NSTの歩み 20周年記念誌
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•近年、術後早期の経口摂取が可能となっている。•最新の多施設共同RCTでは、経腸栄養療法群でむしろ術後合併症(膵液瘻など)は有意に増加したと報告されている3) 。•術後栄養状態の改善、合併症発生率の低減、入院•最新のメタアナリシスでも、在院日数は有意に短縮したが、術後合併症(膵液瘻、胃内容排泄遅延、感染性合併症)の低減効果は示されなかった。•経腸栄養療法には腹痛、下痢、経腸チューブに関•術後1日目から経腸栄養を開始できる。•胃内容排出遅延や膵液瘻などの合併症が発生し、経口摂取が困難な場合でも、栄養状態を維持することが可能。•腸瘻造設による合併症発生率も低い。•退院前の食事摂取量が不安定であれば、自宅で経NST通信・栄養ひろば第81号2023年2月TTOOHHOOKKUU UU..HH..今回は「膵癌切除後の周術期における栄養療法(経腸栄養療法)は推奨されるか?」です栄養管理には経口摂取以外に経腸栄養(EN)や経静脈栄養(PN)がある。消化管術後の栄養管理では、完全静脈栄養(TPN)に比べてENの方が生理的・経済的だけでなく、術後合併症を減少させることが明らかになっている1)。膵頭十二指腸切除術(PD)は、膵頭部癌や胆管癌などに行われる高侵襲な術式であり、術後合併症発生率も高く、消化吸収能も著しく低下する。PD術後の経腸栄養は栄養状態の改善につながるとされており、当科でもPD施行時には全例ルーチンで腸瘻造設術(外瘻経腸栄養チューブ)を併施し、早期経腸栄養を行っている。切除範囲PDでは膵臓の頭側と十二指腸、胃の一部、胆嚢・胆管が切除される膵癌患者は高齢者が多く、術前に閉塞性黄疸や胆管炎、膵内外分泌機能不全を認める患者も多い。また最近では術前に化学療法を行なっている患者も多く、術前より低栄養や免疫能低下が潜在する。膵癌でPD術後の患者に対してTPNに比べてENの方が優れていたとの報告2)がある一方で、ENの方がTPNに比べて合併症が多かったとの報告もある3)。したがって、PDに関してはその術式の複雑さと様々なリスクから、PD後の最適な栄養投与ルートについては未だ議論の余地がある。2016年の膵癌診療ガイドラインでは「経腸栄養(EN)は中心静脈栄養(TPN)より術後感染性合併症発生率は少なく、経腸栄養療法(EN)を行うことを提案する」と記載されていた。しかし、2019年の膵癌診療ガイドラインでは「膵癌切除後の周術期における栄養療法(経腸栄養療法) を行わないことを提案する」と記載が変更された4) 。PD術後に経腸栄養を「「行行うう」」vs「「行行わわなないい」」の立場からそのメリットを下記にまとめるPD術後に経腸栄養を「「行行うう」」の立場から期間の短縮などに寄与する。腸栄養を継続することも可能。PD術後の患者に対する経腸栄養療法(EN)の有効性は証明されておらず、PD術後に経腸栄養療法(EN)をルーチンで行わないことを膵癌診療ガイドライン上は提案されている。しかし、ENが有益となる患者もおり、その選別が今後の課題である。→当科のPD症例ではハイリスク・腫瘍学的に進行した症例も比較的多く、術後合併症によりある一定頻度で早期経口摂取を開始できない症例も存在することなどから、術後栄養ルートの確保の一つとして腸瘻造設術(外瘻経腸栄養チューブ)を当科ではルーチンで併施し、NSTのサポートのもと綿密に術後栄養計画を練っている。1)MazakiT, et al : J GastrointestSurg, 12 : 739-755, 2008.2)GianottiL, et al : Pancreas, 21 : 344-351, 2000.3)PerinelJ, et al : Ann Surg, 264 : 731-737, 2016.4)日本膵臓学会診療ガイドライン改訂委員会. 膵癌診療ガイドライン. 金原出版切除後PD術後に経腸栄養を「「行行わわなないい」」の立場から連した合併症などが一定の割合で生じる。再建後⑤経腸栄養チューブ⑤(編集・発行)東北大学病院NST広報係NST通信・栄養ひろば担当①小腸と膵臓、②小腸と胆管、③小腸と胃、④小腸と小腸を吻合する文責:堂地大輔(総合外科)NNUUTTRRIITTIIOONN SSUUPPPPOORRTT TTEEAAMM NNUUTTRRIITTIIOONN SSUUPPPPOORRTT TTEEAAMM NNUUTTRRIITTIIOONN SSUUPPPPOORRTT TTEEAAMM49TEL:7120FAX:7147№№8811NST

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