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イノベーションと働きかた改革を両立するためにはコ・クリエーションが必要だ〜東北大学病院での経験から〜(上)
イノベーションと働きかた改革を両立するためにはコ・クリエーションが必要だ〜東北大学病院での経験から〜(上)
スマートホスピタル通信 2022.06.14

イノベーションと働きかた改革を両立するためにはコ・クリエーションが必要だ〜東北大学病院での経験から〜(上)

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一般社団法人ライフサイエンス‧イノベーション‧ネットワーク‧ジャパン(LINK-J)主催、東北大学オープンイノベーション戦略機構共催による「東北大学先端技術×ライフサイエンスシリーズ」第2弾が、「イノベーションと働きかた改革を両立するためにはコ・クリエーションが必要だ~東北大学病院での経験から~」と題して、3月17日にオンライン開催されました。レポート前編は、東北大学病院が冨永悌二病院長のもと推進しているスマートホスピタルプロジェクトの紹介と、手術部・材料部でのコ・クリエーション事例を中心に、イベントの模様をお伝えします。

言うは易し、行うは難し-デザイン思考で医療現場の働き方改革を推進-

最初に、東北大学病院EDAS-TUH(産学連携室)デザインヘッドの中川敦寛特任教授(当時、現教授)が「東北大学病院のコ・クリエーション-8年、50社、1,500名のみなさんを医療現場に受け入れた経験から-」と題して講演しました。

中川特任教授らが2014年に開始した企業とのコ・クリエーション活動が目指すのは、患者さんにも医療従事者にもやさしい「スマートホスピタル」の実現。東北大学病院では、患者さんや関係者はもとより、病院で働く医療者も”comfortable”であるべきという考えに基づいて、病院のスマート化を進めています。患者さんを前にして効率は度外視、努力や時間を惜しまない風土のある医療現場において、限られた時間内でいかに従来と同等のサービスを提供するかという課題に対し、産学連携によるイノベーション創出と働き方改革を両輪として、その打開策を探っています。

「スマートホスピタルの実現には3つのポイントがあると考えています」と中川特任教授。1つ目は、企業目線で大学内のインフラを整備すること。2つ目が、業務を減らすほど成果が上がる成功体験を積み上げて「Less is More」の文化を作ること。3つ目に、あらゆる立場の人の知恵を結集するネットワークとアライアンスが必要ということです。

企業アライアンスの第一歩として、東北大学病院が2014年に立ち上げたのがアカデミック・サイエンス・ユニット(ASU)。一定の手続きのもとで医療現場を企業に開放し、現場観察によるニーズ発見の機会を提供する6ヶ月のプログラムで、開始から8年を迎える2022年3月までに約50社が参加しています。ここで重要なのが、プロセスをデザインする力です。「参加企業の活動の分析から、目標を設定して活動のコンセプトを作成するまでにかかる時間にチームによって60倍もの開きがあることが判明。この時間を短縮するには、誰のどんな困りごとをどのように解決するのか、5W1Hを正確に把握し、現場の感情を上手にすくいあげるスキルが必要です」と中川特任教授。

このデザイン思考こそが、スマートホスピタルの鍵となる考え方。病院に数多く訪れる患者さんひとりひとりに最良の患者体験を提供するためには、限られた医療資源を適切に配分する必要があります。「現場で生じる膨大なタスクに優先順位をつけるコツは、取り組む難易度と効果とのバランスに着目すること。難易度は低いが効果の高いものから取り組み、難易度が高く効果も高いものへとスムーズに移行できるよう仕事をデザインするという生産性向上策も、企業とのコ・クリエーションで得られた成果のひとつです」。安全安心なオペレーションは病院の至上命題。安全性を最優先に「Less is More」を実現する取り組みが様々な診療科で進められています。

東北大学病院では、ASUをはじめとする産学連携プラットフォームを通じた年間100社以上との連携から、ニーズの目利きやデザイン人材が育ち、スタートアップも生まれつつあります。中川特任教授は「イノベーションは人生に彩りを与えるもの。東北大学は、教育、研究、社会との共創、経営革新の4ビジョンを柱とする2030年ビジョンを掲げています。グローバルも見据え、アライアンスのハブとしてプレゼンスを確立したい」と意欲を語り、講演を締めくくりました。

事例紹介1:チームひとりひとりの工夫と第三者視点の融合で、執刀時間も短縮

続いて、病院と企業の双方から協働事例の紹介がありました。まず、東北大学病院手術部・材料部の江島豊特命教授が、手術室のオペレーション改革に向けたフィリップスジャパン社とのコ・クリエーションについて報告しました。下の図は、ある日の手術室の状況です。横ラインが手術案件と実施時間帯、青い縦線は日勤の看護師の帰宅時間、ピンクの線は遅番の看護師の帰宅時間。数本の横ラインがピンク線より右側にはみ出しており、40件の予定手術数のうち数件が、看護師の勤務時間に収まらないことがわかります。

東北大学病院では2016年から、手術室の増設に伴い、より多くの方に安全に手術を提供するため業務効率化に取り組んでいます。しかし、効率のために安全を犠牲にできない、他部署との悩みの共有が難しい、現場の医師が効率化のメリットを実感できないなどの理由から、未解決の課題もあります。「強力なトップダウンと現場スタッフのボトムアップの理解の両方が必要だと思いました」と江島特命教授は改革に着手したきっかけを語ります。

手術件数の増加と限られた医療機器の有効活用を目的に、診療科ごとに実務担当者を中心とした検討会議を設け、それぞれの視点で時間短縮のための大小さまざまな課題を洗い出し、それらの対応策を議論しました。会議に同席したフィリップス社の担当者からの問いをきっかけに「言われてみれば改善できるね」というポイントが浮かび上がってくる場面もありました。

その結果、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術件数は最大で3倍以上に増加、手術時間や患者の入替え時間の短縮が実現しました。また、フィリップス社による分析から、作業者による所要時間のばらつき抑制効果も判明。「最も驚いたのは、執刀時間が短くなったこと。これは無理だろうと思っていました」と江島特命教授。COVID-19の影響はあったものの、効率化の効果はデータにも顕著に表れています。なにより大きな成果は、手術に携わる関係者全体に効率化の意義に対する意識づけが浸透したこと。「意識改革をうまく進めるために第三者による公平な働きかけが有効であることを実感しました」。

現場で働くひとりひとりの熱意やアイデアが現場に役立つ形で実を結んだ例です。こうした丁寧な現場観察と改革の積み重ねが、他機関へも横展開できるシステムの構築につながることが期待されます。

【レポート:広報室 長谷川麻子】

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