昔から落語が好きなので、仙台でお気に入りの落語家の独演会があると出かけています。
とはいえ、そんなに頻回に行くわけにもいきませんし、すでに逝かれてしまった落語家を生で聞くことはかないません。そのような場合はCD、DVDでということになりますが、もっとも聞くことが多いのは古今亭志ん朝です。
古今亭志ん朝は落語会をしょって立つ落語家として若い時から将来を嘱望されてきました。その通りになったわけですが、残念ながら20年前に60歳そこそこでこの世を去りました。もし今も生きていれば、さらにどこまでの高みに至っていたのかと思いますが、知るすべはありません。同年代の名人である柳家小三治もつい最近この世を去りました。一体いつになったら話に入るのかと思うくらい引っ張るまくら、息を飲み込むくらい長い間の小三治に対して、志ん朝のまくらはとても短く、話もリズミカルで音楽のようでした。実は生の志ん朝を聞けたのは一度きりだったのですが、その印象は強烈で今もなお脳裏に焼き付いています。今は、独演会で堪能した「船徳」を繰り返しCDで聞いていますが、志ん朝の「音楽」の完成度が色あせることはありません。とはいえ、お気に入りの「付き馬」、「明け烏」を生で聞けたらどんなに良かっただろうと、かなわぬ思いを反芻しています。
この思いが浮かばなくなるような次世代の落語家が出てくることを祈りながら、今夜も志ん朝のCDをオンにすることでしょう。