人口減少、高齢化に伴う医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療連携のあり方やその課題も変化しつつあります。今回の特集では、地域医療の現場を担う医師と急性期医療を担う大学病院が、課題解決に向けてそれぞれにどのような取り組みが求められるのか、お話を伺いました。
高く評価された非常時の医療連携そこから得られた成果と課題
張替)今回の新型コロナウイルスの対応では宮城県新型コロナウイルス感染症対策本部会議が設けられ、行政、大学病院、協力病院、医師会などによる密な医療連携が高く評価されています。安藤先生も仙台市医師会としてコロナ対応に積極的に取り組まれましたが、新型コロナを経て、今の宮城県・仙台市における医療連携をどのようにご覧になっていますか?
安藤)宮城県では、東北大学病院の冨永悌二病院長のもとで石井正先生を中心にあらゆる対応をしてくださったおかげで、コロナ対応がうまくいったと思います。仙台市医師会としては、その体制に協力するという立場で参加させてもらい、県内における医療の指揮体制というものが一つできたのではないかと思っています。コロナ協力病院の病院長会議では、それまであまり交流が持てていなかった病院の院長先生としっかりと話をすることで、顔の見える関係ができました。ピンチに対してみんなが協力したことは大きな財産だと思います。
張替)コロナ禍での数少ないプラスの面の一つですね。その一方で、コロナによって、人口減少、高齢化といった将来的な医療課題が前倒しで見えてきたようなところもありますが、医療政策がご専門の藤森先生はどのようにご覧になりますか?
藤森)宮城県は、医療機能やスタッフ数、病床などはほぼ全国平均で、非常にバランスが取れており、平時においては医療政策上の課題はほとんどありません。今回の非常時でも、急性期同士の連携は非常にうまくいったし、医師会とも行政とも風通しがよかった。そういった面でも、政令指定都市である仙台市の医療はまとまっていると思います。ただし、宮城県を医療圏ごとに見ると状況は異なります。仙台以外の医療圏では、医療資源は少ないながら、核となる病院を中心に連携がうまく機能しているという風通しの良さがあります。それと比べて仙台医療圏にはプレイヤーが多く、それぞれの病院にそれぞれの特徴があり、病院同士の連携があまりよく見えないという課題を抱えています。
今回のコロナ対応で、全国の他の多くの地域でも問題となったのは、コロナ急性期後の後方連携でした。急性期の病院がポストコロナの患者さんを長く抱えざるを得なくなり、急性期が回らなくなった。この点に関しては、コロナ以外の通常の救急でも同じようなことが仙台医療圏で起きてきています。急性期と回復期、あるいは急性期と介護のような、病院のセグメント同士での連携を今後どうしていくのかという課題がコロナによって炙り出されたのではないでしょうか。
安藤)仙台市は、回復期や地域包括ケアの病床数が少ないですから、急性期後の流れをなかなか作ることができていません。おっしゃる通り、仙台医療圏以外では、急性期病院と、その後の患者さんを受け入れる病院が周りにいくつか集まって分担されています。やはり急性期は華々しい面がありますし、仙台市内の病院は個性が入り乱れているかもしれませんね。バックベッドは任せてください、という病院が仙台医療圏にはあまりないのは事実で、もっと増えていく必要があると感じています。
藤森)今後の人口構造の変化で急性期の患者が減っていった時に、急性期病院がケアミックスの状態になっていくのが本当に良いのかどうかですよね。求められる機能分化という面からも、大学病院からの受け皿は必要です。今は、実際には困り始めてはいるが、まだ決断がつかないという状況かと思います。
張替)どのような解決策が考えられますか。
藤森)病院間の交流が十分とは言えませんから、解決策として、まずはお互いのすり合わせのための人的交流が一つ考えられます。地方の基幹病院では介護施設との間で看護師さんの人事交流をして患者さんの診方のようなものをきちんと教育しているんですが、仙台市のように病院が多いとなかなか難しい。