眼窩骨骨折なら要注意
顔をぶつけて目の周りに青あざができてパンダみたい、そんな時は顔の骨が折れているかもしれません。転んで顔をぶつけたり、スポーツでボールや相手の身体がぶつかったり、はたまたけんかで殴られたりと、いろいろな場面で顔の骨は骨折します。
筋肉が挟まれて
実は顔の骨は脳を守るバンパーみたいなもので、折れることで脳への衝撃を和らげています。つぶれたバンパーのままでも車が走れるように、顔の骨折があっても必ずしも治療が必要なわけではありません。しかし、大きくつぶれてしまうと見た目も悪く、つぶれ方や部位によっては大きな機能障害を生じてしまう可能性があります。今回は比較的頻度の高い、鼻の骨(鼻骨)、頬の骨(頬骨(きょうこつ))、目の周りの骨(眼窩(がんか)骨)の骨折の中で緊急性になり得る眼窩骨骨折についてお話しします。
眼球を囲っている骨を眼窩骨といいます。眼窩骨の骨折はスポーツでよく生じる骨折の一つで、ボールなどが眼球やその周囲に強く当たることで生じます。眼窩骨は眼球を納めている箱のようなものなので、折れて底が抜けたようになると眼球が落ちくぼみます。そして骨折部が眼球を動かす筋肉の動きを邪魔してしまうと眼球を動かすことができなくなってしまいます。その時生じる症状が「複視」といわれるもので、ものが二重に見えてしまいます。
通常はケガをしてから1~2週間以内に手術を行えば多くは改善します。しかし、筋肉が骨折部に挟まれてしまうと、血の巡りが悪くなって時間経過とともに筋肉が駄目になってしまい「複視」の症状は改善しません。そのために、可能な限り急性期に筋肉が挟まれているかどうかを診断する事が重要です。挟まれている場合は緊急の手術が必要になります。
激しい吐き気も
特に小児では骨に弾性があるため骨折部に筋肉やその周辺組織が挟まりやすいです。骨折部にそれらが挟まると、眼球の周囲にある副交感神経が刺激され心拍数が減少し激しい吐き気をもよおします。目の周囲をぶつけて、腫れ上がるとともに「複視」と強い吐き気が続くようであったら要注意です、すぐに病院で診察してもらいましょう。
顔はとてもケガをしやすい部位です。そして、顔のケガは見た目に関わるためきれいに治したい部位でもあります。一方、顔には脳や眼球をはじめ多くの大切な機能を持った臓器が所狭しと詰め込まれた精密な部位でもあります。形成外科は「顔」の専門家として、脳神経外科や眼科、耳鼻咽喉科などと協力して、大切な顔を治す診療科です。顔のことで心配なことがありましたらお近くの形成外科にご相談ください。
河北新報掲載:2019年11月1日