弁膜症の可能性考えて
公益財団法人日本心臓財団が、昨年からテレビ放送を通じて心臓弁膜症の早めの検診を勧めていることをご存じでしょうか。仙台市出身のサンドウィッチマンが上杉謙信と武田信玄の声の役を担当し、高齢者に早めに「けんしんを!」と「しんげん」している、そう、あの広報です。
心不全の原因に
「ちょっと動くと息切れするし、疲れやすくて、もう年だわ」と謙信がぼやくと、「それ、ほんとに年のせい? 弁膜症のせいかもよ」と信玄が返します。心不全の原因となる弁膜症が潜んでいるかもしれないと注意喚起しているのです。高齢化が進む中、弁膜症が確実に増加しているという事実が背景にあります。
なぜ、弁膜症によって息切れや疲れやすさを感じるのでしょうか。心臓には大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁の四つの弁があります。血液は体を巡る過程で肺を通りながら酸素を取り込み、そのまま心臓に流れて全身に送り出されます。拍動する心臓内での血液の流れを一方向に整えているのが、弁です。
その弁が弱ってくると、血液の流れる通り道が狭くなったり、逆流したりします。そうすると上流にある肺に血液がうっ滞し、なかなか酸素を取り込みづらくなります。また全身の筋肉に送り届けられる酸素が不足するため、疲れやすくなります。そのような状態を心不全と診断しています。
では、どのようにして早めに診断すればよいのでしょうか。弁膜症を見いだすためには、CTやMRIのような大掛かりなものは必要ありません。胸に聴診器を当てれば、心臓が収縮した時に「ザーッ」という音が聴こえることで気付きます。さらに心エコーと呼ばれる超音波検査で、弁の形の変化や血流の乱れを明らかにすることができます。
心膜で弁形成も
比較的多い弁膜症としては、心臓の出口にある弁が狭くなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」と、心臓の中の部屋を仕切っている弁の閉じが悪くなる「僧帽弁閉鎖不全症」の二つを挙げることができます。薬で元通りの正常な弁に戻すことは難しいため、弁を交換または形成する手術で治療します。
大動脈弁狭窄症の場合、傷んだ弁を取り除き新たな人工弁で交換することが一般的で、最近では畳んだ弁をカテーテルで置いてくることもできるようになっています。
僧帽弁閉鎖不全症では、形成術で患者自身の弁の形を整えられることが多く、弁の変形が強い場合には人工弁で交換します。心臓を包んでいる膜(心膜)で僧帽弁を形成する最新の治療も選択できるようになっています。詳しくは医局のホームページをご参照ください。
http://www.cts.med.tohoku.ac.jp/
河北新報掲載:2018年4月6日