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第14回 北欧の暮らしから考える あかりとからだ

2018.03.12

【開催概要】

■日時:2018年3月2日(金)19:00〜20:30

■会場:IKEA仙台 2Fイケアレストラン

■対象:高校生以上

■出演:

照明デザイナー 梅田 かおり(Lighting design studio LUME代表)

眼科専門医 中澤 徹(東北大学眼科教授)

■主催:東北大学病院

■協力:IKEA仙台

 

【イベントレポート】

3月2日、IKEA仙台にて第14回からだの教室「北欧の暮らしから考える あかりとからだ」を開催しました。今回のテーマは「照明(あかり)と健康」です。講師には、在仙の照明デザイナー梅田かおりさんをお招きしました。
梅田さんは東京の照明総合会社で勤めた後、北欧フィンランドに移住。現地の大学でものづくりを学びます。その後設備設計事務所で照明デザイナーとしてのキャリアを積み、7年間のフィンランド生活ののち帰国しました。仙台で「ライティングデザインスタジオLUME」を設立後、個人住宅はもちろん、保育園や高齢者施設の照明設計、秋保磊々峡のライトアップイベントなど様々なシーンで活躍されています。


  • 会場の様子

  • 梅田かおりさん

第一部は梅田さんによるお話です。フィンランド滞在中の写真をふんだんに使いながら、現地の生活、日本との文化の違いなどを分かりやすく説明してくださいました。フィンランドの夏は日が沈まない地域もあるほど日照時間が長くなります(白夜)。一方、冬は太陽の出ている時間が極端に短く、一日中夜のような地域もあります(極夜)。この極端な日照環境の中で、フィンランドの人々は自然の中で体を使って過ごし、それぞれの季節を楽しく生きる術を知っているそうです。特に冬は、必然的に家の中に居る時間が長くなるため、家の中でいかに快適に過ごすかが大切になります。あかり(照明)はその重要なキーワードのひとつ。例えばフィンランドの建築物には、照明に頼らず、太陽光を効率的に取り込み建物の中を明るくするものがあります。また、ろうそくを照明として活用したり、間接照明を上手に使用したりすることにより、個人の家でも素敵な空間を作り上げていました。マリメッコをはじめとする北欧のテキスタイルも、ビビッドな柄で家の中を明るくする工夫のひとつだそうです。北欧の照明や家具が素敵に見えるのは、現地の環境や文化が大きく影響しているのだということを学びました。

照明環境を決めるには、4つの大切なことがあると話す梅田さん。明るさ、色、演色性、配置です。演色性とは、その光のもとでものがどれだけきれいに見えるかを示す指標で、それによって照らされるものがきれいに見えたり美味しそうに見えたりするそうです。今は個人用のインテリア照明でも明るさや色を調節できるものがたくさんあるので、生活のシーンに合わせて「光を着替える」ことが大切だと梅田さんは語りました。

第二部は梅田さんと東北大学医学部眼科中澤徹教授(当院眼科科長)とのトークセッションです。中澤教授は「失明ゼロ」を目指して、予防から新しい治療の開発まで幅広い研究領域で活躍しています。
「照明と幸せの関係性についてどう思われますか?」中澤教授が梅田さんに問いかけます。
日本は物質的に豊かだけれど、幸福度は低いと言われています。一方、北欧は幸福度が高い。それは、ろうそくのあかりや間接照明の下、家族みんながひとところに集まって過ごす時間が長いからではないか、と中澤教授。確かに、日本はLEDなど全体を満遍なく照らすあかりの下、それぞれが別の場所で好きなことをしている印象があります。
「それは日本の住宅環境が影響しているのではないでしょうか」と梅田さん。建売などが多い日本では、誰がその家に住んでも問題ないよう、全体を明るく照らすよう作られているといいます。思いがけない対談の切り口に、参加者のみなさんも興味津々です。


  • 中澤徹教授

  • 対談の様子

「個人的な質問なのですが、目を悪くせず、健康でいるためにはどうしたらいいのでしょうか?」今度は梅田さんが中澤教授に質問します。「目が疲れると、自律神経が失調します。遠くを見るときと近くを見るときと、交感神経と副交感神経という別々のものを使っていますが、左右の見え方のバランスが悪くなるとどちらの神経も同時に使ってしまい、混乱が起こります。すると、どちらの目もどんどん見えなくなっていきます。自律神経が失調すると、熟睡感が得られず不眠になったり、便秘や軟便などのトラブルが起こったりします。病院にかかっても原因が分かないと言われてしまうこともある。その不調は実は目が原因ということもあるかもしれません。」中澤教授はさらに続けます。「その全身症状をリセットするためには、運動が一番だと考えています。体を動かして汗をかき、体内の循環を良くすると交感神経と副交感神経のバランスが戻ってきます。体を動かすと自然に眼球運動に繋がりますから、脳に刺激が行くわけです。不調のリセットだけでなく、認知症予防などにも効果があるかもしれません。」
目の健康が全身の健康に大きく影響している可能性があることが分かりました。

最後に、「感覚的な心地良さと健康の関係」が話題に挙がりました。例えば、人は光の明るさをすごく落として暗くした時に、夕方の太陽の光に近いオレンジ色の光を心地良いと感じる一方、青白い光を不快と感じる傾向があります。また、LEDの白く明るい光を寝る前に浴びると、メラトニンというホルモンが影響して眠りにくくなるそうです。不快と感じることを続けると、からだに何かしらの悪い影響を与えるかもしれません。現在は照明技術もどんどん進歩しており、人が心地良いと感じられるような光環境やまぶしくない照明器具がもっと必要だ、と働きかけていくことが、照明デザイナーとしての役割だと梅田さんは語りました。

照明デザイナーと眼科医という全く異なる立場のお二人と一緒に「あかりとからだ」について考えた今回のからだの教室。「あかりとからだ」はお互いに影響しあい、深く関わっていることを学びました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。(広報室)


  • 閉会後、IKEAの照明を使いデモンストレーションする梅田さん