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歯科医師130人を確保して1日3000人接種体制に拡大、夜間帯も開始-石井正・東北大学ワクチン接種センター副センター長に聞く◆Vol.2
歯科医師130人を確保して1日3000人接種体制に拡大、夜間帯も開始-石井正・東北大学ワクチン接種センター副センター長に聞く◆Vol.2
TUHレポート 2021.10.12

歯科医師130人を確保して1日3000人接種体制に拡大、夜間帯も開始-石井正・東北大学ワクチン接種センター副センター長に聞く◆Vol.2

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※m3.com地域版『東北大学病院/医学部の現在』(2021年8月6日 (金)配信)より転載 

 東北大学病院は、第一種感染症指定医療機関であることに加え、地域医療を支えてきた実績、さらには東日本大震災の経験などから、宮城県内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染制御に多角的な活躍をみせている。ワクチン接種においては、宮城県・仙台市と協力のもとに大規模接種センターを全国でいち早く設置、県内のワクチン接種の加速化に貢献している。センター運営の裏側を実務担当者である東北大学ワクチン接種センター石井正副センター長に聞いた。(2021年7月14日インタビュー、計2回連載の2回目)

――ワクチン接種センターを5月24日に開設しましたが、対象者を当初の2000人から、職域接種を開始した6月21日には3200人と拡大しました。どのように効率化したのでしょうか。

 開設から2週間たったころ、冨永悌二病院長から動線を改善するように指示がありました。効率化が目的ですが、高齢者がぐるぐると長い距離を歩く必要がないようにという配慮も兼ねてのことです。変更前のレイアウトでは、接種を受ける人が予診や接種を受けるために進む通路があり、その両側に予診ブース、そこを通り抜けると接種ブースが並ぶつくりになっていました。商店街方式ですね。この方式だとブースの入り口と出口が同じなので、動線が長くなる上に、自分が次に入るべきブースを間違えて同じ種類のブースに入ったり、逆に進んで前のブースに戻ってしまったりするリスクがありました。実際、ご高齢の女性が接種後に予診ブースに入ってしまったという事例も発生しました。幸いにも予診の医師が気づき、二重接種は回避できましたが。

 変更後は、予診12ブース、その次に接種17ブースをそれぞれ会場の横幅いっぱいに横並びに一列ずつ配置し、接種対象者は予診ブースを通過して初めて接種ブースにアクセスできるようにしました。つまりブースの入り口と出口を分け、一方通行にすることで動線を短く、かつ逆戻りできないようなレイアウトになっています(下図参照)。

 変更する際に、横並びに17の接種ブースを置く幅がないことで悩んでいたら、冨永病院長が空港の出入国管理を参考にブースを互い違いに配置するよう指示してくれました。確かにスペースを有効活用できますし、逆戻りもできません。この変更で一人当たりの会場滞在時間を45分から30分に短縮することができました。職域接種が開始された6月21日には1日3000人の接種受け入れ体制が整い、東北大学教職員約3万人の接種をスタートしています。

予診と接種のブースが互い違いに並ぶ会場レイアウト

――人員の増強も必要だったのではないでしょうか。

 歯科医師の協力を得ました。一定の条件を満たせば歯科医師によるワクチン接種が可能となったためです。感染管理室の医師が筋肉注射の研修を行い、約130人の歯科医師を確保することができました。毎日2人の歯科医師にご協力いただいています。

筋肉注射の研修を受ける歯科医師

――7月19日から夜間接種を開始します。

 7月17日からは大学職域接種の拠点として、県内13大学の接種を開始します。7月19日には18時から21時まで夜間帯の枠を設け、600人の枠を増やす予定です。われわれとしてはできる限りキャパシティーを増やし、一日でも早く対象者全員が接種を終えるようにしたいと考えていますから、会社員や学生が都合をつけやすい夜間帯を設けることで接種の加速化を期待しています。ちなみに13大学の予約システムは東北大学病院のメディカルITセンターが開発したんです。13大学3万人が一斉に予約できるオリジナルのシステムです。

石井正氏のノート

――院内外、さまざまな部署との連携で成り立っていることがわかりましたが、調整されるうえでのご苦労は。

 ないです。少なくとも、コンフリクトするようなことはないですよ。COVID-19対応でも、それ以外でも、行政とは日頃から連携体制が築けていますから。東日本大震災を経験していることも大きいかと。宮城県も仙台市も10年前の震災で協力し合って対応した経験がありますから、あの時と同じようにやりましょう、と。

 医師会も、仙台市医師会の安藤健二郎会長にセンター運営の会議に入っていただいているので、仙台市民全体の予約状況や接種件数の情報交換ができています。安藤会長も東北大学医学部のOBで、さらに言えば、私と同じ第二外科(現総合外科)の同門で、いわば兄弟子ですからね。また7月5日からは平日毎日、同じ仙台市にある東北医科薬科大から医師1人にご協力いただいています。

――過去の大災害の経験も生かされていると。

 災害の定義は、医療のニーズとリソースにアンバランスが生じることです。COVID-19の拡大も災害そのもの。降りかかってくる課題に対し、臨機応変に対応していく論理回路は自然災害と一緒です。違うのは、一般的な自然災害は時間の経過とともに状況がよくなっていく一方なのに対し、感染症はいつまでもくすぶり続ける。COVID-19対応の体制をとってからすでに1年以上が経過していますが、終わりは見えていません。今後も繰り返し起こることを考慮に入れ、サステナビリティーの高い仕組みを構築することが求められています。

――ご自身もドライブスルー検査、入院調整、ワクチン接種とCOVID-19対応全体を通して積極的に動かれています。

 それが東北大学病院の指示ですから。東北大学には旧帝大でありながら地域医療をずっと守ってきたという伝統があります。DNAですね。東北大学医学部は東北地方で初めてできた医学部であり、戦後に東北各県に医学部ができるまで東北地区全体の医療を支えてきました。今でこそ減りましたが、それでも宮城県、岩手県の基幹病院には医師を派遣し続けています。東北大学の教授陣のほとんどは若い時に外の病院で働いた経験があるので、地域医療の実情もよくわかっています。COVID-19対応に限らず、「協力いただけますか」とお願いすると、「はい、いいよ」と。それが当たり前だとどの教授も考えていると思いますよ。

【取材・文・撮影=東北大学病院 溝部鈴】

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石井 正(いしい ただし)

1989年に東北大学医学部を卒業後、公立気仙沼病院(現気仙沼市立病院)で初期研修。1992年に東北大学第二外科(現総合外科)に入局。2002年に石巻赤十字病院第一外科部長、2007年に社会事業部長に就任し災害医療に携わる。2011年3月の東日本大震災で、宮城県災害医療コーディネーターとして石巻医療圏の医療救護活動を指揮。2012年、東北大学病院総合地域医医療教育支援部教授。専門は、消化器外科、災害医療。

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