原因に血管性と神経性
「歩く時におしりや太腿(ふともも)、ふくらはぎが苦しくなって歩き続けることができない」という症状を間歇性跛行(かんけつせいはこう)といいます。60歳ごろから年齢とともに増加し、日本では約400万人いると推定されますが「年のせい」と思って我慢をしている方が多いようです。
血管に問題がある場合(血管性)と神経に問題がある場合(神経性)とがあり、時に血管と神経の両方に問題がある方も見受けられます。
動脈硬化に注意
血管性は動脈硬化によって足に向かう動脈が細くなったり、詰まったりする事が原因の多くを占めます。筋肉を動かして歩くにはじっとしている時と比べて何倍もの血流が必要になりますが、動脈が狭いと十分な血流を筋肉に運べなくなるので脚が苦しくなるのです。動脈硬化が原因なのでたばこを吸っている方や糖尿病・腎臓病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの方は発症の危険が高くなります。
一方で神経性は、痛いとか苦しいと感じる神経自体に障害があると起こります。神経は背骨の中の通路を通っていますが、加齢などが原因でこの通路が細くなると立位や歩く時に神経や神経を養う細い血管が圧迫を受けて痛みや痺(しび)れを感じるのです。
いずれが原因であってもすぐに脚が動かなくなったり、切断になったりという一大事にはほとんど至りませんが日常生活に支障を感じる場合は受診をお勧めします。血管性は末梢血管を専門とする血管外科や内科などで治療を行いますが、神経性は整形外科で治療を行います。神経性の場合は立っているだけでも脚が苦しいとか、間歇性跛行を自覚した際に座らないと症状が良くならない、というように体勢によって症状が悪化または改善することがしばしば見られますので、どちらを受診するか選ぶ際の参考にしてください。
正しい診断必要
治療方法は症状と原因などによって決まり、全ての患者さんに手術が必要になる訳ではありません。また間歇性跛行の原因を正しく診断して適切な手術を行わなければ、せっかく手術を受けたのに症状が良くならないということになりかねませんので経験豊富な医療機関を選ぶことが大切です。
血管性は述べましたように動脈硬化が原因となるので脳卒中や心臓病の評価も併せて行うことが重要で、むしろそちらの治療が優先される事もあります。もちろん、喫煙している方は何より禁煙する事が大切なのは言うまでもありません。
河北新報掲載:2019年9月6日
一部改訂:2023年8月22日