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東北大学病院が進めるスマートホスピタルと現場観察ABCの最前線(上)
東北大学病院が進めるスマートホスピタルと現場観察ABCの最前線(上)
スマートホスピタル通信 2022.05.17

東北大学病院が進めるスマートホスピタルと現場観察ABCの最前線(上)

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一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)主催、東北大学オープンイノベーション戦略機構共催による「東北大学先端技術×ライフサイエンスシリーズ」の第1弾として1月31日、「東北大学病院が進めるスマートホスピタルと現場観察ABCの最前線」がオンライン開催されました。前編では、東北大学病院が推進するスマートホスピタルプロジェクトの紹介を中心にした講演の模様をレポートします。

患者さんも医療従事者も心地よい医療現場に

まず東北大学病院 EDAS-TUHデザインヘッドの中川敦寛特任教授が、東北大学病院が定義する「スマートホスピタル」について講演しました。中川特任教授が最初に話したのは、「医療の質向上には、医療従事者も元気でなければならない」ということ。病院が患者さんにとって心地よい場所であることは大前提ですが、「医療従事者にとっても心地よい場所でないと、サステナブルな形で質の高い医療は提供できないということが、私たちがコロナ禍で得た教訓です」という言葉から始まりました。

医療現場に目を向けると、労働力の制約が強まる一方、それと相反する形で業務の高度化や多様化が進んでいます。2019年に実施した、医師、看護師をはじめとした医療現場のさまざまな職種の人たちのアンケートによると、本来すべき業務にどれくらい関われているかという問いに対する回答は「平均で40%」。半分以上の時間を本来業務ではないことに費やしているという現状が浮かび上がりました。中川特任教授は「スマートホスピタルを実現するためにはイノベーションと働き方改革を一緒に行う必要があります」と力を込めます。

そのために必要となるのが、医療現場において解決すべき課題の明確化による根源的な解決。しかし、「働き方を改善しようと会議を重ねてみてはいたものの、業務が若干増え、課題も少し解決したかな、でも評価指標はほとんどかわっていないや」というやったわりにはあまり変わらない「More, but Less」を誰しも経験されるのではないでしょうか。目指すのは、課題の全体像を俯瞰して構造を理解し、根本的に解決することで業務を大幅に減らすことができた、しかも評価指標は大幅にあがった!という「Less is More」です。このとき非常に有効な方法として、中川特任教授はデザイン思考の考え方を紹介しました。

デザイン思考を用いた問題解決プロセスの最初の重要なステップが医療現場観察です。中川特任教授は「医療現場観察のABC」と題して、8年間にわたり50社1,500人を受け入れてきた経験から見えてきたことを共有しました。現場観察でないとできず、かつ、もっともやるべきことは、取り組むに値する課題かどうかというニーズを見極めることです。キーワードは、「Classical, but Interesting (毎日おきる当たり前の出来事だと思っていたことだけど、実はつっこみどころがいろいろあるかもしれないぞ!)」。事業化の価値のある課題は、ごくまれにしか起きないようなものには見つかりません(稀な事象には大きな市場が見込めません)。ありふれているけれども、視点・視野・視座を変えてみると解決したら喜ばれそうな課題があるぞ!という気付き(インサイト)を現場観察で見つけることが大切です。 その気付きの周囲を詳しくほりさげると、やがてことの本質にせまることができ、課題のエレガントな解決につながります。こうして、課題に関わる全ての人たちから「これが欲しかった!」と言ってもらえるようなアイデアにブラッシュアップしていくことを目指していきます。

アイデアを磨き上げるステップでは、見方、視点、視野、視座の異なる人のさまざまな意見を取り入れ、多様性を強みとすることも重要です。問題を多角的に検討し、コンセプト作りのスピードを格段に上げることができるからです。中川特任教授は、デザイン思考を活用した問題解決プロセスを成功させるポイントとして次の4つを挙げ、講演をしめくくりました。

①ソリューションを想定しつつ取り組むべき課題を見極める逆算思考力

②つねに全体像とゴールを見据えたマネージメントと優れたメンバー

③スピード感

④1-2分の電話で「いいね!」と言ってもらえるくらいアイデアを磨き上げること

 

事業化に資するニーズを見つける現場観察のポイント

続いて東北大学病院臨床研究推進センターバイオ部門の小鯖貴子助手が、現場観察のサポートから見えるポイントとピットフォール(落とし穴)について講演しました。「まずお伝えしたいのは、現場を見たからといって事業化に資するニーズが簡単に出てくるわけではないということ。ニーズが多様化している中で、特徴づけられたニーズを見つける重要性も高まってきています」と訴えます。

現場観察に初めて入る企業の方の多くが、「医療現場に本当にニーズはあるのだろうか」という状況に陥るといいます。現場を見る限り、医療が十分に成立しているように見えてしまうためです。目や耳から入る情報だけではニーズは見つからず、見つかったとしても既に顕在化されているニーズであることがほとんど。小鯖氏は「現場観察に入り発見するニーズの99%は既に見つかっていると言っても過言ではありません」と言い切ります。

そこで感性を働かせ、患者さんの感情の動き、特に不快を察知することが大切です。命の危機にある患者さんに根掘り葉掘り聞くわけにはいきませんが、自分が患者さんだったらと思いを巡らせることで、言語化されていない困り事をつかむ手掛かりになります。共感的視点で患者さんを見つめ、不安に寄り添うことから困り事を見つけるきっかけが生まれます。

困り事を見つけたら、それが現場にどんな悪影響をどの程度及ぼしているのか、事実を確認しながら課題を明確にしていきます。その課題を解決すると何がいいのか、どんな価値が得られるのか、これはぜひ解決すべきだと言えるインパクトを可視化することで、「それは確かに取り組むべき課題だ」という納得感が各方面から得られます。

さらに課題の深掘りを行います。課題に対して「Why(なぜ)?」を投げ掛ける原因追及です。いろいろな視点で問いを投げ掛けることで、課題の本質に迫ります。「ニーズを特徴づけるには、今までそういう視点で見たことなかった!というインサイトが欠かせません」と小鯖さん。

「共感から始まり、理解し、納得し、そして事業化に資することへのコンセンサスを得られます。ASUに来られる企業の方々にはまずこれを持ち帰っていただけるよう日々ノウハウを蓄積しています」と締めくくりました。

 

 

取材日:2022年1月31日

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