【寄稿8】東日本大震災から10年、今、私たちが考えていること

2021.03.08

精神科長
富田 博秋

東日本大震災をきっかけに東北メディカル・メガバンク事業を通して、宮城県の登録者12万人の震災によるメンタルヘルスへの影響の評価や支援に携わりました。また、宮城県七ヶ浜町には発災直後から心のケアチームとして避難所、仮説住宅、災害公営住宅を10年に渡って巡回し、茶話会を開いたり、町報へのコラム掲載、年次調査を行なってきました。得られた知見は、論文、学会や国連、WHO等の災害関連の対策会議で公に発信しているほか、熊本地震やネパール地震等、国内外の災害後の被災地域との交流、情報提供を行なっています。

これらの経験を経て、災害後や平常でも、地域のメンタルヘルスの実態をアセスメントによって把握し、現状を見渡した上でプライオリティの高い課題を見いだして取り組み、一定の取り組みの後に再度アセスメントを行い、効果と時間経過後の現状を把握した上で次の方針を定めるという形で精神保健を推進することは可能であり、そうすることが望ましいと考えるようになりました。新型コロナウイルス感染症流行下、その必要性はますます痛感されるところで、困難な課題は多いですが、できる限り実現していけると良いと考えて取り組んでいます。

東日本大震災発災直後、宮城県七ヶ浜町役場健康増進課の職員と心のケアチームとの打ち合わせ

 

町報への心の健康に関するコラム掲載

 

東日本大震災により大規模半壊以上の家屋被災にあった宮城県七ヶ浜町民における
一定以上の心的外傷後ストレス反応(PTSR)を呈する人の頻度の年次変化
(年次調査結果の10年間の推移)

 

2015年ネパール地震後のネパール国訪問、
トリュブバン大学医学部精神科 Ojha 教授およびその教室員との打ち合わせ

富田 博秋(とみた ひろあき)
1963年福岡県出身。1989年岡山大学医学部卒業。1995年同大学大学院博士課程修了。長崎大学医学部人類遺伝学教室助手、カリフォルニア大学アーバイン校医学部生理学講座研究員、同校医学部精神医学講座助教授相当研究員を経て、2006年東北大学大学院医学系研究科精神・神経生物学分野准教授。2018年より現職。
11月24〜30日は
医療安全推進週間
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