移植コーディネーターとしてどんな仕事をしていますか?
主治医から移植が必要かもしれないと言われた患者さんは、「移植医療ってどのようなものか一度話を聞いてみたい」という段階から始まります。移植コーディネーターは患者さんやご家族から移植に対しての不安や心配事を聞きながら、患者さんが自ら意思決定できるよう支援し、移植後も長期にわたって継続したケアを行っています。
さらに移植医療がスムーズに行われるように患者さんやご家族と医師との橋渡しや、移植後の社会生活を見据えて院内の関連部署はもとより、紹介施設や学校、職場などへの情報提供や連絡調整も行っています。
移植コーディネーターを目指したきっかけは?
看護師として手術室に約9年間勤務をしていた時に、全ての臓器の移植手術を経験しました。患者さんの病室へ術前訪問に伺った際に、今までの辛い治療経験や移植後には元気に学校に通いたい、心配をかけてきたお母さんを安心させたいといった話をたくさん聞きました。その時に、移植前後で患者さんの生活はどのように変化するのだろうかと関心を持つようになり、少しでもその患者さんの役に立ちたいと考え、自ら希望しました。
東北大学病院へはどういう経緯で?
性格上、興味があることはより深く突き詰めて学ぶ方なので、看護師を目指している時も、将来は興味のある専門分野の看護師(現在でいう専門看護師(CNS))になりたいと考えていたため、いろいろな分野がある東北大学病院へ入職しました。現在の仕事がまさに入職した当時の目標が叶った状態です。
心に残っているエピソードはありますか?
今から十数年前、10歳の男の子の患者さんを担当しました。どうしても移植が必要な病状でしたが、移植は絶対に受けたくなかったようで、「移植なんて受けたくない!もう顔も見たくないから出てってよ!」と頑なに拒否され、顔すら合わせてくれませんでした。何とか助けてあげたいと、毎日根気強く病室に足を運び続けた結果、「佐藤さんが一緒に手術室に行ってくれて、ICUにも毎日会いに来てくれるなら移植を受ける」と言って移植手術を受けました。移植後の経過は決して順調ではなく、時には一緒に泣いたりと常に心に寄り添い、継続したケアを続けました。移植後11年が経過した昨年、「佐藤さんのような看護師さんになりたい」と専門学校の試験に合格した報告を聞いた時は、諦めず病室に通い続けた時間は無駄ではなかったと思いました。
これから頑張っていきたいことや目標などあれば教えてください。
東北大学病院では、年間約30件の臓器移植を行っています。移植を受けた患者さんの中には残念ながら、移植した臓器が機能せず、病状が思うように改善しない方もおられます。患者さんがその後の治療に目標を見出せなくなる場面に直面することも多いのですが、患者さんご自身の意欲を支えることが移植後の治療ではとても重要です。そこをしっかりサポートできるよう、医師や看護師、サポーティブケアチーム(*1)など多職種間で情報を共有し、連携を強めて対応し、これからも続く治療に対しての意欲向上につなげられるような体制を構築していきたいと思っています。
話は変わりますが、趣味や好きなことなどはありますか?
私の趣味はイタリアの美術、建築、自然、歴史、音楽、人物、食文化の全てをより深く学び、感じ、楽しむことです。料理を作るのも大好きなので、イタリアを訪れてはマンマ(お母さん)から家庭料理を習ったり、中世の街並みを色濃く残す町などを訪れたりしています。
*1 サポーティブケアチーム:精神科医、精神科専門看護師、臨床心理士などのこと。