体重減続いたら検査を
がんは1981年から日本人の死因第1位で、高齢化に伴って患者数が増加しており、現在は2人に1人ががんに罹患(りかん)し、3人に1人ががんで死亡する時代です。一般的に早期がんは無症状が多く、早期発見できれば治せる病気ですが、進行するとさまざまな症状が現れ、放置すると手遅れになることもあります。
血たんや黄疸も
がんは種類が多く、体の至る所に発生し、進行すると全身に転移する可能性があります。肺がんではせきや血たん、声のかすれ、大腸がんでは便秘や血便、腹痛、胆管がんでは黄疸(おうだん)や発熱…。臓器によって症状もさまざまです。乳がんや前立腺がんのように、かなり進行しても症状が現れないことがあります。
さらに、異なるがんに共通する症状もあります。食べ物のつかえ感は喉頭がん、食道がんや胃がんに、発熱や全身倦怠(けんたい)感は多くのがんに見られます。リンパ節腫脹(しゅちょう)は悪性リンパ腫や白血病のほか、いろいろながんのリンパ節転移の場合があります。このように、がんによる症状は多様で、特異的な症状はないと言っても過言ではありません。その中で頻度が高い主要な症状の一つは体重減少です。
体重減少の原因としては、さまざまながんのほか、消化性潰瘍などの消化器疾患、糖尿病や甲状腺機能亢進(こうしん)症のような代謝・内分泌疾患、うつ病などの精神疾患などが考えられます。膵(すい)がんと糖尿病が合併することがしばしばあり、糖尿病による体重減少と診断され、膵がんを見逃さないよう気を付けてください。
3ヵ月が目安に
ダイエット中の体重減少はがんの発見が遅れる可能性があり、予想以上に体重が減少する場合は要注意です。体重減少には食欲不振、腹痛、悪心・嘔吐(おうと)などの随伴症状がしばしば見られます。このようなケースは消化器系のがんが最も疑われます。理由もなく体重が1カ月間に1キロ以上減ることが3カ月以上続く場合は、できるだけ早く病院を受診することを強く勧めます。
特に高齢者はがんの頻度が高いので、随伴症状がなくても医療機関で検査を受けていただいた方がいいでしょう。私たちの研究により、高齢がん患者の場合は、従来の指標で全身状態が良いと評価されても、体重減少があったり併存疾患の治療薬を複数内服したりしていると、予後が不良であることが明らかになりました。
体重減少は早めに気が付かないとその後の治療にも影響します。上部・下部消化管内視鏡検査、腹部超音波検査、CTやMRIなどの画像検査を必要に応じて速やかに行える医療機関を選択することが、がんをできるだけ早く発見する上で大事です。かかりつけ医や専門医が多い地域のがん診療連携拠点病院に相談してください。
河北新報掲載:2017年6月21日