東北大学病院

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口腔診断科

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【病棟】東病棟 10F 【外来】外来診療棟C 4F 【外来受付電話番号】022-717-8391

科長あいさつ

 口の中(口腔)には約220種類の病気があると言われており、その原因は様々です。よく知られている虫歯や歯周病は口腔に棲息する細菌が原因となり、痛みなどの症状を引き起こしますが、時に口腔の症状は全身の病気の部分症状として現れることがあります。 たとえば、歯肉からの出血の原因が白血病であったり、歯の痛みの原因が脳腫瘍であったりなどです。

 口腔診断科では、①問診、②臨床所見、③検査所見から患者さんの病気を的確に診断し、東北大学病院(医科および歯科)内の専門診療科と連携し最適な診療に努めております。

 下記に示す(1)歯痛、(2)舌痛症、(3)口腔粘膜疾患、(4)味覚障害、(5)ドライマウス対する口腔内科的治療、および(6)画像診断、(7)検査診断を得意としております。

 口腔の症状でお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。

教授 笹野 高嗣

対象疾患と診療内容

1. 歯痛

 歯痛は最も頻繁に見られる口腔症状で、一般には虫歯や歯周病により歯の神経(歯髄)や歯肉が炎症を起こしたときに生じます。しかし、時に頭蓋内の病変や心因性のストレスなどから歯痛が生じることがあります。
 右の写真は、右下の奥歯の痛みを訴えて来院された患者さんのMRIです。矢印の先に口腔の痛みを脳に伝える三叉神経が見えますが、反対側では矢頭に囲まれた部分にモヤモヤとした病変がみられ三叉神経は隠れて見えません。この病変は類上皮腫という腫瘍で、この腫瘍が三叉神経を刺激するために患者さんは歯が痛いと感じたのです。
 腫瘍ばかりでなく、脳の血管が三叉神経を圧迫する場合にも歯の痛みを引き起こします(三叉神経痛)。このような場合には、歯を治療しても症状はよくなりません。
 また、心因性のストレスが歯痛を引き起こすことがあります。自分自身ではストレスと感じていない日常の出来事が実はストレスとなり、歯痛などの身体症状を引き起こすのです。このような場合には、歯を治療しても症状はよくなりません。
 口腔診断科では、神経内科、心療内科、脳神経外科、放射線診断科など医科と連携して歯痛の診断と治療を行っております。

脳腫瘍による歯痛症例

2. 舌痛症

 舌の痛みもまた頻繁に見られる口腔症状です。原因は、舌の咬傷、口内炎などの粘膜疾患に加えて、口腔乾燥症、薬物の副作用、微量元素低下症(亜鉛・鉄)、全身疾患など様々です。また、舌の痛みは原因が一つとは限らず、複数の原因が重なって生じることも多いのです。
 右の写真は、舌の痛みのために来院された患者さんの口腔写真です。舌全体が赤みがかり平らになっています。血液検査によって鉄欠乏性貧血と血清亜鉛の低下が認められました。この患者さんは、数年前に胃の部分摘出術を受けておりました。胃の摘出後には、舌粘膜の再生(舌粘膜は常に再生をくり返しています)に必須な鉄、亜鉛、ビタミンBなどの吸収阻害が起こることがあります。この症例では、内科と連携し、鉄、ビタミン剤などの投薬により、1ヶ月後には痛みが軽減し、約1年後に痛みは完全に消失しました。
 また、舌癌に対する恐怖心が舌の痛みを引き起こすことがあります。舌の形は複雑で、とくに、ノドに近い奥の部分は乳頭や扁桃などたくさんの隆起があり、でこぼこしています。これらの隆起をみて舌癌と思い込んでしまい、心因的な痛みが生じることがあります。舌の痛みでお悩みの方は、口腔診断科を受診してください。

鉄および亜鉛欠乏による舌病変

3. 口腔粘膜疾患

 全身の病気の初発症状や随伴症状が口腔粘膜に現れることはよくあります。口腔粘膜は「全身の鏡」といわれるように全身状態をよく表しているのです。
 口腔粘膜の異常に気付いたとき、皆さまは内科、耳鼻科、皮膚科、歯科??など、どこを受診したらよいか迷うこともあるかと思います。口腔診断科は、内科や皮膚科などと連携して口腔粘膜疾患の検査、診断、治療にあたっております。口腔粘膜でお悩みの方は、当科を受診してください。
 下記に実例をあげて解説します。

1. 全身疾患に伴う病変

 右の写真は、歯肉出血のため来院した47歳の男性で、2日前から歯肉の出血が続いていました。全身倦怠感が強く、微熱が続き、顔面は蒼白でした。この出血は白血病が原因でした。白血病は、血液の癌ともいわれる悪性の病気です。このように、歯肉出血が重篤な血液疾患の初発症状として現れる場合があります。
 白血病の他にも薬物アレルギ-、帯状疱疹、口腔結核症、口腔梅毒、全身性エリテマト-デス、貧血、悪性リンパ腫、移植片対宿主病、ベーチェット病など全身疾患に伴う口腔粘膜病変はたくさんあります。東北大学病院は全ての診療科がそろっておりますので、安心して治療を受けることができます。

白血病による歯肉出血

2. 皮膚疾患と関連する病変

 皮膚疾患と口腔粘膜は関係が深く、扁平苔癬(右の写真)、天疱瘡、類天疱瘡などは、ときに口腔と皮膚の両方に病変が現れます。このような疾患に対して、東北大学病院では歯科と皮膚科の共同で診療にあたっています。

頬粘膜にみられた扁平苔癬

3. 主に口腔粘膜にみられる病変

 主に口腔粘膜にみられる病変として、再発性アフタ、粘液のう胞、白板症、紅板症、線維腫や乳頭腫などの腫瘍性病変、単純疱疹、急性壊死性口内炎、口腔カンジダ症(右写真)などがあります。これらの病変は、全身の状態(免疫力の低下、感染、自律神経失調など)と関係しています。

舌にみられたカンジダ症(かびの一種)

4. 味覚障害

 食べ物の味がしない、いつも変な味(苦い味、酸っぱい味等)がする、家族に味付けがおかしいと言われる、食事がまずい(うま味が感じない)などの症状はありませんか?このような場合には、味覚障害の可能性があります。 味を感じるしくみは、味の刺激が舌にある味細胞、味覚神経、脳へと伝達することにあります。

 味覚伝導路の図をご覧ください。この図はMR画像に味覚が脳に伝わる過程を貼り付けた私のオリジナルです。味覚は、味蕾で受容され、脳に伝わりますが、ご覧のように、口腔の感覚や内臓の感覚が合わさり、さらに気分・感情や記憶そして嗅覚や視覚が統合されます。すなわち味覚は、様々な感覚で修飾される総合感覚なのです。
 したがって、味覚障害は、単に味蕾の障害ばかりでなく様々な感覚障害により生じることがあります。味覚異常感のある方は、口腔診断科で詳細な検査を受けることをお勧めいたします。

 検査・診断は、まず、テイストディスクや電気味覚計による味覚検査を行い、味覚障害の状態を調べます。次に、その原因を調べる検査を行います。治療は、それぞれの原因に対する適切な治療方法を選択いたします。全身疾患が原因の場合には、東北大学病院内の内科等の関連する科と密接な連携のもとに治療を行います。

5. ドライマウス(口腔乾燥症)

 ドライマウス(口腔乾燥症)は、唾液分泌量の減少や、唾液の性状の変化によって生じます。ドライマウスは口の渇きのみならず、粘膜の痛みや炎症、味覚障害、虫歯や歯周病を引き起こしますので、早めに治療を受けることをお勧めします。原因は様々ですが、複数の原因によることも多いため、適切な検査と診断のもとに治療を受けることが大切です。
 口腔診断科では、院内の消化器内科、神経内科、心療内科などと緊密に連携した治療体制を整えております。また、当科の研究から、唾液分泌量は正常でありながら口腔乾燥感が生じる従来の概念とは異なるドライマウスがあることが判り、その最新の診断と治療を行っています。研究成果の一部はNHKテレビなどでも紹介されています。

ドライマウスおよび味覚障害に関するマスコミ報道

  • 河北新報「口が渇く悩みに昆布の「うま味」成分を利用」 2016年5月30日
  • 週刊現代「その兆候を見逃すな 逆引き病気辞典 ドライマウス(口腔乾燥症)」 2016年2月22日
  • BBC [Umami taste buds important for overall health] 2015年1月26日
  • 日経ヘルス「昆布などの「うまみ」でドライマウスが改善」 2014年9月1日
  • テレビ朝日 モ-ニングバ-ド 「命にかかわる口の渇き...ドライマウス」 2013年12月2日
  • 朝日新聞 「元気のひけつ 薄めの昆布茶が効果的 味覚障害や口臭の原因にもなるドライマウス」 2013年11月9日
  • リビング仙台 「もしかしてドライマウス!?」 2013年8月31日
  • 日経ヘルス 「医療現場でも使われ始めた「うまみ」の力 昆布などの「うまみ」でドライマウスが改善」 2013年6月2日発行
  • NHK あさイチ 「味覚-唾液反射を応用したドライマウス治療」 2013年3月13日
  • NHK クロ-ズアップ現代 「Umamiが世界を制す!?」 2013年2月28日
  • 日本歯科新聞 「味覚障害への取り組み」 2012年5月22日
  • 毎日新聞 「うま味特集 味覚の改善に効果」 2011年7月25日
  • BusinessWorld 「ENT convention features benefits of umami」 2010年7月27日
  • 朝日新聞 「うま味感覚失い食欲低下 高齢者の味覚 東北大が調査」 2010年6月15日


モーニングバード撮影風景

6. インプラントの画像診断

 インプラント治療は、歯を失った時に、顎の骨の中に人工歯根を埋め込み、歯の形をつくることにより、咬合機能や審美性を回復させる治療法です。インプラントを埋め込むためには十分な骨の量や適した形が必要です。この確認はエックス線検査で行いますが、日常的に歯科医院で撮影するエックス線写真ではよくわからない場合もあります。このような時にはCTを用いた画像診断が有用です。口腔診断科では開業医の先生方と連携しCTによる画像診断を行っています。
 インプラントの画像診断では、コンピュータを用いて骨の中にインプラントを埋め込むシミュレーションを行います。顎の骨の中に通っている重要な神経や血管などを傷つけることがないようにシミュレーションを行い、適切なインプラントの位置、長さ、方向などを診断します。
 写真は下顎骨のCT撮影を行い、インプラントのシミュレーションを行った3次元画像です。右下の奥歯の部分にインプラントを埋め、上部構造を作った場合を想定した画像です。

治療前の状態

インプラント治療のシミュレ-ション

7. 検査診断

 医科における血液検査はごく一般的な検査法のひとつですが、歯科においても血液検査が重要となる場合があります。既に述べたように、口腔の症状は全身状態と強く関連しますから、血液検査が診断の決め手となることも少なくありません。以下に、当科で頻繁に用いられている血液検査の一部を紹介します。

①口腔粘膜疾患

尋常性天疱瘡、類天疱瘡および扁平苔癬などの免疫関連疾患に対する自己抗体検査、白板症、乳頭種、上皮内癌などの腫瘍性病変に対する腫瘍マーカー。

②味覚異常

血清亜鉛およびビタミンの検査。

③舌痛

Hunter舌炎に対する悪性貧血の検査、平滑舌に対する鉄欠乏性貧血の検査。

④口腔乾燥症

ビタミンA, B1, B2の検査は必須。シェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症では自己抗体検査、腎疾患に伴う口腔乾燥症では尿素窒素(BUN)およびクレアチニンなどの腎機能検査。

診療の特色

 口腔診断科では、口腔に生じる様々な疾患に対して、問診、臨床所見、検査所見をもとに的確な診断を行い、東北大学病院(医科および歯科)内の専門診療科と連携し最適な診療に努めております。また、当科では、患者さんとのコミュニケ-ションを最も大切にしております。すなわち患者さんのお話しをよくお聞きし、患者さんが安心して治療を受けられるように十分な説明をいたします。口の悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。