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造血幹細胞移植とは

移植の種類と特徴

 造血幹細胞移植には大きく分けて、患者さん自身の造血幹細胞を使用する自家造血幹細胞移植と健常ドナーから造血幹細胞の提供を受ける同種造血幹細胞移植があります。

1. 自家造血幹細胞移植(自家移植)

概要
 患者さん自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・保存しておき、大量化学療法施行後に自身の造血幹細胞を輸注する(もどす)治療法です。造血幹細胞を大量の抗がん剤に暴露させないことで、通常よりも大量の化学療法の投与を可能にします。

主な対象疾患
 65歳未満の多発性骨髄腫では標準的に施行されます。また、びまん大細胞型B細胞リンパ腫の再発例で化学療法への感受性がある場合にも施行されることがあります。その他、一部の再発高リスクの悪性リンパ腫では第一寛解期での自家移植が施行されることもあります(臨床試験での検討が多い)。

自家造血幹細胞の採取
 骨髄ではなく、末梢血幹細胞を使用することが一般的です。化学療法後にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与すると、白血球数が増加する時期に骨髄から末梢血へ造血幹細胞が誘導されます。造血幹細胞は「CD34」という蛋白質が陽性となります。東北大学病院では、朝の採血で必要なCD34陽性細胞数が確認できた日に血液成分採取装置を用いて、造血幹細胞を採取しています。採取後は液体窒素や-80℃の冷凍庫(早期に使用する場合)に保存し、移植時まで保管します。

自家移植の方法
 移植前には前処置とよばれる大量化学療法を行います。多発性骨髄腫に対しては大量メルファラン(MEL)、悪性リンパ腫にはM-BEAM(MCNU, ETP, CA, MEL)などのレジメンが用いられることが多いです。患者さんの状態、施設の方針、臨床試験によって、異なる前処置が用いられる場合もあります。好中球が3回連続して500/μlを超えることを生着と呼びますが、自家末梢血幹細胞移植後は2週間以内に生着することがほとんどです。

自家移植の問題点
 患者自身の細胞を輸注する(戻す)ことから、移植した細胞が患者さんの体を免疫反応によって攻撃するGraft-versus-host Disease (GVHD)のリスクはありません。一方でがん細胞に対する攻撃(Graft-versus-leukemia/lymphoma効果)も期待できません。自家移植は、あくまで移植前処置に用いる大量化学療法の効果に依存した治療法です。また、化学療法後に造血幹細胞を採取しても腫瘍細胞が移植片に混入するリスクをゼロにすることはできません。

2. 同種造血幹細胞移植(同種移植)

概要
 大量化学療法や全身放射線照射などを組み合わせた移植前処置の後に健常ドナー由来の造血幹細胞を輸注(移植)し、患者さんの造血および免疫系をドナー由来の造血・免疫系に置き換える治療法です。一卵性双生児(同系移植)以外のドナーから移植を行う場合にはGVHD(ドナーの免疫細胞が患者さんの体を異物と認識して障害する反応)の予防が必須となります。ドナーは血縁(同胞、非同胞=親子や従妹)、非血縁に分かれ、用いる造血幹細胞源には骨髄、末梢血幹細胞、臍帯血の3種類があります。また、ドナーと患者さんのHLA(白血球の型)の一致度によっても移植の方法や成績が異なります。

主な対象疾患
 化学療法のみでは治癒を期待できないか、高い確率で再発すると予想される急性白血病や悪性リンパ腫、輸血依存や高リスクの骨髄異形成症候群、免疫抑制療法が無効な再生不良性貧血、40歳未満でHLA一致同胞ドナーを有する再生不良性貧血、チロシンキナーゼ阻害薬で良好な反応が得られない慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病の急性期、などが代表的な対象疾患となります。また標準リスクの急性白血病でも若年患者でHLA一致同胞ドナーがいる場合には第一寛解期で移植が検討されています。

骨髄破壊的前処置と減量強度前処置(いわゆるミニ移植)
 移植前処置には従来から用いられている全身放射線照射(TBI) 12Gy+大量シクロフォスファミド(CY)、もしくはブスルファン(BU)+ CYなどの骨髄破壊的前処置(いわゆるフル移植)と、2000年前後から開発が進んだフルダラビンにアルキル化剤(CY, BU, MEL)を組み合わせる減量強度前処置(Reduced-intensity conditioning, いわゆるミニ移植)があります。フル移植の適応年齢は50 (-55)歳が一般的な上限ですが、ミニ移植は65歳前後(施設により異なる)まで適応されることが多くなっています。

GVHD予防・治療
 シクロスポリンまたはタクロリムスにメソトレキセートを組み合わせる方法が一般的です。移植の種類によってはMMF(保険適応外)を使用する場合や、移植前処置に抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を併用することでGVHDの頻度や重症度を低下させる方法もあります。GVHDを合併した場合には、ステロイドで治療します。

感染症予防・治療
 移植にいたるまでの化学療法歴に加えて、移植前処置で用いる抗がん剤、GVHD予防薬、生着までの血球減少期間、GVHDへのステロイド投与などが影響して、非常に感染症にかかりやすい状態(易感染性)が長期間続きます。このため、移植前後は無菌病棟・無菌室に入り、複数の感染症予防薬、治療薬を使用しながら管理する必要があります。サイトメガロウイルス、アデノウイルス、BKウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、HHV-6、EBウイルスなど、種々のウイルス感染のリスクがあります。