社会の理解が希望の光となる

2017.11.14

 日本において全ての臓器移植に対応して いる病院は、当院の他には全国でわずか1 施設あるのみです。臓器移植は技術的にも倫理的にも複雑さを伴う医療で、例えば手 術後に免疫抑制という特殊な治療が必要で あったり、感染症や臓器障害といったリス クに対する慎重な管理が求められます。また、医師や看護師だけでなく手術部、薬剤 部、検査部、輸血部など様々なチームの協 力も不可欠です。私たち臓器移植医療部は、このような院内の協力体制の維持、臓器移 植を希望する方や実際に受けた方の治療、ご家族を含めた精神的なサポートなどの役 割を担っています。

 臓器移植医療は今、小腸移植以外は保険 適用となり、「先進医療」と呼ばれた段階 から、ごく普通の「一般的医療」へと定着 しつつある成熟期の段階を迎えています。その一方で、多くの患者さんが臓器移植を待ち望んでいるのに対し、臓器提供する側のドナーの数は非常に少なく、移植を必要とする患者さんの数との間に大きなギャップが生じているという課題も抱えています。内閣府による世論調査(2013年実施)では、自分の臓器を「提供したい/どちらかといえば提供したい」と答えた人が43.1%もいるという結果が出ています。より多くの方に臓器提供についての意思表示を示していただくと共に、移植医療を行う医療機関側の体制を強化すれば、命を救える患者さんはまだ何倍にも増える余地があるといえるでしょう。

 ベッド上で寝たきりだった患者さんでも、臓器移植により多くの方が社会復帰しています。どの臓器であろうとリスクはあり、合併症などで命を落とす可能性もありますが、それでも患者さんは元気になりたいと願い、決断し、その時が来るのを待っています。臓器移植医療は患者さんに希望の光を与えられる医療です。私たちは人材育成や体制強化、社会的な理解の促進という課題解決に努め、より多くの命を未来につなげていきたいと考えています。

11月24〜30日は
医療安全推進週間
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