歯並び・かみ合わせの重要性
歯や口に関連する病気で一般的によく知られているのは、う蝕(しょく)、歯周病、顎の関節の病気(顎関節症(がくかんせつしょう))であり、いずれも有病者数が多いことが知られています。一方、悪い歯並び・かみ合わせ(不正咬合(こうごう))は、高校生を対象とした調査によると、約7割に何らかの異常がみられるという報告もあります。不正咬合にはさまざまな種類が存在しますが、いずれも痛みや腫れといった緊急処置を必要とする症状が現れにくいため、それが健康に及ぼす影響や歯並びの重要性がなおざりにされやすい傾向があります。
不正咬合の種類
不正咬合にはさまざまな種類がありますが、主なものとしては、隣の歯が重なるように凸凹に並ぶそう生(乱ぐい歯)、上の前歯が下の前歯に対して著しく前にある上顎前突(出っ歯)、逆に上の前歯に対して下の前歯が前にある下顎前突(受け口)、奥歯でかんだ状態で前歯に上下的な隙間がみられる開咬、上下の歯の真ん中がずれている交叉(こうさ)咬合などがあります。これらのうち日本人に最も多いのは凸凹の歯並びです。この歯並びは、歯のサイズに対して歯が収まるスペースが不足しているために、歯が重なり合うように並んだ状態をいいます。
凸凹の歯並びの根本的な原因は歯が並ぶスペースの不足にありますが、あご骨の歯を収める部分が小さいこと、歯のサイズが大きいこと、あるいはう蝕などによって乳歯が早期に抜けてしまったため歯を収めるスペースが減少することによって、凸凹の歯並びとなってしまいます。
不正咬合が健康に及ぼす影響
そう生によって生じる問題としては、歯磨きによる口腔(こうくう)清掃が困難となり、う蝕や歯周病になりやすいことがあげられます。また、上顎前突や開咬によって口呼吸が誘発されると、口腔衛生状態が悪化します。最近の研究では、う蝕や歯周病は、ただ単に歯や口の健康に悪い影響を及ぼすだけでなく、さまざまな全身疾患との関連性が明らかにされています。う蝕や歯周病に関連する細菌がつくる炎症性物質が口から血管に入り、脳梗塞、アルツハイマー、誤嚥(ごえん)性肺炎、心臓病、早産・未熟児の発症頻度が高くなることや糖尿病の悪化を来すことが報告されています。従って全身の健康を維持するという観点からも、口腔内の衛生状態を良好に保つことができる良い歯並びの育成・維持が重要となります。
人の健康は多くの複雑な条件の上で成り立つものであり、歯並びが良いか悪いかもその重要な条件の一つであります。もし、自分あるいはお子さんの歯並びについて心配なことがありましたら、矯正歯科あるいは顎口腔機能治療部の先生にご相談されることをお勧めします。
河北新報掲載:2019年4月5日
一部改訂:2023年4月13日