神経膠腫、上衣腫などの脊髄腫瘍、脊髄動静脈奇形などの脊髄血管障害の診断、治療を行っています。頭蓋内病変の手術で培ってきた顕微鏡下手術の手技・手法を生かし、脊髄神経に愛護的な手術を心がけています。

小児脳神経外科

 小児医療の進歩に伴い小児脳神経疾患の頻度も確実に増えてきています。二分脊椎、脳・頭蓋奇形、小児脳腫瘍、もやもや病に関して、宮城県立こども病院とあわせ北日本のセンター的存在となっています。 奇形性疾患については、宮城県立こども病院に専門のスタッフを配し高度な治療を行っています。

神経内視鏡手術

 脳脊髄液の循環障害、吸収障害により脳に水がたまる水頭症は様々な症状を引き起こし進行すると生命にも影響を与えます。従来、様々なシャント術にて治療されてきた本疾患ですが、一部の患者さんにはファイバースコープ(軟性内視鏡)により脳脊髄液の交通を作ることにより治療可能となりました。また従来の顕微鏡手術では到達困難であった脳室内深部病変の診断(生検)も本法により可能となりました。当施設では10年来本法による治療を行っており2006年からは新たな内視鏡を導入し、より安全で効果のある治療法として適応を拡大しています。また従来の顕微鏡手術の支援装置としても内視鏡の果たす役割は増しています。

診療の特色

 当科では脳血管障害、脳腫瘍、脊椎脊髄疾患、小児脳神経疾患、もやもや病、間脳下垂体腫瘍、機能性疾患といった脳神経外科分野内の各部門の専門医が、国内で一線級の臨床技能を有し、チームを作って診療にあたっています。
 またこの診療システムは大学病院だけではなく、血管内治療科や関連基幹病院である広南病院(脳血管障害、脊椎脊髄外科、てんかん外科、他)、仙台市立病院(頭部外傷、他)、仙台医療センター(頭蓋底腫瘍、脳血管障害、他)、古川星陵病院(定位的放射線治療)、宮城病院(機能的脳神経外科)、宮城県立こども病院(先天性奇形、小児脳神経外科)等と有機的に連結することにより、さらに統合的な治療を完結することが可能となっています。 大学病院を中心とした当教室のネットワーク間の連携は綿密で、最も適切な治療を選択できる体制を造っています。

 年々重要性を増している神経画像検査では、3テスラMRI、三次元画像作成可能な高速CT scan、そしてPET, SPECTといった核医学検査など中枢神経疾患の診断に不可欠な最新の機器を取りそろえています。 そして脳神経専門の放射線診断科専門医との綿密なコミュニケーションを合同カンファレンスで行い、迅速かつ正確な診断、手術プラニングを行っています。
 手術機器に関しては最新の手術顕微鏡のみならず神経内視鏡、手術ナビゲーションシステム、MRI誘導下定位脳手術機器などを取りそろえ、低侵襲にして最大限の治療効果を目指しています。また放射線治療科との綿密な連携(合同カンファレンス)による放射線治療、そして術後化学療法などの補助療法も重要視し、持ちうるすべての医学的治療法を駆使します。
 また近年、発展がめざましい血管内治療(カテーテル治療)、定位的放射線治療(ガンマナイフなど)も当院脳血管内治療科、広南病院脳血管内治療科、古川星陵鈴木二郎記念ガンマハウスとの連携により有力な治療手段として活用しています。

図:ガンマナイフ

図:定位放射線治療

 これら脳神経外科疾患に対する手術・非手術的治療法のほぼ全てを当教室で網羅していることにより、個々の疾患に対する最善の治療法の選択が常に可能となります。

年間症例数

2014年~2015年

病床数 29床

(2014年)

手術件数 391件
 脳腫瘍 151件
 脳血管障害 54件
 先天奇形 0件
 脊髄脊椎 24件
 外傷 20件
 水頭症 55件
 血管内手術 17件
 その他 18件

(2015年)

手術件数 339件
 脳腫瘍 134件
 脳血管障害 57件
 先天奇形 0件
 脊髄脊椎 10件
 外傷 20件
 水頭症 40件
 血管内手術 12件
 その他 11件

診療科より皆さまへ

 このように専門スタッフ、最新の診断・治療機器を駆使してEBM(evidence based medicine)・テーラーメード治療の観点に立ち、医学的に最も患者さんの利益になる治療を追求しています。

 一方、脳神経外科をとりまく診断・治療技術の著しい進歩は日々新たな知見を生み出しているという現実も踏まえ、最新の知識の追求・応用力の育成・患者さんと病気について常に「考える」、という謙虚な姿勢で臨むよう心がけています。

 近未来の脳神経外科診療をより良くすることも私たちに与えられた重大な使命であり、患者さんの利益につながることはいうまでもありません。 診療活動以外にも、研究活動、将来の臨床的・研究的指導者の育成といった重大な責務が大学病院にはあります。みなさまのご理解、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

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