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第7回 やってみよう!アウトドアファーストエイド ~ LET’S TRY ! OUTDOOR FIRST AID ~

2016.06.08

【開催概要】

■日時:2016年5月29日(日) 10:00−11:30 (開場9:30)

■場所:FUT MESSE 仙台長町

宮城県仙台市太白区あすと長町1-4-30 SRGスポーツパーク内

■参加者:安全にアウトドアを楽しみたい方24名

■参加費:無料

■講師:吉田良太朗(東北大学病院 高度救命救急センター 医師)

■ゲスト:西川昌徳(自転車冒険家 福島県特別非常勤講師)

■主催:東北大学病院

■後援:宮城県、仙台市、宮城県医師会、仙台市医師会

 

 

【イベントレポート】

晴天に恵まれた5月29日(日)、FUT MESSE仙台長町で第7回からだの教室を開催しました。テーマは、アウトドアでのファーストエイド。講師に、当院高度救命救急センターの吉田良太朗医師、ゲストに自転車冒険家の西川昌徳さんをお迎えし、いざというときのための応急処置に挑戦です。

 


  • 会場となったFUT MESSE仙台長町

  • 会場の様子

○アウトドアにリスクはつきもの

山登りやサイクリング、マリンスポーツや野外フェスなど、アウトドアを積極的に楽しむ人が増えています。その一方で、痛ましい事故が後を絶ちません。アウトドアでは、事故が起きた場所から病院まで、もしくは救急車がくるまでに時間がかかる場合があります。その空白の時間に適切なファーストエイドを行えば、救命率がアップする可能性が高まります。

自転車冒険家の西川さんは、旅の途中ではさまざまな危機に遭遇すると話します。「雨の山道で、カーブで滑って転倒し、左側全身傷だらけになりました。アラスカでは、ムースという大きなヘラジカにテントごと踏まれそうになったこともあります。一番恐いのは、犬です。ネパールで野良犬に手をかまれたときは慌てて病院にかけこんで、狂犬病のワクチンを打ってもらいました。」日本では考えられないような経験を持つ西川さんですが、大切なのは“リスクに対する知識”と強調します。自分で処置できること、病院に行かなければならないことを正しく理解することで、起こりうるリスクを最小限に留めているそうです。

ファーストエイドは、「応急処置」と「一次救命処置」の二本の柱に分かれます。事故や怪我にあったときに、まず始めにとるべき行動を吉田医師に聞きました。「怪我人も周りの人も含めて、まずは身の安全を確保することが大前提です。それと並行して、応援や救急車を呼びます。その後に、反応があるかないかを確認します。反応があれば応急処置を行って、反応が無ければ一次救命処置を行う、という段取りです。」

 


  • 冒険のエピソードを語る西川さん

  • ファーストエイドの大切さを語る吉田医師

○『やってみよう1 こんなときどうする?! 身の回りのモノで応急処置』

基本を学んだ後は、いよいよ参加者による実技体験です。まずは応急処置。河原で転んで額から出血、サイクリング中に転倒して脱臼・骨折、滑落して右足のスネを骨折、という3つのミッションに挑戦しました。使えるのは、段ボールや木の枝、タオルなど、身の回りにあるものだけです。グループ毎に別れ、メンバーが協力してミッションカードに書かれた課題に取り組みます。

 


  • チームで協力して傘でとタオルを使ってスネを固定

  • 西川さんも一緒に挑戦

 

 


  • 使えるのは身の回りの道具のみ

  • 全員で講評を聞きます

各チームが知恵を絞って応急処置を終えたところで、吉田医師からそれぞれの適切な対応について学びました。出血のときはまず直接圧迫による止血、ヘビに咬まれた時は口で吸わずにヒモで縛るなど、大切なポイントを強調します。吉田医師は、手当の基本として「RICE」を紹介しました。救急医も日頃から意識している言葉です。それぞれの文字が、Rest:安静、Immobilize:固定(骨折部を挟んで上下2関節)、Cool:冷却(皮膚を直接冷やさない 20分以下)、Elevate:挙上(受傷部を心臓より高い位置に)という意味を持ちます。もしもの時のために、覚えておきたい言葉です。

 

○『やってみよう2 あなたが助ける!倒れた人の一次救命処置』

次は、呼び掛けても反応がない場合の対応「一次救命処置」に挑戦です。救急車が到着するまでの間、近くに居合わせた人が適切に応急処置を行えるかは、その後の救命率を大きく左右します。

まずは高度救命救急センターのスタッフによる一次救命処置のデモンストレーションを見学。「意識を確認→体が動くか→呼吸をしているか→心臓が止まっている→胸骨圧迫」という流れに沿って、参加者も体験しました。

 


  • 医師、看護師、救急救命士による一次救命処置のデモンストレーション

  • 交代しながら胸骨圧迫を継続

○まとめ

世界中を冒険し続ける西川さん。10年間、大きな事故無くやってこられたたった一つの理由を話してくださいました。「山とか海とかサイクリングに出かけると楽しくなりますよね。楽しくなるのはいいんです。でも楽しくなりすぎると注意力散漫になります。僕たちのような冒険家は、楽しくなりつつも、常に周りの状況を把握します。楽しさの反面、常に頭を冷静にしているんです。僕たちは実は臆病で、危ないことに頭を突っ込まないようにしています。だからこそ、そういう場所に行けたり、長い期間事故や怪我に遭わなかったりするんだと思います。みなさんも常に冷静な気持ちを忘れずに、アウトドアやスポーツを楽しんでください。」

講師を務めた吉田医師は、普段は医療機器が揃っている高度救命救急センターで医療にあたっています。今回は、身の回りにあるものでの最善の対応について、救命救急医の視点をもって、分かりやすく伝えました。「みなさん、身の回りにあるものを上手に使われて応急処置をされていました。今日の内容をどこかで思い出していただいて、万が一のときには活かしていただければ嬉しいです。これからも安全にアウトドアライフを楽しんでください。ありがとうございました。」

 


  • 最後に西川さんと一緒にストレッチ

 

【講師・ゲストプロフィール】

講師:吉田 良太朗(東北大学病院 高度救命救急センター 医師)

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東北大学医学部医学科卒業後、いわき市立総合磐城共立病院、日本医科大学付属病院を経て、2015年より東北大学病院高度救命救急センターにて救急医として勤務。救急医療の第一線において、日々、様々な患者さんと向かいあい、東北地方の救急医療の発展に励んでいる。

 

ゲスト:西川 昌徳(自転車冒険家 福島県特別非常勤講師)

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「冒険で教育を変える」をテーマに、世界を自転車で旅しながら各地と日本の学校をつなぐSkype授業を行う自転車冒険家。これまで26カ国67,600km(地球約1.7周分)を走破。世界と教室とつなぐ、グローバル教育プログラム「地球のとびら」を福島の小学校で担当する。また、世界の自転車旅、被災地支援活動、教育活動などの経験を伝える講演会を全国で実施している。