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気になる症状 すっきり診断

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気になる症状 すっきり診断 2023.04.28

眠れないときには

漢方内科 特命教授|高山真

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漢方薬で心の栄養充足

 夜も部屋が明るい、スマートフォンの見過ぎで夜遅くまで目に光が入る、体が火照る、気持ちが落ち着かない、などさまざまな条件で睡眠が妨げられます。眠れなくなると翌日はさらに疲れが残り、疲れたまま仕事を頑張るとさらに疲れ過ぎて眠れない悪循環に陥ることもあります。睡眠導入剤で睡眠のサイクルをリセットし、ゆっくり休むのも一つの方法ですが、頼りっきりになるのも心配です。

陰陽のバランス

 漢方的な見方に陰陽のバランスという概念があります。朝に日が上がり、日中は日光が強く(陽)、夕方に日が沈むと暗くなり夜は寝る時間(陰)となります。日中はしっかり光を浴びて体温を上げ、夜は光を避けて脳と体の興奮を抑えて若干体温が下がるという陰陽のバランスをとることで、睡眠に入りやすくなり睡眠が持続できることになります。また、光だけではなく、過剰なストレスや興奮は体に熱をこもらせるため夜になってもイライラし、興奮して眠りにくいという状態になります。疲れ過ぎて消耗しても、心の栄養不足から不安や不眠になります。

 漢方薬では、自律神経や脳の興奮を抑えることを考えて、寝る前に抑肝散(よくかんさん)や黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などの漢方薬を使用し、心の熱を下げて眠りを誘います。

 いったん寝てからもすぐに起きてしまう場合は、心の栄養が不足して不安定な状態と考えます。そこで、心の栄養を補う帰脾湯(きひとう)や加味帰脾湯(かみきひとう)を内服することで栄養が充足され、しっかり眠れるようになります。これらの漢方薬には滋養に使用するナツメの実などに近い成分が含まれています。

スマホは控えて

 夢が多く、眠りが浅い方も心のエネルギーが不安定な状態にあります。気持ちが落ち着かなく夢が多い場合には、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、気持ちが落ち込んで不安が強く夢が多い場合には、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)といった竜骨(哺乳類の化石)・牡蛎(ぼれい)(牡蠣(かき)の殻)が入った漢方薬で、心のエネルギーをコントロールしてバランスを取ります。

これらの眠りのサイクルや質を調整する漢方薬は依存性が少ないため使いやすく、眠れるようになると自然と欲しなくなります。

 日中はしっかり光を浴び、夜は部屋を暗くしてスマートフォンなどは控え、心を休ませてあげましょう。それでもなかなか眠れないときには、漢方薬を試してみるのも一つの方法です。

河北新報掲載:2019年5月24日
一部改訂:2023年4月28日

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高山 真(たかやま しん)

1997年に宮崎医科大学医学部を卒業後、山形市立病院済生館で初期研修。2010年に東北大学大学院医学系研究科医学博士課程修了後ミュンヘン大学麻酔科ペインクリニック留学。2011年3月の東日本大震災後に被災地避難所の救護支援と並行して東北大学医学部復興事業に携わる。2015年に東北大学病院総合地域医療教育支援部准教授、2019年に東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座特命教授。専門は、総合診療、循環器内科、漢方医学、地域医療。

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