腎がんなら凍結療法も
最近は、健康診断や人間ドックで腹部超音波検査を受ける方が増えています。腎臓の病気が見つかることがありますが、「腎腫瘍疑い」「腎の精密検査必要」「腎嚢胞(のうほう)の疑い」といった検査結果を受け取ると、不安になるかもしれません。
大半は経過観察
一口に腎腫瘍と言っても、腎臓に水のたまった袋のようなものができる「腎嚢胞」から「腎臓がん」までさまざまです。典型的な腎嚢胞は超音波で境界明瞭な丸い袋として見えるので診断も容易で、多くの場合はそれ以上の検査や治療は必要ありません。いびつな形や袋の壁の厚いものは、CTなどで精密検査をしたり経過を見たりして、悪性の可能性があるかどうかを診断することがあります。
嚢胞ではない腫瘍にも幾つか種類があります。良性腫瘍の代表的なものは「腎血管筋脂肪腫」で、その名の通り血管や脂肪といった成分でできています。CTやMRIで診断ができます。大きくなると出血することがあるのですが、多くの場合は経過を見るだけで十分です。
悪性腫瘍の代表的なものは腎臓のがんです。腎臓そのものにできる「腎細胞がん(腎がん)」と、腎から尿が出ていく所にできる「腎盂(じんう)がん」に大別されます。腎がんが疑われた場合、従来は手術治療が原則でしたが、4センチ以下の比較的小さな腎がんには針を刺して治療する「凍結療法」も可能になりました。
4センチ以下で可能
東北大学病院放射線診断科に2015年12月、凍結治療装置(CryoHit)が導入されました。東北では初めてです。細い針にアルゴンガスを通すことで強力に温度を下げて針の周りに氷の玉を作り、腎がんを氷で覆って死滅させる治療装置です。
CryoHitによる治療は、CTを使って腎がんの位置を確認しながら、腰や背中の辺りの皮膚から、直径1.5ミリ程度の凍結用の細い針を腎がんに挿入します。針の位置をCT画像で確認し、10分程度凍結します。そして約5分自然解凍した後、10分程度再凍結して最後に針を抜いて治療は終了となります。
腎がんの大きさにより2~3本の針を刺して治療を行います。針穴の大きさは5ミリ程度でほとんど傷が残らず、凍結には痛みが伴いません。全身麻酔の必要もない体に優しい治療と言えます。手術で腎臓を切り取らないので、腫瘍部以外の腎臓を大部分温存できることも大きな利点です。治療の翌日には歩くことができ、入院はおおむね1週間程度です。保険診療の適用となります。4センチ以下の小さな腎がんは凍結治療が可能なケースもあるので、お問い合わせください。
河北新報掲載:2017年11月17日
一部改訂:2022年3月17日