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地域の主治医に専門的なアドバイスをーオンラインで医療格差の解消へ(下)
地域の主治医に専門的なアドバイスをーオンラインで医療格差の解消へ(下)
TUHレポート 2021.12.10

地域の主治医に専門的なアドバイスをーオンラインで医療格差の解消へ(下)

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セカンドオピニオンが広く知られるようになりました。関心はあるものの、どこに相談すればよいのか、主治医に言い出しにくい、などさまざまな理由で踏み出せない患者さんも多いのではないでしょうか。
当院のセカンドオピニオン外来の詳細や遠隔地からのオンラインによるセカンドオピニオンについて地域医療連携センターの青木センター長とてんかん科の中里信和科長に聞きました。

次に、国立大学病院としては全国で最も早くオンライン診療に取り組んできた診療科の一つ、てんかん科の中里信和科長に聞きます。

――てんかん科ではかなり早くからオンライン診療を行なっています。

オンライン診療のきっかけは、東日本大震災直後にアーカンソー大学のロワリー先生が遠隔会議システム2台を届けてくれたことに遡ります。そのシステムを使い、被災地にある気仙沼市立病院と当院を結んで2012年3月に、てんかん遠隔外来を始めました。医師法では対面なしの診療は禁止のため、『Doctor to Patient with Doctor(D to P with D)』といって、遠隔地の患者さんを診療する際に、必ず地元の主治医が同席する形式をとっていました。私は岩手県陸前高田市の出身であり、隣の気仙沼市への復興支援としてボランティアでオンライン診療を行っていましたが、この支援を厚労省に認めてもらい、2020年度の診療報酬改定では「遠隔連携診療料」が新たに保険適用となり、算定できることになりました。これには、てんかんの他、指定難病も含まれています。将来は、脳卒中の遠隔診療にも拡大していくと期待されています。

D to P with D(Doctor to Patient with Doctor)

―――『D to P with D』では、1時間の専門てんかん外来に地元の主治医が付き添うのは負担ではないでしょうか?

その通りです。そこで新たに、2019年5月に開始したのが『Doctor to Patient(D to P)』方式です。厚労省に相談したところ、『診療』では医師法に抵触するので、『セカンドオピニオン』なら良いこととなりました。これが「てんかんオンライン‧セカンドオピニオン」です。保険適用ではないので、患者さんの自己負担になりますが、遠方の方でも交通・宿泊費が不要で、診療の質としては対面診察とほとんど差はないと考えています。

D to P(Doctor to Patient)

――これまで取り組んでこられて、どのようなメリットを感じていますか?

オンライン診療の最大のメリットは、地域間の医療格差を埋めることができるという点です。専門医不在の地域は都市部と比べて、治療のレベルに開きが出てしまうものですが、オンラインでつなぐことで、地域の主治医に対して専門的なアドバイスをすることが可能となります。

――具体的な事例を教えてください。

例えば、主治医は適切な診断と治療を提供しているにも関わらず、患者さんが抗てんかん薬の副作用について誤解を持ち、主治医に内緒で服薬をやめている場合では、主治医の判断が正しいことを改めて伝えて、服薬を継続するよう指導することができました。また、大学に進学し一人暮らしを希望するものの、両親の反対にあっていた患者さんの場合には、生活上の注意事項を伝えて進学への道筋が提案できた例もあります。セカンドオピニオンは、医学的な判断だけでなく、心理社会面でのアドバイスにも有効だと考えています。

――今後の展望について教えてください。

現在てんかん科では、公認心理師によるオンライン心理面接を計画中です。また東北大学病院としては、医科・歯科を含めて多くの診療科が遠隔診療を採用しつつあります。医師や公認心理師だけでなく、言語聴覚士など他の職種の利用も拡大が見込まれます。
日本は海外に比べてオンライン診療への規制が厳しいのが問題です。新型コロナウイルス感染症への対応として、2020年春から時限的に規制が緩和されていますが、コロナ禍が終息した後でも、規制緩和を元に戻すことなく、むしろ世界水準に引き上げていくべきだと考えています。そのために、オンライン診療の利点を全国に発信していきたいと思っています。

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中里 信和(なかさと のぶかず)

岩手県出身。1984年東北大学医学部を卒業後、同脳神経外科に入局。米国カリフォルニア大ロサンゼルス校、広南病院などを経て、2010年東北大学医学系研究科教授となり、当院てんかん科を創設、2011年てんかん学分野に講座名を変更。2015年より当院てんかんセンター長、2017年より当院生理検査センター部長を兼任。

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