「先天性欠如」の確認を
永久歯がなかなか生えてこないとき、主に二つの原因が考えられます。一つは永久歯が先天的に欠如している場合です。もう一つは、何らかの理由により永久歯が顎の骨の中に留まっている場合(歯の埋伏)です。どちらの場合も、放っておくと歯並びや咬(か)み合わせに悪い影響を及ぼす可能性があります。
歯並びに悪影響
永久歯の生え(替わり)方に左右差があり、片側の永久歯は完全に出ているのに反対側の同じ種類の永久歯が出ていない場合、乳歯がいつまでも残っている場合などは歯科医院等でレントゲン写真を撮って確認してもらうことをお勧めします。一方、全体的に歯の生え替わりが遅れているだけの場合はあまり心配することはありません。
永久歯の先天性欠如は近年増加傾向にあると言われます。日本小児歯科学会が行った全国調査では、歯科を受診した子どもの約10%に1本以上の永久歯の先天性欠如があることが報告されています。
男女別では女子にやや多く、上顎と下顎では下顎の歯の方が多いようです。永久歯の種類では前から数えて5番目の歯(第二小臼歯)や2番目の歯(側切歯)に多く見られます。大臼歯以外の永久歯が先天的に欠如していると、先行して生えている乳歯が大人になっても残ったままになりますが、永久歯との大きさの差があるため、咬み合わせが多少ずれてしまいます。また、乳歯は自然に抜け落ちてしまうことも多く、そのまま放置していると隣の歯がそのスペースに倒れ込み、歯並びや咬み合わせを乱す原因となります。先天性欠如に対する一般的な治療方針としては、(1)乳歯が残っている場合、できるだけ長持ちさせる(2)矯正歯科治療によりその永久歯のスペースを閉じてしまう(3)補綴(ほてつ)歯科治療により人工の歯でスペースを埋める(4)(1)~(3)の組み合わせ-が考えられます。
原因除去し治療
永久歯が顎の骨の中に留まっている場合、歯が本来あるべき位置になかったり、異常な方向を向いたりしていることがあります。上顎の犬歯によく見られ、前歯(切歯)の歯根にぶつかって吸収してしまうことがあるので要注意。また、嚢胞(のうほう)、腫瘍、骨の疾患やその治療で歯の萌出が妨げられていることもあります。主な対処法は、原因をできるだけ除去した上で、埋まっている歯を矯正歯科治療により引っ張り上げるやり方です。
矯正歯科治療は通常自費診療となりますが、6本以上の永久歯の先天性欠如(第三大臼歯を除く)や3本以上の永久歯の埋伏歯(前歯と小臼歯に限る)の場合には健康保険が適用されるようになりました。詳しくは、矯正歯科を専門としている歯科医にご相談いただくか、日本矯正歯科学会のホームページをご覧ください。
河北新報掲載:2018年5月18日
一部改訂:2022年9月6日