初期段階での鎮痛が鍵
60歳以上で急増
帯状疱疹(ほうしん)は、子どもに水疱瘡(みずぼうそう)を発症させる「水痘ウイルス」が、皮膚と神経に障害を起こす病気です。このウイルスは、水疱瘡になった人の神経に潜んでいます。
高齢や重病で体力や免疫力が低下したり、仕事の緊張が続いて自律神経に強いストレスがかかったりしたときに、水痘ウイルスは潜んでいた神経に沿って活動して、皮膚に帯状の疱疹と痛みやかゆみを生じさせます。発症数は60歳以上で急激に増加し、患者数も年々増えているのが特徴です。
はじめに皮膚のピリピリ感や痛みなどの感覚異常だけが、数日間続くことがあります。「気のせいかな?」とやり過ごすことも多く、これに続く疱疹に驚いて皮膚科を受診する患者さんがほとんどです。まずは抗ウイルス薬を1週間程度服用します。この痛みは皮膚の炎症やはれが原因なので、NSAIDsという抗炎症薬(最も一般的な鎮痛薬)がよく効きます。
帯状疱疹の水泡には水痘瘡のウイルスがいますので、かさぶたになるまではお子さんらが直接触れないようにしてください。
しびれや電気が走るようなビリビリした痛みは、神経が障害を強く受けている可能性があります。抗てんかん薬や抗うつ薬という薬を使うこともあります。てんかんやうつ病とは関係なく、特殊な痛みに効果があるからです。
痛みが強いときは、神経ブロックや医療用麻薬によって、早期にしっかりと痛みを取ることを勧めています。神経ブロックは血行も良くなり、リラックス効果もあり、治癒に効果的です。ほとんどの神経ブロックは、麻酔科(ペインクリニック)外来で行えます。麻薬は安全な量をきちんと説明して投与します。
高齢者や初期の痛みが強い患者さんは、疱疹が治った後も痛みだけが続く、「帯状疱疹後神経痛」という別の病気に移行しやすくなります。こうなると痛みが治りづらいので、初期段階での鎮痛が重要です。また、顔の帯状疱疹は、三叉(さんさ)神経という顔の感覚を支配する神経に沿って生じ、目の炎症や食事がしづらくなるなど、痛み以外の深刻な症状を伴うこともあります。
50歳でワクチンを推奨
水疱瘡が流行しない夏に帯状疱疹は多い傾向があります。反対に、水疱瘡の流行期や家族内発症では、水痘ウイルスへの免疫力が高まり、帯状疱疹になりづらいです。そうは言っても小児期に獲得した免疫力は高齢になるまで続きません。そこで、50歳以上の人を対象に、効果の高い新しいワクチンが推奨されています。外来までお問い合わせください。
帯状疱疹に関連した症状の治療や予防接種は、東北大学病院が地域の医療施設と連携して行っています。他の病気やお薬手帳を確認して行いますので、気軽にご連絡ください。
河北新報掲載:2017年5月3日
一部改訂:2021年9月21日