総胆管結石、がんで発症
皆さんは「黄疸(おうだん)」を知っていますか? 黄疸とは、全身の皮膚が黄色くなることで、肝臓・胆道・膵臓(すいぞう)の病気の時に見られる症状です。
血液の中に逆流
血液中で酸素を輸送するヘモグロビンは古くなると脾臓(ひぞう)でビリルビンという物質に変換されます。さらにビリルビンは肝臓で代謝を受け、水溶性の抱合型ビリルビンとなって胆汁中に排せつされます。抱合型ビリルビンは黄色から褐色(大便の色のもと)をしており、通常は便として排せつされますが、胆汁の流れ道に何か問題が起こると便に排せつされずに血液中に逆流するため、血液中の抱合型ビリルビンが増加し、全身が黄色くなるのです。
日本人は黄色人種なので皮膚を見ても少し分かりにくいのですが、眼球結膜(白目)の部分は軽症の黄疸でも黄色が分かりやすい、といわれています。尿も褐色から黒色になるため、泌尿器の病気と思って病院に来る方もいらっしゃいます。皮膚のかゆみを伴うことも多いという特徴もあります。
黄疸を起こす病気はさまざまです。良性疾患としては、胆石症があります。胆道の中の総胆管という部分に石ができる総胆管結石では、胆汁が石のためにせき止められて黄疸を発症します。ただし、細菌感染が起こると急性閉塞(へいそく)性化膿(かのう)性胆管炎という命に関わる重篤な病気になるため、診断がついたら必ず治療を行います。内視鏡を用いて十二指腸乳頭から器具を挿入し総胆管結石を取る内視鏡的切石術が最も行われています。
早期発見の契機
現在、黄疸の原因として最も多いのが、胆汁が通過する部分に「がん」ができ胆汁が流れなくなる病態です。胆汁は、肝臓から胆のう・総胆管を経て膵臓の中を通り十二指腸に流れ出るため、肝臓がん、胆のうがん、胆管がん、膵臓がん、十二指腸乳頭部がんといった病気で黄疸が起こり得ます。
これらのがんは、胃がんや大腸がんとは異なり早期で見つけることは難しいですが、黄疸が初発症状で早めに見つかることもあります。もし黄疸が出たらすぐに病院にかかりましょう。
このようながんに対しては、悪い部分を切除する外科治療がもっとも優れているため、手術ができる場合は手術を行います。がんを周囲組織とともに切除する難しい手術なので、東北大学病院など専門家がいる病院で手術を受けることが重要です。日本胆道学会・日本肝胆膵外科学会などのホームページを見れば、専門家のいる医療機関が分かります。
また、病気が進行していて手術が受けることができない場合でも、黄疸に対して内視鏡を用いてチューブを挿入した後、抗がん剤治療が行われます。最近抗がん剤治療と免疫チェックポイント阻害剤を併用が有効であることが判明しましたので、専門家に相談してください。
河北新報掲載:2018年4月20日
一部改訂:2022年8月3日