早期発見へ便潜血検査
現在、がんは日本人の死因順位の第1位となっています。臓器別の死亡率を見ると、男性は、1位-肺がん、2位-大腸がん、3位-胃がんの順、女性は、1位-大腸がん、2位-肺がん、3位-膵臓(すいぞう)がんの順です(国立がん研究センターがん統計2021年)。さらに、罹患(りかん)率(新たにがんと診断される率)でみると大腸がんは男女合わせて第1位となっています(同19年)。以上から、大腸がんは日本人にとって身近ながんの一つとなっています。
痔だと思い放置
大腸がんの症状で代表的なものに血便があります。排便の際に、便に血が混じったり、トイレットペーパーに血が付着したりすることがあります。大腸がんから出血するためで、がんができた部位によって血液の色も真っ赤なものから赤黒いものまでさまざまです。多くの方は、痔(じ)と思い、そのままにしておくことが多いかもしれません。しかし、中には大腸がんが隠れていることがあります。血便に気付いた際には、ぜひ、医療機関を受診し検査を受けることをお勧めします。
大腸がんがあっても、目に見える血便が無いこともあります。早期がんであれば大半は無症状です。このため、大腸がんを早期に発見する目的で、大腸がん検診として便潜血検査が行われています。便潜血検査により大腸がんによる死亡率を減少させることが科学的に証明されているからです。便潜血検査により進行がんの90%以上、早期がんの約50%を見つけることができ、大腸がんの死亡率を約60%下げると報告されています(日本消化器病学会ホームページ)。
内視鏡で発見も
便潜血検査では、特殊な容器に便を採取し、便中の微量の血液を検出します。便潜血が陽性の場合には大腸内視鏡検査によって大腸がんが無いか確認することになります。便潜血陽性の方、全てに大腸がんが発見されるわけではありません。17年度のデータでは、便潜血検査を1万人が受けたとき、17人が大腸がんと診断されるくらいの割合(0.17%)です(日本対がん協会ホームページ)。一方で便潜血が陰性の場合でも大腸がんが存在することがあります。人間ドックで最初から内視鏡で大腸を観察することも大腸がんを発見する一つの方法です。
大腸がんは早期に発見し、適切な治療がなされれば治すことができる病気です。日頃から定期的に大腸がん検診を受けるとともに、血便などの症状があった場合はぜひ、医療機関を受診し、検査を受けてください。
河北新報掲載:2019年10月4日
一部改訂:2023年8月16日