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地域医療のカルテ
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地域医療連携協議会(上)
地域医療連携協議会(上)
地域医療のカルテ 2023.05.19

地域医療連携協議会(上)

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東北大学病院に関連する医療機関との連携を密にすることにより、医療機関との機能分化を促進し、医療の質の向上に寄与することを目的として2006年に設立された東北大学病院地域医療連携協議会。新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりとなった第16回協議会が2023年2月7日、江陽グランドホテル5階鳳凰(ほうおう)の間で開かれ、当院の科長・センター長から情報提供を行ったほか、初めての企画として連携医療施設の院長との座談会を行いました。

新型コロナウイルスに対し医療関係者の協働・連携で実現した地域感染制御活動

 初めに冨永悌二病院長のあいさつで開会し、宮城県医師会の佐藤和宏会長、仙台市医師会の安藤健二郎会長から来賓のごあいさつを頂きました。佐藤会長は「3年前のこの会で、コロナ感染症は国難になるかもしれないと発言したことを覚えています。残念ながら的中してしまいましたが、宮城県においては東日本大震災以来の医療関係者の協働や連携があり、東北大学病院の果たした役割は極めて大きかった」と話し、医療人への感謝を伝えました。安藤会長は「対面での会議はとても大事だと改めて感じています」とした上で、仙台医療圏4病院の再編統合についての懸念点を述べ、「高度急性期の治療を終えた患者さんをどういうふうに次の回復期の病院に移すか、宮城県、仙台市と長い目で協議していきたい」と、東北大学病院の役割に期待を寄せました。
 東北大学病院からの情報提供として、まずは総合地域医療教育支援部の石井正部長から東北大学病院のCOVID-19地域感染制御活動について報告がありました。当院では、予防においては「東北大学大規模ワクチン接種センター」、検査に関しては「ドライブスルー型PCR検査外来」「コロナ陽性者外来アセスメント」、入院調整として「宮城県新型コロナウイルス感染症医療調整本部の主導」、そして診療としては「重症者を中心とした入院受け入れ」「軽症者宿泊療養施設の支援」「Long COVID 外来」「高齢者施設支援」「宮城県抗体カクテル療法センター」「東北大学病院小児点滴センター」などの地域感染制御活動を担ってきました。
 こうした活動を可能とする体制の確立維持のために、マンパワーの継続的確保を図り、安全で効率的な運用体制を心がけました。そこには、出務を病院業務としたり、ホテル入所者に当院の患者IDを発行したり、ドライブスルーやワクチン接種センターなどの一時的な施設を東北大学診療所という形で設置したりといった工夫がありました。それらを可能とした要因として、石井部長は「病院長のリーダーシップ、大学本部の理解、病院事務の下支え、各部署・各診療科の支援、行政との強い連携関係」を挙げました。

国の方針や制度改革に伴う新たなセンターの設置と診療科再編について

 続いて、冨永病院長は脳卒中・心臓病等総合支援センター設置について紹介。脳卒中・循環器病対策基本法の中に、患者さんおよび関係者の支援を推進することがうたわれており、厚生労働省のモデル事業として全国12の施設が選定され、東北大学病院にも脳卒中・心臓病等総合支援センターが設置されました。2022年度は、相談支援窓口の設置、地域住民への情報提供・普及啓発、医療従事者を対象とした研修会・勉強会、相談支援を効率的に行う資材の開発・提供を行ってきました。

 効率的な総合支援を行っていくためには、多職種から構成されるサポートチームを運用していくことが重要で、脳卒中療養相談士、心不全療養指導士などの育成が必要になってきます。アドバンス・ケア・プランニングへの対応、病院内の両立支援コーディネーターの育成、ハローワークおよび社会保険労務士との連携による治療と仕事の両立支援・就労支援、小慢さぽーとせんたーや自治体、他病院の相談支援センターとの連携も欠かせません。「医師だけではできないので、多職種が連携して困っている患者さんやご家族の相談に乗ろうというのがこのセンターの趣旨ですので、ご活用よろしくお願いします」と冨永病院長は呼びかけました。
 張替秀郎副病院長からは4月の診療科再編について説明がありました。腎・高血圧・内分泌科は腎臓・高血圧内科に、糖尿病代謝科は糖尿病代謝・内分泌内科となります。新専門医制度において糖尿病・内分泌専門医がサブスペシャリティの資格となっていることが大きなきっかけですが、研究・診療の近接性からすでに多くの大学が糖尿病・内分泌で講座を構成しており、拠点病院でも基本的に糖尿病・内分泌でくくられています。「医師のキャリア、人材育成、地域医療の貢献を考えても、再編すべきタイミングにありました」と張替副病院長。
 さらに、内部障害リハビリテーション科、肢体不自由リハビリテーション科はリハビリテーション科に統合されます。リハビリテーションの領域も新専門医制度においてはリハビリテ ーション科として一つになっており、人材育成の面でも妥当と考えます。メリットは医師の専門医教育が一括して行えるため、専攻医希望者が医局を迷わず効率的に教育ができること、1 人のリハビリテーション部長による統括運営ができること。将来的に院内の全てのリハ処方をリハビリテーションで行うことへの道筋となります。
 続いて、個別化医療センターの活動状況について、石岡千加史個別化医療センター長が発表しました。個別化医療センターは従来の疾病体系を細分化し、再編化する次世代、未来型の医療で、東北大学病院ではみんなのみらい基金を基に2017年に設置されました。同年には当院に未来型医療創生センターが設置され、その研究開発プロジェクトの出入り口となっています。一番重要な機能は検体の収集で、すでに多くの診療科研究者が疾病バイオバンクの検体を利用して開発研究に取り組んでいます。
 また、当院は全国12のがんゲノム医療中核拠点病院の一つに指定され、がんゲノム医療を保険医療として実践しています。その際、個別化医療センターが中心となって保健診療で行う遺伝子パネル検査で診断した遺伝情報を、実際にどういった意味があるのか、どういう薬にひも付けることができるかを専門医療従事者のエキスパートパネルで解析し、その診断結果を各医療結果に返しており、患者さんの診療に使われています。石岡センター長は「最近では月100件以上に上っていますが、地域格差、医療圏格差が課題となっており、東北における普及啓発、均霑(きんてん)化に努めていきます」と抱負を述べました。

※地域医療連携協議会は2023年2月7日開催、肩書は当時のもの。

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