医師になるための第一歩を踏み出した5人。未来の医療を担うために日夜奮闘しています。初期研修は医師としての基盤を作り、将来の道を決めるとても大切な時期。患者さまと触れ、医師としての自覚が芽生え、知識も技術も心構えも育っていきます。そんな時間を共に過ごす仲間と、秋風と木漏れ日が心地よい、杜の都・仙台の定禅寺通りにて、「へっそポーズ」。
広報誌「hesso」1号の表紙を飾った初期臨床研修医のお一人で、2015年3月に研修を修了した只野 恭教 医師(写真:左から2人め)へ、当院の研修を経て感じたこと、これからの展望などをうかがいました。
医師として臨床に携わるためには、医師国家試験合格後に厚労省の指定する医療機関で2年以上の初期臨床研修を受けることが義務付けられています。研修を終えた医師は、大学病院やその他の病院でさらに臨床能力を高めたり、あるいは大学院でアカデミックな環境を経験するなどそれぞれの道を歩みます。当院も臨床研修病院として、全国から毎年約20名の初期臨床研修医を受け入れています。
只野 恭教医師は、鹿児島大学を卒業後、当院で初期研修をスタートとした医師の一人です。医学生時代は、高度で専門的な医療を担う大学病院よりも、多様な症例を経験できる市中病院の方が研修の場として魅力的に見えていたと言います。迷った末に当院を選んだのは、地元である宮城県への想いが強いことに加え、心臓血管外科の専門性を高められることが理由の一つでした。「将来携わる専門領域として、心臓血管外科に興味があったんです。研修先に悩んでいる時に母校の教授から、東北大学病院なら安心して送り出せる、と背中を押してもらったのが決め手となりました」。志望する分野はもちろん、多くの専門分野のエキスパートが集まる大学病院では、判断に困ったときにすぐに多方面のアドバイスを得られる環境があります。「東北大学病院では、個人の見解や意見ではなく、最新の医療事情を根拠に基づいて教えられます。組織全体でレベルアップしていくという環境です。自ら学ぶ姿勢があれば充実した研修が受けられると確信しました」
初期臨床研修は、将来の土台となる基本的な知識・技術を培う大切な時期。当院の研修プログラムでは、院内での基本的スキルの習得に加えて、当院関連病院とのネットワークを生かし、関連病院に赴く地域医療研修も取り入れています。只野医師も、丸森町や大崎市で、地域の医療の現場を経験しました。都市部の大学病院と地域の病院、それぞれの印象をこう話します。「同じ宮城県内でも、地域の病院は都市部の仙台市と比べて介護が必要な高齢の患者さまが多いことを実感しました。治療方針を決めるうえで寿命とどう向き合うかなど、福祉も含めた幅広い医療が求められていることを知りました。また、地域の病院には軽症の患者さまもたくさん来られるので、より総合的な医療が経験できる現場だと思います。」
学生時代は、幅広い症状の患者さまを診ることができる医師が理想だった只野医師。様々な現場を経験して、目指す医師像にも変化がでてきたと言います。「学生時代は、医師の数が少ない地域にいるような献身的な医師をイメージしていましたが、東北大学病院での研修を経験していく中で、専門性の高い先進的な医療を担う医師も、医師としてのあるべき姿だと考えるようになりました。」
只野医師は、この3月に2年間の初期臨床研修を修了しました。目の前のことに、ただひたすらに取り組んでいた1年目とは違って、今は自分にとって何が必要なのかを理解し、より深く吸収できるようになったと言います。改めて、今後の目標をお聞きしました。「4月から、大崎市民病院で研修を続けることに決めました。心臓血管外科医を目指します。心臓病治療に精通したプロとして、専門性を高めていきたいと思っています。一人前になるには、まだまだ時間がかかります。ただ、どんなに経験を積んでも、それに頼りすぎず、状況に合わせた適切な判断ができる医師になりたいです。そのために、常に感覚を研ぎ澄ませていたいと思います。プライベートも大切にしたいです。自分をベストな状態に整えて患者さまと向き合うことで、より良い医療が提供できると思っています。」
自身を客観的に見つめ、明確な目的を持って研修にあたる姿勢に、強い意思を感じます。最後に、これから研修先を決める医学生へ、只野医師からのアドバイスです。「どんな医師を目指すのか、何を得たいのか、ビジョンを持って研修に臨んで欲しいと思います。積極的に学びたい人にとって大学病院はとてもいい環境です。ぜひ、候補の一つにしてみてください。」